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第39話

お話の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。

「え〜、まだ来ないの〜?これで何回目?」

高島さんと水島さんが怒るのも当然。

原さんに猛アタックしている渡辺さんが、今日も遅刻しているから。

「も〜う!ほんっと、腹立つ!店長もさ、いくら人手が足りないからって、いつまであの人雇うつもりなんだか!こっちはみんな迷惑してるってのに!」

確かに人手は足りていない。

けれども、そう言ってる暇もない。

今日も今日とて、今いるメンバー全員で頑張るしかない。

だもんで、毎週お馴染みの「火曜トクトクお得デーっす!」の今日、気合いで乗り切るしかないということで、仕事前、高島さん水島さんと3人でドリンク剤を飲んで景気づけ。

そして、3人で円陣を組んだ後、「頑張るぞ!オー!」と雄叫びをあげ、天井に向かって片手を突き上げた瞬間、休憩室の端っこで紙コップのコーヒーを持ったまま、くすくすと笑っている原さんと何故か目があってしまった。

ああ、恥ずかしい。

恥ずかしいけど、まあ、いいや。

店内に向かう途中、トイレから出て来た赤瀬川君も合流し、みんなで出陣となった。

「は〜あ、凄かったねえ」

「そうですねえ、でも、ほら、3時からタイムセールだから…もっと忙しいかも」

高島さんと水島さんと一緒に、休憩室でランチタイム。

「あ〜…そういえば、あの人、ほら、渡辺さん…ま〜だ来ないってのか、今日は休むんだろうか?」

「えーっ!また!確か先週も無断欠勤一回してましたよねえ」

水島さんが言う通り、渡辺さん、先週も何曜日だったか忘れてしまったけれど、無断欠勤してたっけ。

文句と言うか、若干悪口大会になってしまっている最中、鮮魚コーナー担当の男性社員がおもむろに休憩室のテレビをつけた。

メジャーリーグの試合の結果を知りたかったらしい。

けれども、その前にやっていたニュースを見て、そこにいる全員が大声を上げた。

「えーっ!嘘ーっ!これって、これってさ…あの渡辺さん?渡辺さんじゃない?」

なんでも、この街で大きな交通事故が発生した模様。

ニュースによると、右折待ちの車に対向車が正面衝突したとのこと。

それで右折待ちの車の運転手が意識不明の重体で、ドクターヘリで病院に運ばれたそうで。

ぶつかってきた側の車の運転手と同乗者は軽傷とのことらしいが、どうもその男性運転手の呼気から基準値の約5倍のアルコールが検出されたと伝えている。

事故の詳細はこれからの様だけれど…

同乗者が渡辺まなみさん30歳って。

えーーーーーっ!う、嘘でしょーーーっ!なんで!

休憩室は、し〜んと静まり返った。

誰も何も言葉を発しない。

と言うか、なんて言ったらいいのかわからないのだ。

パニック状態のまま、休憩時間の終わりが近づいたので、とりあえず私はトイレに行った。

それから、どう仕事をしたのか思い出せない。

事故のニュースがショック過ぎて、けれども、体はちゃんと覚えているもので、きちんと普段通りにやり過ごせたらしい。

私だけじゃなく、高島さんや水島さん、原さん、赤瀬川君達も。

不思議だと感じた。

脳内はニュースの衝撃で激しいショックを受けているにも関わらず、店内ではいつもと同じ様に、いや、いつも以上テキパキと体が動いた。

仕事が終わると、みんなあんまり喋ることもできぬまま、それぞれ帰宅していった。

私もニュースのことをずっと考えながら帰ろうとすると、後ろから原さんに声をかけられた。

「今日、一緒に帰らない?赤瀬川君も一緒なんだけど…いい?」

誘われるまま、馴染みの原さんの車の助手席に乗せてもらった。

後部座席には赤瀬川君。

「あれ?赤瀬川君、今日は自転車じゃないの?」

「あ、ええ、まあ…今日はあの、バスで来たんで…」

へ〜え、そうなんだあ。

アパート前の道路はバス通りになっている。

駅前を出発したバスがぐるりと市内を回って、アパートの前も通って、再び駅前に戻る循環型。

内回りと外回りがあると便利なのだけれど、このバスはそういう気の利いたものじゃない。

けれども、坂の多いこの街では、そんなわがままを言えるはずもなく。

バスの運転手不足も深刻な様だから、便数は少し減ったけれども、走ってくれているだけ本当にありがたい。

私もたまに乗る。

毎日じゃないけど。

全然関係ないけれど…今日は買い物がなかった。

原さんはちゃんと聞いてくれたけれど、今日は特に何も。

純喫茶「純」の駐車場に到着すると、赤瀬川君は真っ先に灯りが見える1階のあゆみちゃんの部屋へ向かった。

「今日はさ、僕が奢るから」

原さんの優しいお誘いに、乗っかった。

きっと、渡辺さんの事故のニュースでショックを受けている私を気遣ってくれたんだと思った。

原さんだって、きっとショックでびっくりしたに違いないんだけど。

そう思いつつ、心の端っこでは赤瀬川君があゆみちゃんの部屋へ向かったことが、少しだけ気になった。

赤瀬川君、あゆみちゃんの怪我の様子を心配してるんだね。

わかってる。

ちゃんとわかってる。

だから、赤瀬川君に対する、ちょっとだけの「キュン」をもうやめようと思った。

何となく失恋した気分。

変なの。

変だけど…これでいいって思う。

最後まで読んで頂き、本当に本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。

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