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第77話

前回の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。

「ふ〜う…お疲れ様でしたあ〜!」

今日のタイムセールは、いつにも増してなかなかの盛況。

それもそのはず、大概の方は給料日だものね。

目まぐるしかった仕事も、終わってみれば充実感でいっぱい。

さっきまでのことなどすっかり忘れて、一緒の時間に帰れる原さんに声をかけようと、姿を探すもどこにもいない。

あれ?トイレ?

バックヤードのトイレの前で待つも、原さんの姿なし。

「ああ、あの、原さん、見かけませんでした?」

丁度トイレから出てきた鮮魚コーナー担当の魚住さんに尋ねると、「ああ、原さん?確か…さっき外に出て行ったところ、見かけたよ」と。

「ありがとうございました!」

「いえいえ、それより、原さんと仲良くね〜!」なんて、エールを送ってもらっちゃった。

うふふ。

職場のみんなから、沢山応援していただいて、本当、心から嬉しい。

「さ〜て、雄大さん、雄大さんと…」

外に出て職員用の駐車場を見て回るも、原さんはどこにもいない。

あれ?さっき、外に行ったって言ってたよねえ。

原さんの車がまだそこにあるということは…

今度はお客様駐車場の方を探した。

もうすっかり暗くなっているにもかかわらず、駐車場はほぼ満車状態。

仕事帰りの人達が、買い物に来てくれているのがわかる。

あ〜、ありがたい。

うちのスーパーをご利用いただき、本当に心からお礼申し上げます。なんて、心で呟きながら、広い駐車場を端から探す。

それにしても寒い。

流石に12月が近いこともあって、外の寒さが身に沁みる。

特に今の時間帯は、外が真っ暗だから尚更寒い。

お日様が恋しいなあ。

少し小走りで駐車場を巡っていると、お隣のドラッグストアの傍の薄暗い端っこに原さんらしき人影を発見!

「雄大さ〜…」まで叫びかけて、やめた。

原さん、さっきの女性と2人っきり。

なんか嫌な予感。

そうっと近づくにつれ、2人の会話が鮮明に聞こえてくる。

「…麗華…本当、もう帰ってくれ!頼むからもう帰ってくれ!そして、もう2度と俺の前に姿を見せないでくれ!」

「雄大!ごめんなさい!あの時、私、どうかしちゃってたんだと思う…だから、もう、お願い、許して!お金はちゃんと受け取って!お願い!これだけは受け取って!本当、お願い!」

女性が原さんに紙袋を手渡すその瞬間、彼女がいきなり原さんに抱きついた。

「ちょ、ちょっ、やめろって!やめろ!麗華!」

「いやいやいやいやよ!雄大!今も愛してる!だから、雄大!お願い!私ともう一度…」

そこまで聞いてしまうと、もうその場にいたくなかった。

くるりと今来たばかりの方に向きを変え、ダダダッと走った。

嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!

あの人、きっと前の彼女だ!

原さんに抱きつくなんて!嫌だ!嫌だ!見たくない!

あの人、お金を返すついでに、よりを戻しに来たんだ!

あんな綺麗な人!

原さんの前の彼女さん、あんなに綺麗な人だったなんて!

酷いことをした人だから、もっと違う印象の女だと思ってたのに…

私なんかより、何百倍も綺麗な女の人。

…悔しい!

悔しいけど…敵う相手じゃないや…負けた!負けちゃった…

あの人きっと、抱きついた後、キスしてるよね…強引にキスを迫ってるよね…原さんにキスしていいのは、自分だけだと思ってたけど…

ヤダなあ、私…

2人の話を立ち聞きした上、おかしな想像までしちゃって…

なんか惨めだなあ、私。

こんなんで原さんと結婚してもいいんだろうか?

こんな私なんかで…雄大さん、いいのかな?

哀しくて辛くてどうにもならない。

ショックの大きさを受け止めきれない。

それでも、急いで職場のロッカールームまで戻った。

寒い場所から暖かい場所まで走って来たので、顔から汗が滴り落ちる。

きっとメイクもぐちゃぐちゃ。

バッグから取り出したタオルハンカチを持って、トイレの手洗い場で顔を洗った。

水をバシャバシャさせながら、一生懸命洗った。

着ている服もそこらじゅうも、ビッシャビシャに濡れたけれど、そんなのどうでもよかった。

タオルハンカチで拭いても拭いても、なかなか顔の水滴は取れない。

あれ?なんで?

ふと真正面にある手洗い場の鏡の中の、自分に目を移した。

あれ?なんで泣いてるの?私。

なんでこんなに泣いてるんだろう?私。

頭の中がぐっちゃぐちゃで、色んな感情が後から後から勝手に湧いて出た。

さっきの場面を思い出してしまう。

雄大さん…あれからどうなったんだろう?

休憩室に戻り、温かい紅茶を飲んで気持ちを落ち着かせよう。

今、すぐは外に出たくない。

だって、きっと、あの2人に遭遇してしまうかもしれないから。

まだ、もう少し、ここにいよう。

トイレからゆっくりと休憩室に向かうと、そこに原さんが立っていた。

「ゆりちゃん!」

そう言った原さんに、いきなり抱きしめられた。

何をどう言えばいいのかわからない。

けれども、抱きしめてくれる原さんの体温を感じるこの状況に、ただ身を任せるので精一杯。

雄大さん…大好き…愛してる。

折角洗ったばかりの顔が、また涙でぐしゃぐしゃになった。

それでもかまわず、原さんは私に熱い口づけをしてくれた。

それだけでいい。

だって、信じてるから。

最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。

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