第41話
お話の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。
あれから原さんと、何となくぎこちない。
私が突っぱねる様な冷たい言い方をしたせいだ。
あの時、何であんな言い方しちゃったんだろう?
原さん…今頃、婚活パーティーに行ってるんだよね、きっと。
だって、今日、土曜日だもん。
原さん、お休みだもんね。
きっと行ってる。
行って、すんごく可愛くて優しくていい人と、巡り合ってんだろうなあ。
別に付き合ってる訳じゃないし、原さんのこともキュン以上好き未満だから。
…本当に好き…未満…なのかな…
そう言えば、赤瀬川君も今日、お休みだったっけ。
じゃあ、きっと、あゆみちゃんとデートしてるよねえ。
あの後、2人、付き合い始めたみたいだし。
そっかあ…
「ゆりちゃん!さっ!行くよ!もう休憩時間終了!終了!」
高島さんに促され、重い腰を上げた。
今日は土曜日だから、お店は結構な混み具合。
暗い気分のまま、何とか頑張った。
帰り、どうしてもそのまま帰る気がしなかった。
なので、珍しく1人で駅前の居酒屋さんに行ってみた。
「いらっしゃい!お客様、お一人様ですか?」
こじんまりしたその店のカウンター席に腰掛けた。
生まれて初めて1人での居酒屋さん。
「とりあえずビールで」
普段だってなかなか一人酒なぞしないけれど、今日はどうしても呑みたい気分。
つき出しの小鉢のおひたしをつまみながら、冷たいビールを一口ゴクン。
ぷは〜!美味しい!
あれ?ビールってこんなに美味しかったっけ?
たった一口でちょっぴり酔いが回って来た。
空きっ腹ではいけないと、揚げ出し豆腐と枝豆、それに焼きおにぎりを頼んだ。
あっちのテーブルでは、グループが楽しそう。
カウンターの横をチラリ。
あれ?どこかで見かけた顔。
そう思ったのは、あちらも一緒みたい。
「あれ?ゆりさん、1人?」
ススススと席を移動して来たのは、ヒデさんだった。
「ヒデさんも1人ですかあ?じゃあ、一緒に飲みましょ〜!」
そんな訳でヒデさんと一緒に飲んで食べて喋った。
「…ふ〜ん…そんなことがあ…じゃあ、あゆみちゃんと赤瀬川君、付き合うことになったんだねえ…そっかあ…で?ゆりさんは、どうしたの?なんか悩みがいっぱいって顔してるけど…」
「え〜…私ですかあ…ええ、まあ…その…」
ヒデさんに、話した。
本当はさとみに相談したいと思ってたけど、何故かどうしてもヒデさんに聞いてもらいたくなっていた。
「…ん〜…そうなんだあ…それはさあ…ゆりさん、原くんのこと、すんごく好きなんじゃない…だから、色々悔やんだり、素っ気なくしちゃったり…ツンデレしちゃうんじゃないの?だけど、それを自分では認めたくないって、意地になっちゃってるんじゃない…それは〜…ちょっと…原君が可哀想だよ…」
ヒデさんの言葉が、胸に沁みた。
沁みすぎて、勝手に涙がポロポロ溢れた。
最初は原さんが一方的に自分を好きなんだと、でも、自分は憧れの域を超えてないから、そこまで好きになってないつもりだった。
直接「好き」と告白された訳じゃないけど、それに近いアプローチは何回もある。
憧れの原さんからそう言う風にしてもらうのが、嬉しくて快感だった。
だけど、途中で赤瀬川君の方に傾いたり、ヒデさんにだって。
「…きっと、もう、ダメですよね…私、ゆうさんに完全に嫌われちゃいましたよね…」
「ん〜…どうだろうねえ…逆に、原君の方が、ゆりさんに嫌われたって思ってるのかもよ…あんなに何回も何回もさりげなくアタックしてるけど、やっぱり玉砕しちゃったって、思ってるかも…だから、あんなに嫌われてるなら、もう退こうって…ただの仕事の同僚でいようって、思ってるのかもしれないけどね…」
「え〜っ!そうなんですか〜?」
また涙が溢れ出た。
「あ、いや、もしかしてって話だから…本人に聞いてみないと、本当のところはわからないよ…」
ヒデさんに話を聞いてもらいながら、助言を頂きながら、ビール、ジョッキ2杯ですっかり酔っ払ってしまった。
自分でちゃんとお会計したところまでは順調だったけれど、店を出た後、急に足がカクンと曲がり、全身の力が抜けたかと思った途端、その場にペタンと座り込んでしまった。
そして、また涙が溢れて溢れて。
「あ〜、りゃりゃりゃりゃ…ゆりさ〜ん、しっかり〜!」
「あ〜…私、ここで大丈夫ですから〜…ヒデさん、どうぞ…1人で…」
「こんなゆりさんを置いて、1人で帰れる訳ないでしょ〜!しょうがないなあ〜!ほら、背中に…」
ヒデさんに背負われると、ホッとしてまた涙。
タクシーが止まるまでのちょっとの間。
まさかそんな姿を、原さんに見られていたと知ったのは、後になってからだった。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。




