表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/96

第25話

前回の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。

赤瀬川君と2人、何も喋らず、ただひたすら坂を上った。

どれぐらいの時間が経ったんだろう。

ぎこちない静寂を打ち破ったのは、赤瀬川君だった。

「あ、あのっ…そだ、あのっ…おでこ…」

「おでこ?」

「ほら、金曜日におでこゴツンって、テーブルにぶつけて…それで…その…」

「あ〜…おでこね、おでこ…うん…触るとまだちょっと痛いけど…でも…大丈夫だよ…ありがと…気にかけてくれて…」

「…いいえ…」

静かにそう言うと、赤瀬川君は自転車を支える手じゃない側の手で、私のおでこをそっと撫でた。

「ひゃっ!」

「あ!ご、ごめんなさい!いきなり触って…痛かったですか?」

「いや、あの、そうじゃなくって…」

そうじゃないの。

そうじゃなくって。

男の人におでこ触られたのって、随分、久しぶりだったから。

だから、ただ…びっくりしちゃっただけ…

「いたいの、いたいの、遠くの遠くの山の向こうの、深〜い海の底に飛んでいけ〜!」

赤瀬川君の独特の「いたいのいたいの」が、あまりにもファンタジーで、私はただ黙って聞きながら、徐々に顔がにやけていくのを感じた。

そして、この時間がいつまでも続けばいいなあと思ってしまった。

再び静寂が戻った頃、ようやく我がアパートと純喫茶「純」が見えた。

いつもと同じ風景。

…じゃない!

「あれっ?灯りがついてる!」

見ると、北山口さんが出てから空室になっていたあの部屋から、灯りが漏れている。

へ?

今の今までぎこちなかった赤瀬川君と共に、とりあえず純喫茶「純」の中へ。

「いらっしゃい!あら、ゆりちゃん、おかえり!え〜と、そちらは、確か、昨日の…」

大家の純子さんの問いかけに、赤瀬川君は「はい、昨日の赤瀬川です!」と元気よく応えていた。

「純」の店内に、今日お休みだった原さんが大盛りナポリタンを頬張っている姿と、ヒデさんがクリームソーダをちゅ〜っと吸っている最中。

「あ!そだ!純子さん、純平さん、あの、北山口さんがいた部屋に、あの、電気ついてたんですけど…」

つい今しがた見たばかりの光景を思い出し、早速、2人に尋ねてみた。

「ああ、あのね、今日ね、あのお部屋に新しい方がね、越していらしたの」

純子さんがそう言うとすぐ、私は原さんの方をチラッと見た。

「へ?あの…もしかして…原さん?ですか?」

「いや、違うんだよねえ」

私の質問に素早く返してくれたのは、残念そうな顔の原さんだった。

「え?あ!そ、そうなんですか?」

少しだけ戸惑ってしまったのと同時に、何故かホッとしたのはどうしてなんだろう?

そうしていると、赤瀬川君がおもむろに「ゆりさんもオムライスセットでいいですか?」と聞いてきた。

聞かれるまま「ええ、はい」と答えるも、私の心はここにあらず状態だった。

え?原さんじゃないなら、一体どんな人なんだろう?

頭の中がぐるぐる。

どうしても新しい住人が気になって仕方がない。

気になっていると言えば、まだナポリタンを食べている原さんも、私と赤瀬川君の仲が気になっている様子。

「ねえ、赤瀬川君、広瀬川さんのこと、ゆりさんって呼んでたけど…」

そこにすかさず

「ああ、僕も昨日からゆりさんって、呼ばせてもらってました」とヒデさん。

「ん?なんか、変ですか?」

キョトンとしたままの赤瀬川君に対し、原さんは「いや…べ…別に…変…とか…そういうんじゃさ…ないけどさ…」と、やや不満気味。

「ん〜…じゃあ、原さんも、広瀬川さんのこと、ゆりさんって呼ばせてもらえば、ねえ」

ヒデさんの軽い提案に「そうですよ!そうしたらいいじゃないですかあ?」と赤瀬川君。

「えーっ!えーっ!でもさ…今更…ゆりさんって呼ぶのも…」

男性3人、何かごちゃごちゃ話している。

けれども!

今はそんなこと、正直どうでもいい!

今、大事なのは、新しいアパートの住人のことのみ!

私の関心はそれだけ!

最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ