第49話
前回の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。
「ゆりさん…そろそろ行こうっか」
原さんに促されるまま、車に戻った。
戻る道中、どうしても手を繋ぎたかったけれど叶わず。
だもんで、原さんのジャンバーの後ろを摘むので、とりあえず我慢した。
「は〜、すっかり冷えちゃったねえ…」
駐車場に停めた車の中は、お日様の力でホカホカ暖かかった。
「じゃあ、家まで送るね」
そう言われたけれど、このまま真っ直ぐ帰りたくなかった。
けれども、言葉が上手く出て来ない。
首を激しく横に振るので精一杯。
「え?あれ?どっか寄りたかった?買い物とか?」
違うの!違うの!そうじゃないの!
今日はこのまま、原さんと一緒にいたいだけなの!
気持ちが爆発しそうになって、ようやく口から言葉が溢れ出した。
「…一緒に…一緒にいたい…んです…ダメ?ダメでした?」
雄大さんはもう家に帰りたいの?
私と一緒は嫌なの?
だって、だって、今までこんな風に長い時間、一緒にいたことないんだもの。
だから、だから、せめて、今日のお休みはこのまま…
運転席の原さんの顔を、真っ直ぐに見つめた。
私の目に涙の玉が膨らんできた。
泣いちゃだめ!
泣くのは卑怯。
そう思っても、どんどんと玉は大きく膨らむ。
我慢できずに瞬きすると、ポロポロンと涙の玉がこぼれ落ちた。
「ん〜…ごめんね、こんなこと聞くのは野暮かもしれないけど…本当、この間からどうしたの?ゆりさん…手を握ってきたり、さっきも…なんか、あった?友達のこと?」
真剣な顔の原さん。
このところの私の勝手すぎる行動に、戸惑うのも仕方がない。
ここは、ここははっきり、言わなくちゃ…
「…あの…私!雄大さんが…好き…なんです」
「…え、え…でも、ゆりさん…赤瀬川君とか、ヒデさんが好きなんじゃ…」
「いや、あの…違うんです!違うんです!確かに…確かにそういう気持ちの時もありました…だけど…それは…本当に好きって言うんじゃなくて…ただ、キュンとするってだけで…」
「…」
本当は色々長々と説明したい。
けれども、どうやって話せばいいのか…
「…みんなで…牧場に行った時…ヒデさんに好きにスペアはいらないよねって言われて…ハッとしちゃって…その言葉で、私…今まで自分の中に蓋をしてきた、正直な気持ちに気がついたんです…ずっと雄大さんのことが好きだったって…最初からただの憧れじゃなくて…好きだったんだって…だけど、私…雄大さんに酷い態度ばかりとっちゃってて…自分でも自分が嫌いになるぐらい、嫌な女だって思って…可愛げのない女だって思って…だから、だから…告白したって、どうせダメだろうって、諦めたりしてたんですけど…あの時…あの時どうしても…手…離したくなかったんです、ごめんなさい」
ダメだ!ダメだ!
もっともっと、もっともっと、ちゃんと丁寧に説明したい。
今に至る経緯を、きちんとお話ししたい。
だけど…もう、これ以上は…言葉が見つからない…
しばらくの沈黙。
原さんも何をどう話したらいいのか、自分の中であれこれ言葉を探しているみたいだった。
「…僕は…その…最初に会った時から、ゆりさんのこといいなあって思ってて…だけど…あ、これ、嫌われてるかもって感じたから、諦めてたんだけど…じゃあ、もっと早く、僕からきちんと告白してたらよかったよね…ごめんね…なんかさ…なんか、言えなかったんだよね…」
そうだよね、そう。
告白が成功すればいいけれど、失敗したら…
同じ職場だからどうしたって顔を合わせてしまう。
そしたら、どう接すればいいのか。
ギクシャクしちゃうのは目に見えているのだから。
「じゃあ、あのさ、あの…こんな形になっちゃったけど…改めまして…ゆりさん、好きです!僕と付き合って下さい!…って、ごめんね、こんな車の中で…もっとロマンチックな方が」
「ううん…嬉しい!じゃあ、あの、私からも…あの…雄大さん…あの…私と付き合って下さい!」
「え!いや…あれ〜?あれ?今、僕から…言ったんだけど…え〜…」
まあ、いっか。
「…じゃあ…これから…どうしようか…」
私はすぐにでもキスしたり、それ以上の関係になっても全然構わないんだけど…
「ん〜…あ!そだ!ゆりさんさ、あのアパートから上の方に行ったことある?」
え?
今住んでるあそこから上?
そう言われてみると…
「…ん〜…ない…かなあ?」
「じゃあさ、これからちょっと行ってみない?確か、あの上の方に展望台かなんかあると思ったんだけど…どう?」
「わあ!行ってみたいです!はい!」
「じゃあ…ドライブデートってことで…」
出発進行!
…
急がなくていい。
お互いがお互いのことを好きだと、はっきりしたんだから。
気持ちを確認したからって、すぐに体を合わせるのはどうなんだろう?
もっと沢山話して、一緒にご飯食べたり、どこかへ行ったり。
ゆっくりと時間をかけながら、自然な形で触れ合っていけばいい。
原さんの考え方が、素敵で大人だなあと感じる。
なのに、私ったら…
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。




