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第54話

前回の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。

「あ〜、なるほど〜、パプリカパウダーが入ってるんだ〜…へ〜え」

純喫茶「純」の厨房で大家の純平さんにレクチャーしてもらいながら、スマホで動画を撮ったり、ペンでメモをとったり。

私もパスタの茹で方や炒め方など、習った通りにやってみた。

なかなか難しい。

それもそのはずだと思った。

だって、ここで40年以上も料理を作って、お客さんに提供し続けているのだから。

「なるね、お野菜切るの頑張るの」

なるちゃんも一生懸命。

あゆみちゃんは包丁で手を切ることはなかったけれど、パスタを炒める際、ちょっぴり火傷をしちゃって。

「ほらあ、あゆみちゃん、火傷して〜…も〜う、ちゃんと気をつけなきゃ、ねっ!」

赤瀬川君に手当てしてもらっていた。

そんなこんなで約30分。

大量のナポリタンが出来上がった。

その丁度のタイミングで、遅番だった原さん到着。

厨房付近に集まっている私達を見るなり、「あれ?皆さん、どうされたんですか?」と。

「あ!雄大さん!今ね、純平さんからここのナポリタンの作り方を習ってたとこなの」

「え?みんなで?」

「そう!」

原さん以外の声が揃った。

 

「わ〜い!わ〜い!みんなで食べよう!食べよう!」

思いがけないナポリタンパーティー。

あれだけあったナポリタンも残り僅かの終盤に差し掛かった時、なるちゃんのパパからみんなに報告したいと。

「…ん〜、何から話せば…ああ、そうそう…この間、なるが家出みたいなことになっちゃって、皆さんには本当申し訳ないし、改めてありがとうございました…で…え〜と…あの次の日、家族3人で仕事も保育園もお休みして、赤瀬川君の、ね、牧場に遊びに行かせてもらったんだけど…あそこ、すごく良い所だねえ…」

行ったことのあるメンツは、全員こっくんと頷いた。

「それで…なんと言うか、本当に良い所で、いい人達で感激しちゃって…それで、会社を辞めて、この街に住みたいなって思ってて…昨日、もう会社に辞表は出したんだよね…」

大手ゼネコンに勤めているなるちゃんパパさん。

なるちゃんがまだ赤ちゃんだった頃、治安があんまり宜しくない海外に転勤することになったそうで。

一緒に連れて行こうか悩んで迷って、ミズエさんといっぱい話し合って、結局、離婚に至ったと。

けれども、嫌いで別れた訳じゃないから、今年の夏頃、国内勤務が決まって帰国してから、こうして足しげく2人のいるアパートに通って、今後のことを色々ミズエさんと話し合ってきたそうだ。

ミズエさんと2人どうしようか悩んでいた時、牧場に行ったら、何かが吹っ切れたというか、大袈裟な話ではなく、人生観が変わったと。

まだ、辞表を出したばかりだから、何もプランはないそうだけれど、これからは家族3人で暮らすと決めたと、力強く語っていた。

パチパチパチパチ。

パパさんの発表に、全員で拍手を送った。

その後、「僕もみんなに報告が…」とヒデさんが立ち上がった。

「僕、あの、年が明けたら、フランスに旅立ちます」

「ええ〜〜〜〜っ!フランス〜!」

合わせた訳じゃないけれど、みんなの声が一斉に揃った。

教会のバザーの後、日曜礼拝などに通っていたヒデさん。

フランス人牧師のミシェルさんとすっかり仲良くなって、クリスマス会のポスターも頼まれていたところまでは、みんなの知るところだけれど…

「それから、ミシェルといっぱい色んな話をしているうちに、じゃあ一度行ってみたらいいって言われて…それで、なんかいいなあ、行ってみるのもありかなあなんて思ったんですよね…それで…」

職場の漫画家の先生に辞めると伝えたんだけど、「それは困る」となって…

で、職場のみんなに相談してみたら、馴染みの編集者の方から「リモートでできるから、辞める必要ないですよ!全然大丈夫!」と言われて、あっさり解決。

そこでフランスに住んでいるミシェル先生の実家に、ホームステイする形でもう話はついているそうだ。

「…なので…皆さんとは、もうちょっとしか一緒にいられないんですけど…ここにいる間は、宜しくお願いします」

そう言って、深々と頭を下げた。

「寂しくなるわよね」

純子さんの言葉に、みんなが賛同した。

すると、今度はあゆみちゃんが立ち上がった。

「あの!あのですね、来年度からの話なんですけど…ヒデさんの描いた素敵な絵がですね、な、なんと!うちの銀行の通帳のデザインに採用されました!」

「え?聞いてないよ…」

呆然としているヒデさんに、あゆみちゃんが話を続けた。

「あれ?ヒデさん、何度かうちの銀行で、打ち合わせってか、話しましたよね」

「したけど…採用の話は、今、初めて聞いたよ」

「え?そうですか?じゃあ、ごめんなさい、あ、そだ、明日の朝、担当者がメールでお知らせするとかなんか言ってましたわ…ははははは」

紙の預金通帳を廃止する銀行もある中、あゆみちゃんが勤めている「エーゲ海銀行」は、絶対に廃止しないんだそうだ。

「…お年寄りのお客様も多いですし、それに…ほら、地震とか災害で停電しちゃったりした時、やっぱり紙の通帳があった方がっていうことでして…で、今の通帳の絵柄も結構長く採用されてたんですけど、来年度からは新しいのにしようってなったんです…それで、明日の朝って聞いたけど、まあでも、午前中には担当の者から連絡があると思いますんで…」

「え、そうなの?わあ…なんか…嬉しいなあ…ほら、あゆみちゃんに勧められて、インスタントグラマラス始めたでしょ…そしたら、お酒のラベルの話とか、図書館のポスターとか、何件か、仕事を依頼したいってダイレクトメールもらったんだよね…」

「わあ!すご〜い!」

「ヒデさん、おめでとう!やったね!」

みんなで盛大に拍手をした後、今度は原さんが私の手をとって、一緒に立ち上がった。

ん?何?どしたの?雄大さん?

そう思うが先か、原さんが私と手を繋いだまま、みんなの前で…

「あの、もう皆さん、ご存知とは思いますが、僕達、正式に付き合っていますので…」

きゃあ!恥ずかしい!

だけど、原さんの宣言通りに、折角みんながいるんだもの。

ちゃんと、お知らせしておかないとね。

「以上です!宜しくお願い致します!」

原さんと2人、深々と頭を下げた。

すると、今度は純平さんと純子さんが、申し訳なさそうに話し始めた。

「皆さん、折角こうして仲良くなれて、本当に嬉しくてたまらないんだけど…ごめんなさい…来年の春頃に、ここを締めようと思ってるの…」

え〜〜〜〜〜っ!え〜〜〜〜〜っ!!え〜〜〜〜〜っ!

純喫茶「純」閉店?

そして、私達が住んでいるアパート「コーポ純」も取り壊すと…

最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。

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