第38話
お話の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。
あ〜、さとみに会いたいなあ…
沖縄へ移住すると決めたさとみは、どうにもこうにも相当忙しいらしく、何度かメールしてもなかなか返事が返って来ないところを見ると、こちらもちょっと自粛せねばとも思う。
赤瀬川牧場でお土産にいただいたバターやチーズは賞味期限が割と長いから、すぐに渡さなくても大丈夫なのだけど…
向こうに行く前、2人で送別会を開きたい気持ちでいっぱい。
でも、それも叶うかどうか…
牧場に行った後、赤瀬川君とは何も変わらずって訳でもなく、普通に今まで通り休憩時間など話すには話すけど…
赤瀬川君、あゆみちゃんのことばかり。
牛に囲まれてるのを助けたり、牛の糞を踏んだあゆみちゃんの長靴を洗ってあげてたり、手を切っちゃったのを手当てしたり、バーベキューやピザを食べやすい様にしてあげてたり、抱き上げてハンモックに乗せてあげてたり、戻ってからも、慌てて近所のドラッグストアで包帯だの買って来てたり。
あの日があゆみちゃんと初めて会った訳でもないのに、あの日がきっかけで彼女と随分仲良くなったようだ。
だから、どうしたって話なのだけど。
全然関係ないはずなのに、私の心がザワザワしちゃって。
私を好きって思ってくれてるのは赤瀬川君で、私は特に彼を好きとか思ってる訳じゃなくて、ただ、時々乙女みたいにキュンとしてしまうだけ。
それだけ。
きちんと「好き」とは言えない。
キュン以上、好き未満。
あ…それは、原さんに対しても、ヒデさんに対してもそうか。
その時その時の一瞬、ほんの短い時間だけキュンとするのを楽しんでいたんだ。
学生時代の様に、四六時中その人のことだけ考えてる、あんな熱い気持ちにはもうならないって決めつけていた気がする。
片想いや恋愛は疲れちゃうからとか、大人ぶって誤魔化してきた。
本当は傷つくのが怖いだけ。
こちらが真剣になればなるほど、深い痛手を負ってしまうのが苦しいだけ。
惨めな自分を想像すると、辛すぎて悲しすぎるから。
もう二度と立ち直れないぐらい、立ち直ったとしてもきっと随分時間がかかるだろうから。
だったら、しない。
ただ、素敵って感じる一瞬を楽しむので、いいじゃない。
これって、ある種、趣味みたいなものじゃないだろうか?
アイドルを好きになっちゃうファンの心理に、似てる様な気もする。
あ…違うか。
ファンは四六時中、ずっと応援して、好きでいるんだものね。
私の場合は、そうじゃない。
私の場合は、会ってる時だけだものね。
姿が見えるその時だけ、キュンとなるだけだものね。
私、自分のズルさも思い知った。
赤瀬川君がダメなら、原さんがいる。
だけど、そんな私のズルさを見透かす様に、ヒデさんが言ってた言葉が胸を刺す。
好きにスペアはいらない。
それって、一度に何人も好きな人がいるっておかしいって、意味なんだよね。
本当に好きだと感じる人は、1人じゃないと変ってことなんだよね。
子供の頃、さとみと「1番目に好きな人は…」なんてやってたっけ。
好きな人の順位をつけるって、今考えると何様のつもりだ!って言いたくなる。
それを今もやってしまっている自分。
あ〜、恥ずかしい。
脳内で密かにやってるからいいじゃない、ってことじゃない。
そういう風に思っているうちは、結局、誰とも上手くいかないんだろうなあ。
将来、「結婚」とかを考えた時、絶対1人の人を愛すって誓わないと…
…
この人だけって人、この人じゃなきゃ嫌だって思える人、私にも現れるんだろうか?
それとも、もう既に現れてるんだろうか?
あ〜、やっぱりさとみと直接会って話したい。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。




