第94話
前回の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。
元旦は忙しく過ぎた。
お雑煮を食べた後、両方の実家へ入籍の報告をしに出向き、すっかり辺りが暗くなった頃、港の公園で綺麗なイルミネーションを堪能し、その近くの観光商店街で観光客に紛れて7,000円もする豪華な海鮮丼を食べ、お腹が膨らんだところでようやく帰宅。
2日は私も雄大さんも疲れちゃって、ほぼ一日中ダラダラ。
夕方頃、2人で手を繋ぎふらふらと、近所のコンビニへ。
晩御飯と明日の朝のパンなどを買って、それで済ませた。
3日からは仕事だし、初売りだし、とにかく忙しいのはわかっていたので、そうするのがベストだった。
仕事始めの日。
「わ〜!おめでとう!今日からゆりちゃん、原さんなんだね〜!」なんて、一緒に働くみんなからおめでとうを沢山言ってもらった。
それが嬉しくて恥ずかしくて。
雄大さんも頭の後ろを掻きながら、だいぶ照れてたっけ。
照れた気持ちのまま、バックヤードから店内に戻ると、人で人で混み合っている。
そうなると、気を引き締めて戦闘態勢。
動けるだけ体を動かし、出せるだけ声を出した。
たった2日休んだだけなのに、少々体が鈍っていたらしい。
帰り、雄大さんの顔を見ると、なんだかやつれているのが窺える。
「大丈夫?」
「ああ、うん…今日は、ちょっと忙しかったねえ…明日も明後日も…これから1週間ぐらいは、きっとこんなだよね…」
「そうだよねえ…ところで、雄大さん、今日なに食べたい?」
運転しながら少し考えた後、「…ん〜…ゆりちゃんも相当疲れてるんじゃない?だからさ、晩御飯は無理して作らなくても…」
…と言う訳で、今年初の純喫茶「純」となった。
「あら〜、いらっしゃい…おかえりなさい…どうしたの?2人とも…今にも倒れそうな顔しちゃって…」
大家の純子さんが心配そうに声をかけてくれた。
「本当、大丈夫?」
ミズエさんも。
「そんなに忙しかったんだあ」
なるちゃんパパが言った後、なるちゃんがこちらに来て、私と雄大さんの手をそれぞれ優しく撫でてくれた。
それが嬉しくて、つい涙をこぼしてしまった。
「だ、大丈夫?ゆりちゃん…そんなに辛かったんだねえ…」
雄大さんまで、私を気遣って。
正式な夫婦になってまだ何日も経っていないのに、こんなに辛くてしんどいなんてと思った。
純平さんが作る温かい親子丼を食べると、心と体が幾らかほぐれた。
食後に雄大さんとクリームソーダを啜ると、フランスに旅立ったヒデさんを思い出した。
お腹が膨れ、体がほかほか暖かくなったところで、「そうそう…」と思い出した形でスマホを取り出した。
年末に退院したさとみは、元旦に「あけおめ」メールをしあっただけだったが、仕事中に新しいのが来ていた。
「ん?なになに?……………えーっ!えーーーーーーーーっ!嘘〜っ!マジで〜?」
みんながいる前で、つい大声を出してしまった。
「え?ゆりちゃん、どうしたの?」
雄大さんに聞かれ、ようやくちょっと落ち着いた。
「あ、あのね…さとみ…ほら、事故で怪我して入院してたけど、年末に退院してた友達のさとみ…あのさとみがね…退院した後、彼と一緒に沖縄に引っ越したって…そんで…あっちで籍入れたんだって…」
「え?」
雄大さんや、他のみんながポカンとするのも無理はない。
だって、さとみの話はみんなにしていたけれど、まさかこんな話はという感じ。
「あれ?こっちで病院に通いながらって言ってなかった?」
言ってた、言ってた、確かにそう言ってたよ。
「…ん〜…じゃあさ、今、電話してみたら?」とミズエさん。
そうですねと、早速電話をかけてみた。
すると…
電話口の向こうはなにやら相当賑やか。
「あ〜!ゆり〜!明けましてと、結婚おめでと〜!」
さとみの声に続けて、向こう側でも大勢の「おめでとう!」が聞こえる。
なんなら三線の独特の音や、ピュ〜イ!と高い口笛の音も。
「ありがと〜!さとみこそ、結婚おめでとう!」
私からのおめでとうに、またもや向こう側の盛り上がる音が聞こえる。
どうやら宴会の真っ最中らしい。
向こうで知り合った人達とすぐに打ち解け、仲良くなったそうで。
結局、あまり話らしい話はできなかった。
それでも、なんとなく嬉しい気分。
「あっちは相当盛り上がってるみたいねえ」
純子さんの言う通りだった。
部屋に戻って、雄大さんと温かい湯船に浸かりながら、今日のことなどを振り返った。
「さとみさん…まだ一度も会えてないけど…まずは良かったねえ…」
「うん…あっちの病院でリハビリするって…」
お風呂ですっかり体が温まると、2人ともぐっすりよく眠れた。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。




