表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/96

第63話

前回の続きです。どうぞよろしくお願い致します。

「え?なるちゃん達の新しい家に住むの?あれ?原さんと結婚して、そのまま彼のとこに行くんじゃないの?」

早番の帰り、さとみのお見舞い。

「…うん…なんかさ…だって…」

原さんの中古マンションの話になった。

「え〜…だって、キャンプの後、2人で一緒に彼の部屋で映画観て、超楽しかった〜ん!ってはしゃいでたじゃん!なのに、なんで?」

「だって…」

言葉が詰まってしまった。

「…ん〜…元カノと同棲してた時のベッドとかが嫌ってか…ん〜、や、わからなくもないけど…ん〜………じゃあさ、直接、話してごらんよ!なるちゃんママもそう言ってたんでしょ?」

「…ん〜…だよねえ…」

「決まり!すぐ連絡!すぐ連絡!今日、彼、遅番なんでしょ?これから会えばいいじゃん!そうしな!ねっ!」

モヤモヤしている私に、さとみが発破をかけてくれた。

「そ、そうだね…そうする!うん!そうする!」

あゆみちゃんとなるちゃん家族の工事中の新しい家を訪れてから、まだたった1日しか経っていない。

電話やメールで話したっていいのに、なんとなくできずに仕事場で会っても「楽しかったよ〜!」などと、はぐらかしてきちゃっていた。

でも、ちゃんと言わなきゃダメだよね!

うん!

原さんの仕事が終わるタイミングを見計らって、すぐさまメール。

すると、すぐさま「オッケー!」とこれから病院まで迎えに来てくれる運びになった。

待ってる時間が緊張する。

「好き」と言うまでもドキドキしたけれど、恋が進むにつれ、どんどんと色んな形のハードルが出現してくる。

それを一生懸命、なんとかこなしてきた。

自分にもっと勇気があればなんて、何度思ったことか。

病院の玄関の外に出た。

夜のひんやりした風が、全身を通り過ぎる。

ひゃあ〜!寒い!

そうしている間に、原さんの車が見えて来た。

あ、どうしよう、もう来ちゃった。

タクシー乗り場の前の、車を乗り降りする場所に原さんの車。

フェーッと助手席の窓が開くと、運転席に笑顔の原さん。

「ごめん、待たせちゃった?」

ううんと首を振り、早速車に乗り込んだ。

「あの…雄大さん、ごめんね…急に呼び出したりして…」

「ううん、そんなの、全然…むしろ、嬉しかったなあ…ゆりちゃん、手、冷たくなって…」

そう言うと、原さんは私の手を自分の手で包み込んでくれた。

そして、「じゃあ、行くよ!」

原さんの掛け声と同時に、車は動き出した。

「どこ行きたい?」

「あの…家に寄ってもらって、いいですか?明日、雄大さん、お休みでしょ?」

「あ、うん…いいけど…ゆりちゃんは、明日…」

「遅番だから…」

それ以上、もう言葉が出なかった。

緊張して、ドキドキが原さんに聞こえないか、それだけが心配だった。

もう腹は括った。

大丈夫。

上手じゃなくてもいいんだ。

一生懸命、自分が思っていることを言えばいいんだ。

アパートに到着するまで、ギュッと口を結んだ。

「ど、どうぞ…あの…ちょっと、雄大さんにお話があります」

前回、折角初めて原さんを部屋に招いたと言うのに、ペットボトルのお茶しか出せなかった反省を踏まえて、今回はちゃんと電気ポットで沸かしたお湯で、温かいコーヒーを淹れた。

それに加えて、この前工事中の新しいなるちゃん家族の家を訪問した際、あゆみちゃんと一緒に予め買って持って行ったお土産と同じ、駅前のケーキ屋さんのパウンドケーキを出した。

「…どうぞ…」

「ありがとう…それはさておき…今日はどうしたの?改まって、話って何?」

怪訝そうな表情の原さん。

私からなんの話をされるのか、伺っているのがわかる。

「…あの…ですね…私…なるちゃん達の新しいところに、引っ越そうと思ってます…」

「え?」

「ここ、春には取り壊しになっちゃうじゃないですか、だから…あの…この前、お手伝いしにあゆみちゃんと行った時、なんかここっぽい感じってのか、下宿っぽい感じにするって伺って…それで、いいなあって…ここに住みたいなあって思ったんです…ここから近いし、職場にはここよりも近くなるし、なるちゃん達もいるし…後、大家さんの純平さんと純子さんも、住むって聞いたし、あゆみちゃんももしかしたら、赤瀬川君と一緒に住むかもしれないって言ってたし…」

「…」

「私…ごめんなさい…正直に言いますね…あの…あの…雄大さんのとこ、嫌なんです…」

「え?…なんで?」

原さんは一瞬戸惑った様な表情を見せた後、今まで見たこともない暗くて悲しそうな顔になった。

「…雄大さんのこと…大好きだから…本当は…一緒にいたいんですけど…でも…その…雄大さんの部屋…前の彼女と同棲してたって言ってたから…ベッドとか…そういうの…前の彼女とイチャイチャした場所だって思ったら…私…なんだか…耐えられないって思って…だけど…それを処分してって言うのも、なんか違うと思うから…」

喋りながら、涙が止まらなかった。

原さんと正式に付き合うことになって、それが嬉しくて浮かれてたから、特に気にしてなかったけれど、少し冷静になって考えた時、やっぱりどうしても嫌だと思ってしまった自分。

もう付き合っていない元カノに、嫉妬している自分。

原さんには自分だけを見ていてほしい。

自分のことだけ考えていて欲しい。

好きになればなるほど、どんどん愛が重たくなっていくのはわかっているけれど…

本当に好きになるって、きっとそういうことだと思うから。

「…だから…雄大さんのマンションでは、一緒に暮らせないって思ったんです…ごめんなさい…本当にごめんなさい…」

これで嫌いになられたら、なられたでいい。

自分の気持ちを正直に打ち明けられないまま、我慢しているよりずっとマシ、そして、楽。

すると…

「ははは…ごめんね、笑って…な〜んだ…そうだったの…ははは…そっか、そうだよね…元カノがいた時のベッドとかかあ…そっかあ…なるほどねえ…ん〜とさ、なんだろ…なんて言ったらいいか…ん〜…ゆりちゃん…なんか嬉しいよ…なんかわかんないけど…」

「…え?」

「…だって…あはは…まあ、いいや…じゃあ…僕も、ゆりちゃんと一緒になるちゃんとこに引っ越すよ!」

「?え?だって…雄大さんとこのマンション…買ったって…」

「ああ、うん、そうなんだけど…だからね…売ればいいかなあって…」

「?え?そ、そんな簡単に…」

「ああ、うん、まあ、そうなんだけど…まだ、少しローンが残ってるけど…でも、まあ、大丈夫じゃないかなあ?」

「え?そんなこと、できるの?」

「え、ああ、できるできる…不動産屋と相談しなきゃならないけど…大丈夫、イケるって…」

あんなに緊張して、心配していたことが、こうもあっさり解決してしまうなんて。

急にヘナヘナと体中の力が抜けると、原さんが抱き止めてくれた。

「まだ、完成まで時間があるんでしょ?だったら、これからの2人のこと、ゆっくり話し合えるね」

そう言うなり、原さんは優しいキスをくれた。

そして、そのまま、私の部屋に泊まってくれた。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ