第52話
前回の続きです。早番の帰り、入院しているさとみのお見舞いに行って…
「えっ!キスしたの!」
早番の帰り、さとみのお見舞いに行って色々報告。
「え〜!すごいね!やるじゃん!ゆり〜!」
「えへへ」
「良かったね、ちゃんと好きって言えて」
さとみの言う通り。
この間、きちんと原さんに「好き」と言えて嬉しかった。
それまでが自分でもイライラするぐらい、もちゃもちゃしてたと思う。
勝手に手を掴んだり、腕に顔を埋めさせてもらったり、鍛え上げた胸を触らせてもらって、そのまま耳をつける形で顔をくっつけたりしていたけれど、肝心要の「好き」が後回しになっていたから。
「…へ〜…でも、あれだね、ゆっくり愛を育むつもりが、告白した日にチューしたんだあ〜、すごいね、ゆりもやるときゃやるんだねえ…私と違って、まあ、会ってすぐヤっちゃう訳じゃないから、まだ、全然上品だけど…あはは…だけど、あの曲ってさ、やっぱすごいんだね〜!力あるってのか」
「ね〜、私もね、ラジオから流れてきたからって感じだったんだけどね」
原さんの車はいつもラジオがついている。
運転中、どうしても道路交通情報やニュース、天気予報をチェックする必要があるからって言ってたっけ。
「あの歌、私もさ、よく使ってたな」
「え!そうなの?」
「うん…だって、いいでしょ?あのフレーズ、チューしてける?チューしてける?ける?って」
「ああ、まあ」
「だから、私も彼氏ができる度、ちょいちょい歌ってはチューしてもらってたな」
「ふ〜ん、そうなんだあ」
相槌を打ちながら、回想してみた。
確かに私も、職場ではイチャイチャできないから、一緒に帰れる時など、車内でわざと歌っては、キスしてもらってた。
と言っても、まだ、2回ぐらいのことなんだけど。
「私の場合はさ、彼が歌っておねだりしてくることもあったけど…」
さすが恋愛の達人!
今まで一体何人の人と付き合ってきたんだろう?
そして、何人の人と…
詳しくは聞かない。
だって、野暮だから。
それより、原さんからもキスのおねだりされてみたいと思った。
きゃあ〜!恥ずかしい!
「ああ、ねえ、ちょっとそれよりさ、この薔薇すごいね〜!」
2人部屋に1人でいるさとみのベッドの横の、小さいチェストの上の花瓶に見事な可愛いピンクの薔薇がいっぱい。
それから出ている何とも言えない良い香りが、殺風景な病室中に広がっている。
「ああ…これ?これね…ほら、ヌーディストビーチの彼がさ…昨日、お見舞いで持って来たの」
「えっ!そ、そ、そうなんだあ…って、え?じゃあ、より戻すの?」
「あ〜、戻さない、戻さないって…ってか、戻したくないかなあ…あいつとは…今は、こんなだから、戻すなら自分の体が最優先だよお」
まあ、そうだよね。
あの事故からまだ数日しか経ってないんだものね。
体のあちこちが包帯だらけで、ずっと点滴して、尿道カテーテルをつけてるんだものね。
1日でも早く、体を回復させないとね。
「…で?部屋は?彼、ゆりの部屋に来たの?」
「へ?ううん、まだ…」
さとみに言われてハッとした。
そうだった、そうだった。
家まで送ってもらうけど、まだ、自宅には案内していない。
私もまだ原さんの家に行ったことないし。
「え〜っ!なんで?」
「え〜、なんでと言われても…ん〜…なんでだろう?」
2人で「純」で何度も一緒にご飯を食べるけど…
原さん、お腹いっぱいだからって、なんかそのまま帰っちゃうけど…
別にそれが当たり前みたいになっちゃってたかも。
「え〜、じゃあさ、彼に手料理とか作ってないんだあ…」
手料理…
さとみの何気ない発言に、ドキッとしてしまった。
そうだ!私…原さんを部屋に呼びたい!
そんでもって、原さんの部屋にも行ってみたい!
そうだよね、付き合うことになったんだもん。
お互いの家を行き来するよね、普通はさ。
そんでもって、手料理なんか作っちゃたりしてさ。
「あ、さとみ!ごめん!私、ちょっと用事思い出したから、もう帰るね!ごめんね!じゃあ、またね!」
さとみの何気ない一言に誘発された私は、タクシーで帰った。
本当はゆっくり歩いて帰ろうかと思ってたんだけど。
でも、今は急いで家に戻らなくちゃ!
そして、急いで部屋を片付けなくちゃ!
だって、今のまんまじゃ、原さんに来てもらうのが恥ずかしいんだもん。
だから、彼がいつ来ても大丈夫な様に。
早く!早く!片付けなくっちゃ!
自分だけならさほど綺麗じゃなくても平気だけれど、大好きな原さんが来るとなれば…
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。




