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第75話

前回の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。

「良かったねえ!もう、リハビリ始まったんだねえ」

早番の帰り、さとみのお見舞いに。

今日も病室の花瓶には、名前がわからないけれど綺麗な黄色いお花がいっぱい。

どうやら、あのヌーディストビーチの彼がまた、持って来てくれた模様。

「来月あたり、退院できそうなんだあ」とさとみ。

「そっかあ…順調に回復してきてて、本当に良かった!本当に」

「ちょ、ちょっと、ゆり、ちょっと、泣かないで!泣かないで!」

「ごめんごめん…だって、すんごく嬉しいんだもの」

思い出すと、再び涙がどんどん溢れ出る。

沖縄に行く送別会をしたすぐ後の事故。

ついさっきまで、2人でゲラゲラ笑って、美味しいお料理とお酒を呑んでいい気分だったから。

旅立つさとみとの別れの寂しさもあったけど、それよりも新しい土地で頑張ってって思ってたから。

離れた場所から応援してるよ!って。

「…ありがとうねって、私ももらっちゃったよ!」

そう言って、さとみも泣いた。

「…やっと退院できるんだあ…」

「うん、でね、まあ、本当は沖縄に行くって思ってたけど、こうなっちゃったからさ…とりあえずは…」

実家だよねと思ったら…

「彼のところに行こうと思って…」

「へ?彼?実家じゃないの?」

「え…あ、うん…彼がね、一緒に暮らそうって、通院とか付き添うし、私のサポートも全力でしてくれるって言うから…」

「え?え?ごめん、彼って?もしかして…」

そこまで言いながら、花瓶に飾ってある綺麗な黄色いお花に目をやった。

「うん、そう…もう、ヌーディストビーチとか絶対に言わないって…地道が1番って、なんかね、心を入れ替えたそうだよ…本当かどうかはわかんないけどね…」

「…そっかあ」

「でも…なんか…あいつ、すんごくこまめにお見舞いに来てくれるんだあ…私のこと、すんごく真剣に心配してくれてて…前に付き合ってた時とは別人みたいに、なんか真面目になってさ…一回別れたから、今度は恋の魔法のフィルターとか無しに、ちゃんとはっきりくっきりと彼のこと見れる様になったと思うから…うん…きっと、今度は大丈夫だと思うんだあ…」

「おばさん達はそれでいいって…」

「ああ、お母さん達?うん…彼がさ、お見舞いに来てくれてる時、何回も会って色々話したみたい…それで、あいつ、勝手にお嬢さんを絶対に幸せにしますからとか言って、結婚の承諾を得たみたいでさ…お母さん達も、なんか彼のことすんごく気に入っちゃって…お任せしますだって」

きっと熱心だったんだろうなあ、彼。

さとみが事故に遭って大怪我したって知って、すぐさまお見舞いに来て泣いたそうだ。

さとみに死なれたら、俺はどうしたらいいんだ〜!

嫌だ〜!さとみ〜!どうか死なないでくれ〜!

そう叫んでから、彼、病院に近い大きな神社に行って、靴下脱いで裸足で「御百度参り」始めて、その後も毎日ではないものの、お見舞いに来た際は必ず裸足で「御百度参り」して、さとみの回復を願ってるって言ってた。

素敵な彼じゃない。

今時、裸足で「御百度参り」なんてしないし、そもそもできないよ。

暖かい季節ならまだしも、さとみが入院したのって秋だし、今はもう冬の入り口に突入してるぐらい寒くなってきてるんだもの。

強い熱意とか信念みたいなものがないと、普通は無理なことだもの。

それだけ本気でさとみのこと好きなんだね。

「…そうそう…ほら、ゆりがチューしてける?を歌ったら、原さんから初チューしてもらったって言ってたじゃない?私もね、病室で1人で退屈してて、何気なくあの歌歌ってたらね、丁度のタイミングで彼がお見舞いに来てくれて…そんで…部屋に入った途端、私の傍に駆け寄って来てさ、いきなりチューって…キスされちゃったの…」

「ええっ!すごい!」

「だよね…だって、看護師さんとかいたんだよ…それなのに、いきなりチューって…長めの…それで…なんか知らないけど、冷え切っちゃってた私の心に火がついたってのか…急に、私も彼のこと、好き〜ってなっちゃったの…こんなことあるんだねえ…」

しみじみ語りながらも、嬉しさを隠しきれないさとみ。

良かったねえ。

本当に良かったねえ。

それにしても「チューしてける?」の効果は絶大だねえ。

ふと原さんの顔を思い出すと、会ったらまた歌ってやれ!って思った。

最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。

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