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第55話

前回の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。

なんか色々情報が多すぎて、若干頭の中がパニック状態。

ヒデさんは年明け早々フランスに旅立つそうだし、なるちゃんパパは仕事辞めて、なるちゃん達と一緒に暮らすって言ってたけど…

来年の春頃には、ここも取り壊すことになってしまったし、隣の純喫茶「純」も閉めるって言ってたし。

長く厨房に立ち続けている大家の純平さんは、年齢と共にだいぶ足腰が弱くなってきているそうだ。

それに加えて両手の腱鞘炎も悪化し、毎週の様に店を開ける前、整形外科に通い、痛む両手の関節に注射をしてもらいながらも、頑張って踏ん張っていると。

更にお店ができた頃から通う常連客で建築業者の千葉さんから、「そろそろ建て替えた方が…」と、少し前に助言されたと聞く。

「そうよねえ、だってもう40年以上もだものねえ…」

そう純子さんがしみじみ呟いていたっけ。

アパートの方は住人が変わるタイミングで、ちょいちょいリフォームはしているけれど、それもそろそろ限界に近いようだ。

あゆみちゃんはどうするんだろう?

まだ、聞いてないけど、実家に戻るのかなあ?

それとも、新しい部屋を探すのかなあ?

私は…どうしよう…

今更、実家に戻るとなると、仕事辞めてこの街から離れることになっちゃう。

そしたら、原さんとお別れしなくちゃいけない…んだよね、きっと。

それとも遠距離恋愛?

いやいや…それはきっと無理。

上手くやってるカップルもいっぱいいるんだろうけど、私には絶対に無理だって自信を持って言える。

理由は…なんか説明できないけど。

ただ、予感はある。

遠距離だと上手くいかない予感。

やってみなくちゃわからないんだろうけど…でもな、そんな勇気ないもの。

そんでガッツも。

それだったら、やっぱり新しい部屋を探すしか…

早速探そうかと思ったけれど、なんとなく気持ちが追いつかなくて。

そうしている間に、数日経った。

仕事中、ちょっぴりぼんやりしてしまう瞬間があって、そんな時、原さんがさりげなく私をサポートしながら、「しっかり!」って優しく喝を入れてくれた。

「ゆりさん、大丈夫?今日は一緒に帰ろう!」

私があんまり暗い顔をしてるんで、同じ遅番だった原さんが心配して部屋まで付き添ってくれた。

「じゃあ、行くね…」

部屋に入らず、いつもの様に玄関先で帰ろうとした原さんの後ろ姿に、「行かないで!お願い!」と心からの声が漏れ出た。

「ごめんなさい…私…」

やっと原さんが自分の部屋に来てくれたと言うのに、冷蔵庫で冷やしていたペットボトルのお茶を出すのが精一杯で、それ以上は何もできなかった。

初めて部屋に原さんが来てくれた。

本当は嬉しくて恥ずかしくて、幸せいっぱいなのはずなのに。

どうしても明るい気持ちになれなくて。

並んで腰掛けたソファーで、堪えきれずに泣きだしてしまった。

「大丈夫、大丈夫…大丈夫だから」

そう言って抱きしめてくれた原さんの胸に、顔を埋めて泣いた。

「もう、大丈夫」

やっと顔を上げると、原さんが優しい笑顔で待っていてくれてた。

こんな時、原さんがいてくれて本当によかった。

もしも、まだつき合っていなかったら、私1人だったとしたら、きっとこの状態に耐えられなかったと思う。

耐えられず、けれども、現実は厳しくて。

それでもやりこなせなければいけない毎日に、涙しながらも無理して笑顔を作りつつ、歯を食いしばって立ち向かうしかないのだけれど。

そうやって自分を無理にでも奮い立たせて、そのうち時間と共に徐々に元気を取り戻していくんだろうなと思う。

だけど、今。

そこに至っていない今は、どうしたらいい?

そう考えると、すぐ目の前に頼れる誰かがいてくれる幸せ。

心が弱っている自分に、寄り添ってくれる相手がいる安心感。

そのありがたみを、私は今、痛感している。

「やだっ、私ったら、ごめんなさい…急に泣いたりして…」

「いや、いいんだよ、全然…それより…ゆりちゃん…」

え?今、ゆりちゃんって。

さっきまでゆりさんだったのに、ゆりちゃんって。

なんか嬉しい…なのに、今は心が辛くて苦しい。

「急に色んなことがいっぱいだったから、ショックだったんだよね、わかるよ…だって、僕も色々ショックだったからさ…」

本当にそうだ。

そうなんだけど、いつまでもショックを受けて立ち止まってる訳にはいかない。

では、この先どうする?

そんな不安が頭を掠めると、また、涙が勝手に噴き出た。

「私…私…新しい部屋を探し始めないといけないってわかってるんだけど…でも、なんとなく気持ちが…追いつかなくて…年が明けたら、新社会人の人とか、一人暮らしを始める大学生とかが部屋探し始めるだろうから…そうなったら、いい部屋とか見つけるの大変だろうしって、頭ではわかってるんだけど…でも、すぐには探せないと言うか、探す気が起きないというか…」

「…ん〜…そりゃそうだよね、わかるよ、その気持ち…だって、ショック過ぎだったものね…ん〜…あ、じゃあ、僕のところに来る?」

「へ?」

「ん〜とさ、だからね、これを機に一緒に暮らさない?どうかな?」

え!え!え!え!え〜〜〜〜〜っ!

原さんと一緒に暮らす〜〜〜?

それって…それって…どういう感じで?

最後まで読んで頂き、本当にありがとございました。お話はまだ続きますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。

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