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第36話

前回の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。

あゆみちゃんは何も悪くない。

赤瀬川君だって、そう。

悪いのは…私の心。

うっすらあゆみちゃんに赤瀬川君を盗られた様な気になって、勝手に少しイラついて、勝手に1人落ち込んで。

お昼の後片付けを手伝いながら、庭の端っこでハンモックに乗りたがっているなるちゃんを抱っこして乗せてあげている赤瀬川君と、隣のハンモックに必死に乗ろうとしているあゆみちゃんが目に入る。

「あ〜、待って!待って!あゆみちゃん、ちょっと待ってて!なるちゃんが先だから」

「あ、大丈夫!大丈夫!なんのこれしき!これぐらい私1人で乗っかれますって」

なんて言ってる先に、あゆみちゃん、ハンモックから落っこちそうになって…

それをなるちゃんを無事にハンモックに乗っけてあげた赤瀬川君が、すかさずキャッチ。

「わっ!」

あゆみちゃんをキャッチしたと同時に、赤瀬川君は派手に尻餅をついた。

「いててて」

「あっ!ご、ごめんなさい…すぐ、すぐに退けますから…っつつつつつつ」

「大丈夫?あゆみちゃん…そっちの手使えないんだから…無理しちゃダメだって…」

「ははは…ごめんなさ〜い」

絵になる2人。

怪我をしたあゆみちゃんを、ずっと優しくフォローして。

赤瀬川君…優しいな…

「やあ、ありがとうねえ、すっかり綺麗に片づいちゃって…少し休んで〜」

おじさんとおばさんはそう言うと、母屋の中に戻って行った。

気がつけば、ヒデさんは再び牧場の柵のところでスケッチをしている。

赤瀬川君に抱きかかえられ、あゆみちゃんもやっとハンモックへ。

なるちゃんとあゆみちゃんのハンモックの間で、赤瀬川君が2人のハンモックを静かに揺らしている。

そんな光景がちょっぴり羨ましかった。

大きなパラソルの下で、おばさん特製の冷たいトマトジュースを啜る。

あ〜、美味しい。

あんなにお肉やら、野菜やら、ピザやらおにぎりを食べたのに…まだ、ちゃんと美味しいとわかる。

腰掛けたまま、ふわ〜っと空に向かって大きく伸びをすると、膝の上にぴょんと猫が乗っかって来た。

にゃあにゃあ何か喋った後、私の膝の上で丸くなった。

機嫌を損ねない様、静か〜にそうっと背中を撫でると、一瞬、全身の毛がふるふるっと動いた。

あ〜、びっくりした。

ほんのり温かい猫の体温を感じると、いつの間にかうとうと。

どれぐらい眠っていたのだろう?

首がガクンとなって、体がビクンと動いた途端、膝の上の猫がびっくりして降りて行っちゃった。

「疲れちゃった?」

傍でヒデさんがトマトジュースを飲んでいる。

「ああ、やだっ…私、寝ちゃってたみたいで…」

「ううん、あっちも寝てるみたいだよ」

ヒデさんの指さす方に、ハンモックのなるちゃんとあゆみちゃん、そして、その間でこっくりこっくり船を漕いでる赤瀬川君。

「あ」

「んふふ、あんまり可愛いから、描いちゃった…へへへ」

開いてあるヒデさんのスケッチブックに、なるちゃん達が寝ているこの光景。

確かに。

ヒデさんが言う様に、木陰のハンモックの3人はなんとも愛らしく見える。

「赤瀬川君…親切ってのか、面倒見いいよねえ…感心しちゃったよ…あゆみちゃんの怪我…赤瀬川君のせいじゃないけど…なんとなく責任感じちゃってんのかもね…あんな硬いカボチャ、あゆみちゃんに任せないで、自分が切ってればって…思ったのかもしれないねえ…」

ヒデさんの言う通りな気がする。

「あゆみちゃんの怪我、早く治るといいですねえ」

私にはそんなことしか言えなかった。

ヒデさんと2人でハンモックの3人を見つめながら、どこか原さんのことを思い出していた。

やっぱり私、勝手だ。

赤瀬川君に傾いていた気持ちが、原さんの方に傾きかけている。

そして、赤瀬川君があゆみちゃんに盗られちゃっても、原さんがいるからいいんだもん。

なんて、心の奥で呟いている。

どっちかがダメなら、もう片方。

赤瀬川君も原さんも、私のこと好きなんだからって…

そんな風に思っているところがある自分。

更にどちらもダメな場合は、ヒデさんがいる…とか。

自分の中に巣食う、ズルくて汚くて悪い気持ち。

それを見透かしたかの様に、ヒデさんがポツリと言った。

「好きにスペアはいらない」

「え?」

「ん〜、なんかさ、そう思って…あ!なるちゃんのとこに猫!」

さっきまで私の膝で丸くなっていた猫が、今度はなるちゃんのハンモックで一緒に眠っている。

好きにスペアはいらない。

スペア…

私…私…

最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。

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