第24話
前回の続きです。バザーの次の日の日曜日、今日は朝から仕事です。
「教会のバザーは、みんなの優しさで成り立ってるんだねえ…」
昨日、ヒデさんが何気なく呟いた台詞が、妙に心に刺さったまんま。
そして、そんな余韻が残ったまま、今日はお仕事。
水島さんは今日もお休みをとってるようだ。
お昼休み、休憩室で赤瀬川君と一緒にご飯となった。
それがどういう訳か自然すぎる流れで…
だからなんだ?
文句でもあるのか?と言われれば、別に何もないのだけれど…
ただ、そういう自然な形がなんとなく、くすぐったい様な、にやけてしまう様な、口では説明できない気持ち。
嬉しいか、嬉しくないかで分けるなら、まあ、嬉しい方だ。
えへへ。
「…へ〜え、じゃあ、赤瀬川君はお休みの日は大体、牧場のお手伝いに行ってるんだあ…そっかあ…」
「ええ、まあ、そんな感じです、かね…絶対ではないんですけど…でも、まあ、行ける時はなるべくって感じで…おじさんとこ、子供がいないから…」
「…そっかあ…大変だよねえ…きっと…」
「住み込みのヘルパーの人が何人かいるので…やってけるみたいですけど…」
「ん?どしたの?」
「…ん〜…いや…実は…後継にならないかって…誘われてて…」
「へ〜!すごいじゃない!」
まだ口の中に、昨日のバザーで買った残りの炊き込みご飯のおにぎりが入ったまま、大きな声を出してしまった。
同じく昨日のバザーで買った残りの100円バーガーを頬張りながら、赤瀬川君は話を続けた。
「…ん〜、でも…僕は…っごほっ!ぐふっ!」
「だ、大丈夫?」
食べながら喋ったので、どこか変なところに入ったらしい。
すぐさま立ち上がって、向かいに腰掛けてる赤瀬川君の背中をさすった。
赤瀬川君、飲みかけのオレンジソーダを口に含むと、再び咽せて涙目になっていた。
このタイミングで炭酸もの飲むから…
この手の小さい災難って、案外続けざまにやってくる。
どうしてなんだろう?
背中をさすりながら、頭の中でそんなことを考えてしまった。
赤瀬川君、最初からおじさんの牧場を継ぐつもりで、獣医学部を卒業した訳じゃ…って…
「え?え?赤瀬川君、獣医学部卒業したって言ってたけど…え?じゃあ、赤瀬川君、今、いくつ?獣医学部って確か6年だよねえ…現役で合格したとして、24歳で卒業だから…」
「ええ、はい、僕、今、25ですけど…」
「え?あれ?23歳じゃなかった?」
「いいえ…ってか、なんで23歳って…」
そこでハッと思い出した。
店長…
確か店長が言ってたんだ…
「え?ほんとですか?ん?なんでだ?」
もうすっかり咽せ終わった赤瀬川君と、腕組みをして長考。
…
「あ!もしかして…これのせい?ですかねえ…」
そう言うと、赤瀬川君は、お店のパートとバイト全員がつけている赤いエプロンのポケットから、ペンと小さなメモ帳を取り出し、真っ白い部分にさらさらっと数字を書いた。
「25」と書いたらしい。
履歴書にも同じ風に書いた模様。
が、しかし、赤瀬川君の独特の強いクセのせいで、「5」が「3」に見えてしまうマジック。
「え〜〜〜〜っ!」
驚きと同時に、「これだ!」と悟った。
「あはははははははははは、や〜だ、も〜う!」
勘違いをしていた理由がわかると、2人共どっと疲れた。
同じ早番だった赤瀬川君、いきなり「一緒に帰る」と言い出した。
「え?なんで?家、違う方向じゃない?」
一瞬、もしかして私のこと、好きだから?とか?なんて、ドキドキした。
けれども、理由は簡単。
今日、休みだった原さんと同じく、純喫茶「純」に惚れちゃったとのこと。
「な、な〜んだあ、てっきり私狙いかと勘違いしちゃったあ、あはは、バカだよねえ」
一緒に坂を上りながら押していた自転車と共に立ち止まると、赤瀬川君は急に真顔で「…勘、違いじゃ…ないですよ…」と呟いた。
「え…嘘…」
「嘘じゃないです…僕…最初会った時から…ゆりさんのこと…いいなあって…思ってましたから…」
え?え?え?え?嘘?嘘でしょ?
そんで、今、普通に私のこと「ゆりさん」って…
ゆりさんって…
再び2人並んで坂を上り始めるも、急に恥ずかしくて。
赤瀬川君の方を見れなかった。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。




