第47話
前回の続きです。港が見える大きな公園で…
港に停泊している外国の大型客船の大きさには圧倒される。
ここから結構離れたところにいるはずなのに、まるで真ん前にあるかの様な迫力。
その横の観光船乗り場には、屋根の先にいくつもの提灯を下げた屋形船と、小さめの観光船。
風に乗っかるかもめは、空の途中で停止している様に飛んでいる。
「…え?じゃあ…あの事故でタクシーに乗ってたのって、ゆりさんの友達…へあっくしょん!」
仕事を休んで、ここに来るまでを話している最中だった。
「へ、へ、は、は、はあ〜っくしょん!寒っ!あ…ご、ごめん、ゆりさん、話の途中で本当に申し訳ないけど…ごめん…走って汗かいちゃって…ちょっと寒いから…ごめんね、今日はこれで…は、は、はっくしょ〜ん!」
くしゃみの後、鼻をずるずると啜った原さんは、「ごめん…じゃあ…」と言い、帰る素振りでこちらに手を振って、走り出しちゃった。
や、や、やだっ!行かないで!やだっ!行かないで!行かないで!もうちょっとだけ!一緒に…
そう思うが先か、体が勝手に動いて、車に向かう原さんの後を慌てて追いかけた。
追いかけながら、原さんの背中に声をかけた。
「待って!待って〜!雄大さん!あの、ちょっと、待って下さい!」
鼻を啜って軽く走りながらも、こちらを振り向いてくれた。
「ん?どしたの?さっ、寒っ…ごめん、ちょっと寒いから、手短にお願いできるかな…ごめんね」
両手で自分の体を抱きしめながら、私の呼びかけに応じてくれた。
「ご、ごめんなさい、あの…パン!」
「パン?」
「パン!」
「え?パン?」
「ええ、あの、パン」
「え?」
「あの、その…パン…パン、好きですか?」
「好きだけど…」
「あ、じゃあ、あの、パン食べませんか?一緒に…これから一緒にパン、食べませんか?」
「?」
「さっき、ここ来る前、いっぱい買っちゃったんで、一緒にどうかなあって…」
私がパン屋の袋を上に掲げて原さんに見せると、
「あ〜、パンってそれかあ…ありがとう…じゃあ…折角だし、ん〜…ご一緒させてもらうかな…の前に…ごめんね、じゃあ、ちょっと着替えてくるね」
そう言うと、原さんはもう一度大きなくしゃみをして、大急ぎで駐車場に駆けて行った。
「あ、じゃあ、あの、私、飲み物買って来ますね〜!雄大さん、何がいいですか〜?」
原さんを追いかけながら彼の背中に大声で尋ねると、少し間を置き、「冷たいコーヒーで…あ!ブラックで!…あ、何にも入ってない純粋のブラックでお願いしま〜す!」と。
そして、「あ〜、寒い寒い!ひょえ〜!」と叫びながら、走っていった。
原さんを追いかける形で、ようやく駐車場に近いさっきの自販機まで来ると、その側の水飲み場の水を飲む方ではなく、手を洗う方の蛇口で原さんがバシャバシャと豪快に顔を洗っていた。
「ひゃあ〜、冷た〜い!」
濡れた顔を急いでタオルで拭き取ると、今度はそのタオルを水で濡らしてギュッと固く絞った。
男らしい顔の洗い方…
なんだろう?
全部、全部、素敵に見えちゃう。
ってか、素敵!かっこいい!かっこよ過ぎ〜〜!好き〜!大好き〜!
顔を洗っていた原さんに、見惚れてしまった。
脳内で若干のパニックを起こしつつも、「コーヒーコーヒー」呪文を唱え、なんとか冷静さを取り戻そうと努力した。
やっと自販機で原さんのコーヒーを買い、そのままその場で原さんを待った。
ここから、少し低い位置にある駐車場がよく見える。
原さんは寒がりながらも急いで車に戻ると、運転側のドアを開けたまま、着ていたTシャツを勢いよく脱ぎ、「ひゃあ!寒〜い!」と言いながら、ものすごいスピードで濡らしたタオルで体を拭いていた。
きゃっ!
そう驚きつつ、鍛え上げられた原さんの裸の上半身に目が釘付け。
きゃ〜!きゃ〜!きゃ〜!きゃ〜!
頭の中できゃ〜きゃ〜騒ぎつつも、原さんの体から目が離せず、どうにかなってしまいそうになった。
さっさと体を拭き終わると、すぐさま、持って来てた袋から新しいTシャツを出して着ちゃう原さん。
チッ!
自然に舌打ちが出てしまった。
あ〜、残念!もうちょっと見たかったな。
できれば、こんな離れたところからじゃなくて、もっと近くで見たかった。
原さんの裸…
って、や〜ん!私ったら、何、変態みたいなこと考えちゃって!
いや〜ん!恥ずかしい〜!
でも、でも、あの厚くて頼りがいのある原さんの胸に…触れてみたい。
服の上からじゃなくて…直に触ってみたい。
そして、私も服のままじゃなくて…
…きゃあ〜〜〜!いや〜ん!私のばか〜ん!
なになに?今、何エッチなこと想像して!
やだ〜ん!やっ、ちょっと、どうする〜?
原さんと…あんなことして…こんなことして…って…や〜だ〜!ちょっ!エッチ〜!
私、どうすんのよ〜!
何、考えてんのよ〜!
1人妄想の世界にどっぷり浸ってしまった。
なので、とっくに温かい格好に着替えて、私の傍まで来ていた原さんに声をかけられると、「わっ!」
心臓が飛び出そうなぐらい、驚いてしまった。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。どうぞ宜しくお願い致します。




