第40話
前回の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。
久しぶりに原さんと2人きりで、純喫茶「純」で向かい合っている。
今日はヒデさんはおらず、見知らぬお客さんが数人いるだけ。
「さ〜て、今日は何を食べようかな!」
何となく原さんの明るさが、わざとらしい。
本当はかなり無理して、そうしているに違いないと思った。
そうして、原さんはカツ丼セットを、私は奢ってもらうつもりはないので、普通のナポリタンとオレンジジュースにした。
注文を待っていると、赤瀬川君とあゆみちゃんがやって来た。
「あれ?ゆりしゃんと原しゃん、お揃いで、これから晩御飯ですか?」
「うん、あゆみちゃんと赤瀬川君も?」
「ああ、はい…なんか赤瀬川君が奢る奢るって、しつこく言うもんだから」
「えっ!そ、そんなにしつこかった?」
「はい…かなり」
「え?じゃあ、やだった?」
「いや…やじゃないですけど〜、ねえ」
あゆみちゃんに話を振られてまごまごしていると、原さんが笑顔で「僕もね、ゆりさんに奢るからって誘っちゃって」と続けた。
「あ、いやっ…一緒に来ましたけど…私は自分の分は、ちゃんと自分で払いますから…」
「…ん〜…僕に、恥かかせないで」
「えっ?あ、そ、そんなつもりじゃ…」
「じゃあ、今日のところはさ、僕に奢らせて」
「ああ、じゃあ…はい」
正直、一瞬、原さんの言ってる意味がわからなかった。
けれども、よくよく落ち着いて考えると、ようやく理解できた。
私…原さんに恥をかかせちゃったんだ。
「ご、ごめんなさい、私」
「いいって、いいって…それより…ちょっと相談ってのか…承諾ってのか…なんて言ったらいいのかわかんないんだけど…」
「な、何ですか?」
「あ〜…この間、また大学時代の友達に…ほら、ラグビー部の…その友達から婚活パーティーに出ようって誘われちゃってて…それで…どうしようか、迷ってて…」
そこまで原さんが言いかけると、すかさずあゆみちゃんが、
「わあ〜!婚活パーティーですかあ?私も行ってみた〜い!」と続けた。
すると…
「ダメ!」と赤瀬川君。
「え?なんで?原さんと私、行っちゃダメなの?赤瀬川君も一緒に行きたかった?」
「ちっ、違う!違うって!原さんは行っていいけど…あゆみちゃんはさ…その…行っちゃ…ダメだって!」
「え〜、何で〜?何で原さんは行っていいのに、私はダメなの〜?私だって、ちょっとは出会いの場所に…」
「だから、それが絶対ダメ!」
「何で?何でダメなの?赤瀬川君に関係ないでしょ?」
「か…関係あるの!」
「…ん?どゆこと?」
「あゆみちゃん…まだ…怪我治ってないからさ…」
「そんなの〜…もう全然へっちゃらだよ〜!ほら、もう、絆創膏で十分だし…ってか、それ、婚活パーティーに行くのと関係ないし…ってか、何なの?赤瀬川君…なんか怒って…ヤダなあ…」
「そっ…それは…それはさ〜!あゆみちゃんのこと、好きだからに決まってんじゃんかよ〜!」
やっぱり…
赤瀬川君、やっぱりあゆみちゃんのことが、好きになっちゃってたんだね。
わかってた。
ちゃんと、わかってたよ。
「え〜〜〜〜〜っ!何?急に…そ、そそそそそそ…ゆりしゃんと原しゃんの前で…そそそそそそ、そんな大事なこと…え〜〜〜〜〜っ!」
「あ、や、だって…しゃあないじゃない…あゆみちゃん、しつこく婚活パーティーに行きたいって言うから…行かせない為にはさ〜、今、言うしかなかったんだもん!」
そうだよね、そうだよ。
私も原さんに行ってほしくない。
だけど…だけど…
「…ねえ、ゆりさんもそう思うでしょ?原さんは行ってもいいけど、あゆみちゃんは行っちゃダメだって!」
「え?わ、私…」
ムキになってる赤瀬川君とあゆみちゃんの視線は置いといて、原さんの表情が気になった。
原さん、私の答えを待ってる。
私に行かないでって、きっと言ってもらいたいんだ。
でも…
「…あ〜…え〜と…私は…私とゆうさんは…別に付き合ってるとか、そういう仲じゃないから…私に気にせず、行って来たらいいと思う…けど…」
あ〜!可愛くない女!
喋ってる途中から、原さんの顔が曇っていくのがわかった。
何であんな言い方、しちゃったんだろう?
これじゃ、あの時みたいに嫌われてしまう。
今回は絶対絶対嫌われた。
あ〜、どうしよう、どうしよう。
私…
…あ…何で、こんなに悔やんでんだろう?
何で、こんなに原さんに嫌われるのを恐れてんだろう?
何で?何で?何で?何で?
そうしている間に、テーブルの上にナポリタンとオレンジジュース到着。
「…そうだったね…僕と広瀬川さん、別に付き合ってるとか、そう言うんじゃないもんね…ごめんね、変なこと聞いたりして…ホントごめん…じゃあ…冷めないうちに食べよう!食べよう!」
広瀬川さんに戻ってしまった。
原さんと向かい合うも、何も喋らず黙々と食べるだけ。
その間、赤瀬川君とあゆみちゃんは、ワーワー喋り続けている。
赤瀬川君があゆみちゃんに「好き」って言ったあの勇気の1%でも私にあったら、よかったのに。
手を伸ばせば届く距離にいる原さんが、今はやけに遠く感じた。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。




