第79話
前回の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。
12月に入ってしまった。
とうとう原さんの実家へご挨拶に行くのね!
大丈夫!
きっと大丈夫!
11月最後の土曜日、赤瀬川君のご家族と、自分の家族全員でご挨拶も兼ねた食事会があるというあゆみちゃんと一緒に、駅の辺りに「それ用」の服などを買いに行っておいて良かった。
考えてみれば、私、原さんと会う時、ちゃんとした格好を一度もしていない。
仕事に行く時の普段着ばかり。
ズボンばっかり。
それはそれで別に気にすることもないんだろうけど…あ〜、やっぱり気になっちゃうかあ。
そらそうだよね。
結婚の約束をしてる人なんだもの。
会う時は、もうちょっと可愛い格好していたいよね。
洋服だけじゃなく、靴も履き慣れたスニーカーばっかりじゃなくて、華奢なヒールの靴とか、女っぽい感じも出したい。
そんでもって、原さんに「可愛い〜!」って、褒められたい。
あゆみちゃんも似た様なこと、言ってたな。
彼に会わない普段は別にどんな格好でもいいとしても、会える時ぐらいは味気ない服装ばっかりってのも寂しいよねえって。
そんな訳で、私もあゆみちゃんもめいっぱい女性らしくて、可愛らしい服や靴、バッグを買った。
きっと私は原さん、あゆみちゃんは赤瀬川君と一緒に買いに行っていたら、どれを試着しても多分全部「似合う〜!」とか言われちゃったに違いない。
そして、結局迷って迷って、う〜〜〜ぐるぐるぐるぐるってなっていたと思う。
当日、着て行けるのはたった1着だってのに。
選べなさすぎて、「どうすりゃいいのよ〜!」なんて、泣いちゃう可能性も考えられる。
なので、女同志で買い物できて、本当に良かった。
私もあゆみちゃんもシビアな評価をしたので、それぞれ心から満足できる物が買えたから。
自分も気に入り、あゆみちゃんからも「ゆりしゃん、似合う!さっきのより、こっちの方が断然いいですよ!」と言ってもらえた薄いピンクのワンピース。
それに袖を通し、ワンピースと色を合わせた3センチほどのヒールの靴。
きちんと感がある上に、歩きやすくて履いてて足が疲れない。
「あんまりヒールが高いのより、この方があちらの両親にも印象がいいと思う」
なるほど!
あゆみちゃんの意見が、ものすごく的確で納得できる。
銀行員という職業柄なのか、あゆみちゃんの説明がわかりやすくて本当に助かった。
最初、さとみに付き合ってもらいたいと思っていたけれど、今はあの調子だものね。
合わせて買ったバッグの中に充電満タンのスマホ、お財布、ハンカチ3枚、ポケットティッシュ2個、お化粧ポーチ、小さいハンドクリーム、「万が一ポーチ」にお財布とは別の、「もしも」の時に使うお金とペン型のハサミ、絆創膏に裁縫セット、お守り、後はエコバッグ3枚、100円ショップで購入した携帯型のスプレーには、布用の消臭剤も足した、そして、家の鍵などなど。
入れ忘れなし!
髪とお化粧もよし!
アクセサリー類よし!
ワンピースよし!
靴よし!
うん!完璧!…なはず。
心の準備も完了したところで、アパートの駐車場で原さんを待った。
「おはよう!ゆりちゃん、わあ〜!すんごく可愛いねえ!…えっと、じゃあ、今日は、よろしくね!」
迎えに来てくれた原さんも、きちっとしたスーツ姿がとっても素敵!
お互いこんなに改まった服装は初めて。
いつもとは違う為、私も原さんも妙に照れてしまった。
原さんの実家まで、車で約1時間。
その道中、車内で原さんから家族のことを色々聞いた。
お父さんは大きな病院の傍の調剤薬局で薬剤師をしているとか、お母さんは専業主婦で、家庭菜園やガーデニングが趣味なんだとか。
お兄さんは市役所に勤めているそうで、お兄さんのお嫁さんは看護師さんだけど、今は2歳と生後3ヶ月の2人の子育てで大変なので、育児休業中なんだそうだ。
「へ〜え、そうなんだあ…」
「みんな、ゆりちゃんに会えるの、すんごく楽しみにしてるんだよ〜!」
え〜!それは…嬉しいけど、すごいプレッシャー…
どうしよう…私…でも、もううちに帰る訳にはいかない。
前に進むしかないものね。
頑張らなくっちゃ!
私、ファイト!
自分を自分で奮い立たせ、別に勝負じゃないけれど、気持ちは勝負!って感じ。
到着した原さんのお家は、古さはあるもののどっしりとした大きなお宅で驚いてしまった。
「あ〜、雄大、おかえり〜!そして、こちらのお嬢さんがゆりさんね、どうも初めまして、雄大の母です、どうぞよろしくね〜…ささ、入って入って!」
玄関の外で待ってくれていた原さんのお母さんは、少しふくよかで、全身から優しそうな人柄が滲み出ていた。
迎えてくれた原さんのお父さんは、原さんと雰囲気が似ていて、失礼ながら「モテそう」だと思ってしまった。
お兄さんもお父さんと同様に、やっぱり原さんとどこか雰囲気が似ていて、こちらも「モテそう」な感じ。
兄嫁さんはメガネで可愛らしくて、ほんわかした印象で、とても気が利く優しい人だと思った。
お兄さんの子供達は、2人とも可愛すぎて。
2歳の雫ちゃんは、すぐに私に懐いてくれた。
そして、生後3ヶ月の潮君を抱かせてもらうと、甘いミルクの匂いがして可愛かった。
原さんと共に案内されたリビングの真ん中に、大きな木を縦に切ったそのままを生かした長いテーブルがあり、その周りに椅子が今日集まる人数分並べられている。
そこに原さんと私、向かい合う形でご両親とお兄さん家族が腰掛けた。
緊張でゴクンと唾を飲んだ。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。




