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第66話

前回の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。

お嫁さんにして下さい。

今どきその台詞どうよ?って、自分でも十分わかってる。

だけど、あの時はそれしか言えなかった。

あれが精一杯の台詞で、あのタイミングでどうしても直接言いたかったから…

ちゃんと言えて良かったって、あれから数日経ったけど、つい今しがたの様に思い出すと照れちゃう。

えへへ。

それにしても…原さんのことを「許す」とか「妥協できる」なんて、偉そうに考えていた自分が恥ずかしい。

何様のつもりだよ!全く!

逆に原さんだって私のこういうところが嫌だとか、これは我慢できないなんてこと、いっぱいあるかもしれないのに…

自分目線でしか見ていなかったと、今頃になってやっと気づいた形。

あ〜、私、嫌な女だよ…バカな女だよ…

本当にそう思った。

そして、ふと自分の両親のことを思い出す。

お父さんとお母さん、結婚するのに不安とかなかったんだろうか?

嬉し恥ずかしでキャッキャと楽しさいっぱいのまま、結婚できたんだろうか?

長く連れ添ってるから今はああだこうだと、父も母もお互いの文句ばっかりになっちゃってるけど。

最初の頃はきっと好き好き好き〜って、お互いに多少の不満はあっても目を瞑って、それよりもラブラブラブラブ〜な雰囲気だったはずだ。

今、お互いに強い文句がぶ〜ぶ〜なのは、きっとどちらもお互いのことが好きだから、甘えたいからなのかなあ?

好きで大事な人だから、もっとこうであって欲しいとか、これやって欲しいとか、自分の「理想」であってもらいたいって、追い求めちゃうからなのかねえ。

…ん〜…難しい。

考えれば考えるほど、よくわからん!

わかりたければ、やっぱり実際に結婚してみるしかないんだろうねえ。

実践が1番ってことか…はあ〜…

で、父と母…あ、そうだった…結婚するとなったら、どちらの家にも承諾の挨拶と言うか、報告と言うか、そういうのをしなければいけないんだね。

絶対って訳じゃないんだろうけど、でも、そこはきちんとしておきたい。

きっと原さんも同じ考えだと思う。

すぐにでもって言うんじゃなく、2人の引っ越しのタイミングでもいいんじゃないかな。

そうそう、焦ることないよね。

なんて気楽に考えていたのだが…

2人共早番だった今日、アパートに送ってもらいついでに久しぶりに純喫茶「純」に寄った。

「あら、ゆりちゃん、原君、おかえりなさい!あ、そうそう、ゆりちゃん、あちらに…」

大家の純子さんが手を伸ばした先に、うちの両親の姿が…

「えっ!な、なんで?どしたの?2人して?」

事前に何か連絡をしてくれてたら…

と思ったのと同時に、何故、このタイミングで現れる?とも思った。

「ああ、ゆり〜、おかえり〜!っつうか、あんた、全然連絡して来ないんだもの…だから、お父さんとサプライズしちゃった!」と母。

「そうだぞ〜!仕事が忙しいのか知らないけど…もうちょっと前みたいに連絡寄こせ〜!」と父。

なんでよりによって原さんと一緒にいるタイミングで来た?

いつものようにどんどんと話す両親に、「ちょ、ちょっと、一旦、喋るのやめてもらえる?」と言い出すまで、少々時間がかかってしまった。

「ああ、そうだ…そちらさんは?どなたさん?」

何となく薄っすら「娘の彼氏」だと気づいているのに、白々しい聞き方をする母。

「あ、え〜と…え〜とね…一緒の職場で、一緒に働いてる…原雄大さん…社員さんなの…」

じゃなくて、本当は今結婚を前提に付き合ってる人です!って言えなかった。

そんな不甲斐ない私に代わって、爽やかすぎる笑顔の原さんが続けた。

「どうも、初めまして、僕は今、ゆりさんと結婚を前提としたお付き合いをさせていただいています、原雄大と申します、どうぞ宜しくお願い致します…いずれきちんとした形でゆりさんと2人で、お宅にご挨拶に伺おうと思っていたのですが…今、こうしてお会いできたので、本当に心から嬉しいです…つきましては…」

えーっ!原さん、すごい!

よくそんな澱みなく丁寧な挨拶ができるもんだよ!なんて、感心してしまった。

それと同時に、やっぱりこの人頼りになるなあとも。

こんな形でうちの両親に結婚の承諾をもらうとは…

ってか、お父さんもお母さんも、「こちらこそ、娘をどうぞ宜しくお願いしますね」なんて、あっさりすんなり了承しちゃったけど、なんで?

反対されたり、揉めることなく、とても良い形で話が進んでしまったけれど、私としては、もうちょっと、その、なんて言うか…映画やドラマの様に、娘の結婚に反対する攻防みたいなのが欲しかったかも…

雄大さんが「お願いします!娘さんを一生幸せにしますから!結婚を許して下さい!」って土下座して必死に食い下がったり、お父さんが怖い顔で腕組みをして「いいや、許さん!」みたいな感じでなかなか首を縦に振らなかったり、それを見兼ねたお母さんが「いい方じゃないですか、これも何かのご縁…」とか言って、険悪な雄大さんとお父さんの間を取り持ったりして…

そういうの…ないんだね、1ミリもないんだね。

「あら、ゆりは何食べるの?」って、お母さんはぺろっと聞くし。

お父さん、原さんのことがよほど気に入ったのか、ずっと2人で楽しそうに話してるし。

結局、うちの両親と私と原さんの4人に加え、なるちゃん家族とヒデさん、大家の純平さんと純子さんも一緒に、何となく「お祝い」っぽいムードで沢山飲んだり食べたり喋ったり、途中から誰か彼かカラオケで歌い始めたりして、楽しいパーティーとなった。

最後まで読んで頂き、本当にどうもありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。

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