第33話
前回の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。
明日は牧場。
だもんで、赤瀬川君からの指示通りに、汚れても大丈夫な格好で、長靴はないからレインシューズを履いていこうなどと、あれこれ考えると心もウキウキしちゃって、そうなると自然と顔も綻んでしまう。
「あ〜!おはよう!ゆりちゃん、今日はなんだかご機嫌だねえ!」なんて、高島さんや水島さんに声をかけられた。
「そ、そう?ですかあ?」
自分は全く自覚がない。
けれども、他人の目には私が機嫌がいい様に見えるらしい。
まあ、いいさ。
さて、今日も一日頑張ろう!
張り切って店内業務にあたる早々、渡辺さんが原さんに絡んでいるのが目に入って来た。
「昨日は楽しかったあ〜、原さんったら…も〜う…昨日は凄かったあ〜…原さん、もうすんごく強いんだもの〜…まなみ、ドキドキしちゃったわあ…うふふ…次はいつご一緒できるかしら?」
え?え?え?え?何?どういう感じ?
原さんと渡辺さん…昨日…もしかして…もしかしたの?
私には渡辺さんの放ったセリフが、どうにもいやらしい関係のことの様に聞こえた。
まさか!
そ、そんなあ…
「ちょ、ちょっと、やめて下さいよ!渡辺さん…ちょっと、もう、やめて下さいって…」
丁度そこに店長が…
「コホンコホン…え〜と、君達、今は仕事中!私語は厳禁ですよ!」
「あ、はい、すみませんでした」
原さん、叱られちゃった。
それにつけても、渡辺さんの発言、一体なんなんだろう?
気になる…でも、今は仕事!仕事!
…
早番は原さんも一緒だった。
「は〜、今日も疲れた〜!じゃあ、あのお先に失礼しま〜す!」
外に出ると綺麗な夕焼け。
昼間と夜の丁度境目だから、オレンジ色から紫色に渡るコントラストが美しく広がっている。
さてと、帰りますか!
明日は牧場!明日は牧場!
小さく口ずさんで歩き始めると、後ろから呼び止められた。
「ゆりさ〜ん!ちょっと待って〜!」
「ん?」
振り向くと、向こうで原さんが手を振って私を呼んでいた。
…
「あの、いいんですか?」
「いいに決まってるでしょ〜!さ、出発!」
原さんの車の、今回は助手席に乗せてもらうと、車はスーッと駐車場を出た。
後ろで渡辺さんが手を上げて何か叫んでいるみたい。
「あの〜、どうしたんですか?」
「ああ、ごめんね、いきなり誘っちゃって…渡辺さんがさ…ちょっと…しつこくて…それで…」
撒いた。
なるほど。
「どうしても、ゆりさんに、きちんと説明したかったんだけど、職場じゃちょっとできなかったから」
「はあ…」
「朝、渡辺さんがなんか変なこと言ってたでしょ?あれをさ、ゆりさんに誤解されたくなかったんだよね…」
え!そうだったんだ。
私に誤解されたくないって…そんな、別にいいのに…
そう言う間もなく、原さんは話を続けた。
「昨日さ、休みだったから、前々から約束してた大学時代のラグビー部の連中との飲み会があってさ、それで駅前の居酒屋で飲んでたら、たまたま渡辺さんとその友達の人が後からそこに来たんだよね…それでチラッと挨拶だけって思ってたら、友達が折角だから一緒に飲もうって、誘えって強引でさ、それでしょうがないから一緒に酒飲んで、飯食って…そこで解散って思ったんだけど、なんか知らないけど2軒目行こう!ってなっちゃって…そんで、友達は盛り上がってたけど、僕は次の日仕事だし、もう帰ろうってなったら、なんか知らないけど、酒で勝負して勝ったら帰ってもいいってことになっちゃって…そんで、仕方がないからさ、テキーラ3杯飲んで…そしたら、渡辺さんの友達と僕の友達に勝っちゃって…まあ、そのおかげですぐタクシーで帰れたんだけどね…そのことをさ、渡辺さん、聞いた人がみんな勘違いしちゃう様な言い方するもんだからさ…ヤダよねえ、ああいうの…僕と渡辺さんが何か関係でも持ったかの様なさ、あんな言い方しなくても…僕は苦手だなあ、ああいう人って…渡辺さん、まだ新人だから、仕事場では丁寧に接しなくちゃならないから、仕方なくやってるけど…でもさ…」
そうだったんだあ。
何もわざわざ私にそんな丁寧に説明しなくてもいいのに…
「…なんかさ、ゆりさんには妙な誤解をされたくなかったんだよね…どうしても…」
私にはどうしても誤解されたくない。
原さんの誠実さに、キュンとなった。
「私、ゆう…さんのこと…一度も誤解なんてしてませんよ!だって、ゆう…さんは、ちゃんとした人だってわかってるから」
「えへへ、あ、ありがとう…」
私も原さんもお互い照れてしまった。
「あ、そうだ!明日…赤瀬川君と牧場に行くんでしょ」
「ええ…」
「楽しい1日になるといいね」
「…はい」
原さん、優しい。
優しすぎて…
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。




