第70話
前回の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。
早番だった今日、原さんと一緒に純喫茶「純」へ。
「あら、ゆりちゃん原君、おかえりなさい」
笑顔で出迎えてくれた純子さんは、なるちゃん達と一緒だった。
いつもはカウンターの側で待機してるんだけど…
「あは、ただいまです〜…ところで、みんなで集まって何を…」まで言いかけて、すぐにわかった。
純子さん、ミズエさん、なるちゃん、そして、あゆみちゃんの女性陣は、編み物をしていた。
「わあ、編み物ですか」
それぞれの手に綺麗な色の毛糸と編み針。
「あのねえ、保育園でねえ、今やってるの」となるちゃん。
どうやらなるちゃん達の保育園では、今、大きい子達のクラスで編み物を習っているそうだ。
指に絡めて編んでいく指編みから始めたそうだけど、なるちゃんはもうそれでは足りず、かぎ針で編むやり方を練習中なんだとか。
「へ〜え、編み物かあ…ちょっとやってみたいけど…」
「ゆりちゃん、編み物はやらないの?覚えると簡単だよ!」
そう言うミズエさんは、赤い毛糸でなるちゃんの帽子を編んでいるとのこと。
「私は…のり君が…この前、ちらっと彼女から手編みの物もらったことないって言ってたから…それで…」
あゆみちゃんは綺麗な青い太めの毛糸を使って初めて編むので、先ずは1番簡単そうなマフラーに挑戦しているようだ。
なるちゃんは白い太めの毛糸で、パパさんにマフラーを編んでいるんだとか。
純子さんは、なるちゃんやあゆみちゃんに教えながら、緑色の細い毛糸で男物の手袋を編んでいる。
へ〜え、そうなんだあと思っていたら、
「あ〜、僕も、今まで一度ももらったことないから、そういうの羨ましいなあ」と原さんが少し照れながら続けた。
え!え?
原さん、今まで一度も手編みの物もらったことないの?
そんで、そういうの羨ましいってことは、欲しいってこと?
さりげなくそう言ってた?
すると、隣のテーブル席でクリームソーダを啜っていたヒデさんもしみじみと、
「あ〜、わかる!なんか今時の若者は、手編みとか手作りの物を重たいとか言って敬遠しがちらしいけど…でも、僕なんかもらいたいタイプなんで、原君や赤瀬川君の気持ち、すんごくわかるなあって…」と付け加えると、原さんが更に、
「ですよねえ…好きな女の子が一生懸命作った物だから、嬉しいですよねえ…」と興奮した様子で賛同してきた。
そこになるちゃんパパが加わってきた。
「ああ、だよねえ…なんか、今時の人は、バレンタインの手作りチョコは食べるし、嬉しいって、確か、どこかで見聞きした様な…でも、手編みのセーターとかはダサいからもらっても困るだの…よくそんなこと言えるよなあって、僕なんかは思っちゃうけどねえ…僕も手編み大歓迎だから…」
「そうなんだあ…」
ボソッと自分にしか聞こえない小声でそう呟くと、聞こえていないはずの原さんと目が合った。
「あっ!だからって、あのさ、ゆりちゃんに作ってって強要してる訳じゃないからね…だ、だからさ、あの…なんつうか、無理して作ったりしないでね…」
なんか慌ててる原さん。
そうだよね、「欲しいから作って!」って言われて作ってあげるのもいいんだろうけど、でも、どちらかと言えば、自発的に作ってプレゼントするという自然な形が理想だよね。
でも…原さんから言ってもらえて、なんとなく嬉しかった。
正直、クリスマスプレゼントどうしようって、ものすごく悩んでたから。
どういう物をあげたら、喜んでくれるだろうかって、ずっと考えてたから。
原さんが何かしらの「手作り品」が欲しいとわかったから、プレゼントの方向性が見えてきた。
編み物にも挑戦したいけれど…ん〜…どうしよう。
とりあえずまだ、慌てている原さんと一緒に、オムライスとレモンソーダでお腹を満たした。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。




