第74話
前回の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。
「ごちそうさまでした」
お腹が膨れると、心も体もぽっかぽか。
すっかり暗くなった外に出ると、すぐさま原さんを捕まえた。
「ん?どしたの?」
「ううん…なんでもないの…」
なんて言ったけど、本当はなんでもあるの。
だって、だって、大好きな原さんが辛い目に遭ってたって、知っちゃったから。
川島さんから偶然聞いちゃったなんて、絶対に言わない。
…きっと、原さん、嫌なことをぶり返して、落ち込んじゃうかもしれないもの。
そんなのダメ!
ダメだもん。
両腕で原さんを捕まえたまま、今度はゆっくりと背中をさすった。
「…ゆり…ちゃん?」
原さんはキョトンとしたまま、動かないでいてくれた。
心の中で、辛かったねえ、大変だったねえ、哀しかったねえ、でも、もう大丈夫だから、私はそんな酷いこと、絶対にしないからって、何度も繰り返した。
こんなことで、原さんの過去の傷が癒える訳じゃないってわかってるけど、今はこうせずにはいられない。
両腕を振りほどくと、今度は手を伸ばして原さんの頭をゆっくり優しく撫でた。
「え?あはは…なに?なに?」
少し驚きながらも嬉しそうに、じっと私に頭を撫でさせてくれている原さん。
今までよく頑張ったねえ。
偉かったね!雄大さん。
前の彼女にメッタメタに深く傷つけられたってのに、こうして今は立ち直って元気にやってるなんて偉い!
まだ、心の傷は完治していないかもしれないのに、偉すぎ!
素敵過ぎ!
こんなこと、私ごときが偉そうに言える立場じゃないけど…
声には出さず、心の声でいっぱい褒めた。
「終わり!」
「え?もう終わり?」
「あれ?雄大さん、もうちょっとなでなでされたかった?」
「ええっ?まあ…そ、そうだねえ…なんか、気持ちよかったから…」
「じゃあ…おまけ!」
そう言って、今度は少しイタズラっぽく、原さんの髪をぐしゃぐしゃにする感じで撫でた。
「えーっ!それはないよ〜!も〜う!ゆりちゃんったら…」
今度は私がやり返された。
こんな風にふざけ合えるのが、くすぐったく嬉しい。
それまでは、お互いちょっと堅かった気もするから。
「やったな〜!」
「きゃあ〜!はははは」
アパートの駐車場で逃げ回っていたけれど、どうにも捕まってしまった。
「捕まえた!」
「にゃっ!」
「ゆりちゃん…」
そして、そのままチュー。
キスのまま、何故か涙がポロリ。
「え!あれ?ご、ごめん!勝手にチューしちゃったから?ごめんね、なんか嫌だった?」
あわあわしながら、原さんが必死に謝ってきた。
ううん、違うの違うの、そうじゃないの。
なんかわかんないけど…原さんの顔を見ると、なんだか涙が出てきちゃうの。
それを声にできたらよかったんだけど…
その後、しばらく慌てて謝る原さん。
私はいつまでも泣きながら、大好きな男の人を見つめ続けた。
私の大好きな人。
大好き過ぎて、また涙。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。




