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第61話

前回の続きです。どうぞよろしくお願い致します。


建物の奥から工事作業の音が聞こえる。

ミズエさんとなるちゃんの案内で、玄関を入って右側の廊下からゆっくりと進んで行く。

靴箱部屋のお隣は、大きなダイニングルームになっており、長方形の部屋の廊下と反対側は、全部窓。

腰の高さから天井近くまでの窓から、庭が見える。

そして、大きな暖炉も。

「わあ、素敵!外国みたい!」

思わず心の声が漏れちゃう、あゆみちゃんの気持ちがよくわかると思った。

ダイニングルームから蒲鉾の様な、トンネルの様な、上が丸くなった出入り口の隣は、これまた広めの厨房、そしてその奥に大きなパントリー。

「広いですねえ〜!レストランとか、ホテルの厨房みたい!」

以前、教会のシスター達が共同生活を送っていただけでなく、様々な事情で行く当てもなく、教会を頼って来た人々も数人受け入れて、次の場所が見つかるまでの間、ここで教会の手伝いなどをしながらみんなで暮らしていたそうだ。

なので、大勢で暮らせる仕様になっているらしい。

「だから、なんかね、全て広いんだよねえ」

ミズエさんの言う通り、案内された場所は、どこも広くてと言うよりも、広すぎて。

廊下の1番奥にあるパントリーや、厨房やダイニングルームの廊下を挟んだ向かい側にある、大浴場とはいかないものの、大人数で入れる大きなお風呂場にトイレ、洗濯室、洗濯干し場などなど、初めて来たから見て驚いたと言うだけじゃなく、その大きさにいちいち驚くしかなかった。

廊下の突き当たりにある階段から、今度は2階を案内してもらった。

やっぱりチョコレート色の階段を上っていくと、上は工事の真っ只中。

廊下を挟んだ両側に大きな部屋がいくつか並んでいる。

数えると、4部屋づつ。

どっち側かがシスター達の部屋で、どっち側かが他所から来た方々が宿泊していた部屋だそうだ。

部屋は6〜8人ぐらいの共同部屋で、玄関ホールの階段に近い2部屋は特別な個室なんだとか。

今、共同部屋をワンルームマンションの様に作り替えているとのこと。

「えーっ!じゃあ、ここ、人に貸すとか?するんですか?」

「うん、そうしようって、パパがね…ほら、今の私達のアパートみたいな感じってのか、ちょっとタイプは違うけど、下宿っぽい感じってのか…」

なので、6〜8人で使っていた広い共同部屋には、それぞれトイレやお風呂、台所なんかの設置工事をしているそうだ。

そういうのを設置しても、今住んでいるアパートの2部屋より、ずっと広い様だ。

「え〜っ!私、ここに住みた〜い!住みたいです〜!」とあゆみちゃん。

私も同じ気持ちだったけれど、不意に脳裏に原さんの顔がよぎったので、声に出しては言えなかった。

2階の廊下を進み、玄関のホールを横目に通り過ぎると、今度は短い廊下の日当たりが良い方はガラスの温室になっていた。

そこでシスター達は、自分達が食べる野菜を育てていたそうだ。

まあ、その温室だけで食材は全て間に合わなかっただろうけれど、でも、やらないよりはマシと言うことらしい。

そして、反対側の部屋は裁縫室と言うので、ミシンや裁断などする作業台やアイロン台などがあったそうだ。

「え〜っ!そうなんですか〜!わあ〜、いいなあ〜!」

そんな話を聞くと、急に何か縫いたい衝動に駆られた。

こちら側の廊下の突き当たりにはドアがついていて、昔はお隣の教会に続く渡り廊下になっていたそうだ。

今は渡り廊下は外されて、ただ扉が固く閉じられているだけ。

続いて案内された1階の、玄関ホールの左側の廊下を進むと、玄関のすぐ横の広い部屋は、昔、応接室だったそうで、廊下の反対側の部屋は図書室だった様だ。

この建物はだいたいこんな感じで、後は外に広い倉庫の様なガレージがあるんだとか。

ダイニングルームに戻って、早速、女子会を開いた。

「手伝います!」と告げたものの、「いや〜、ありがとうね〜…でも、ごめんね、折角来てくれたのにこんなこと言うのもなんなんだけど…手伝ってもらうとこ、ないんだよねえ…」とミズエさん。

一級建築士でもあるなるちゃんパパと、純喫茶「純」の古くからの常連であるゲンさんが社長の「青空工務店」さんに、リフォーム工事を頼んでいる為、これと言って特に手伝うことはないそうだ。

「…ん〜、なんかね、そういう感じなのよねえ〜」

そう言いながら、ミズエさんはお茶を淹れてくれた。

私とあゆみちゃんからの差し入れのクッキーや、「純」のチーズケーキで、楽しいお茶会が始まった。

聞くところによると、1階の応接室だった部屋に、なるちゃんパパさんは設計事務所を構えるそうだ。

そして、このダイニングルームで、ミズエさんは「純」の様な喫茶店を開きたいと言う。

今の学校の給食センターの仕事を辞めて、管理栄養士の資格と調理師免許を活かした形で、ここにそう言う形のお店を開きたいとのこと。

「わあ、素敵じゃないですかあ!」

そして、1階の元図書室を自分達の住居として使う計画なんだそう。

「図書室だったから、上のシスター達の部屋よりも、随分広いんだよねえ…あそこなら、将来、なるが大きくなった時、自分の部屋を作ってあげられるなあって思って…」

「わあ、素敵!いいじゃないですかあ!なるちゃんもいいねえ!自分のお部屋作ってもらえるなんて!」

「うん!うふふふふ」

なるちゃんは可愛く照れながら、チーズケーキを一口、パクッと口に入れた。

「で、ここ、いつ頃完成なんですか?」

「あ〜、え〜とね、計画通りだと〜…え〜と、ごめんね、ちょっと待っててもらえる?」

そう言って、ミズエさんはエプロンのポケットからスマホを取り出し確認。

「あ〜、2月の終わり頃か、3月の初めぐらいじゃないかなあ」

「そうなんだあ」

あゆみちゃんと声が揃った。

多分、あゆみちゃんも私と同じことを考えてるに違いないと感じた。

どうしよう…どうしよう…どうしよう…どうしよう…

まだ、この建物の部屋全部を、どう使うか考えていないらしいけれど…

「…ミズエさん、私…」

喉まで出かかった言葉を、今、どうしても吐き出したいと思った。

「どしたの?ゆりちゃん…眉間にすんごい皺寄ってるけど…」

「あの、ミズエさん、あゆみちゃん、なるちゃん…話、聞いてもらっていいですか?…実は…」

言う前に、まずは飲み頃になったお茶を一口ゴクンと飲んだ。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続きどうぞよろしくお願い致します。

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