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第18話

前回の続きです。いよいよバザー当日。私と前田さんとなるちゃんの3人で出発しました。

土曜日。

テレビの天気予報では雨は降らないと言っていたけれど、窓から入り込む明るさがなんだか弱い。

くしゅくしゅと歯を磨きながら、リビングの大きな窓から外を眺める。

どうしよう。

傘、持ってった方がいいかなあ。

迷って迷って、結局のところ、さとみとシャインマスカットパフェを食べた時に買った、軽くて小さめの折り畳み傘を肩掛けバッグに詰めた。

「これでよし!」

そうしている間に、待ち合わせ時間。

どうして朝って、こんなにも時間が経つのが早いんだろう。

まさか…朝と呼ばれる時間帯だけ、時間が早く進んでるんだろうか?

そんな訳…

脳内でくだらないことを考えながら、玄関の戸を開けると、下に見えるアパートの駐車場にもうなるちゃん親子と前田さんの姿があった。

慌てて階段を下りながら、「あ、あれっ?お、おはようございま〜す!すいません!なんか、遅くなっちゃいました〜?」と言うのとほぼ同時に、なるちゃんが「ゆりちゃ〜ん!おはよ〜!今日はよろしくなの〜!」と可愛い笑顔で返してくれ、前田さんとなるちゃんママのミズエさんは、「おはよ〜!全然!全然!」と。

「ゆりちゃん、ヒデさん、なんかごめんね〜、歯医者、お昼前には終わるはずだから…そしたら真っ直ぐそっちに行くから…」

心なしかミズエさんの表情が暗い。

そうだよね、そうですよね。

歯医者って、毎回外科手術みたいなもんですものね。

そりゃあ、気が滅入っても仕方がないですよね。

誰も好き好んで行く場所じゃないですものね。

まあ、歯医者さんに限らず、病院って大概進んで行きたい場所じゃないですものね。

わかります、ミズエさん。

わかりますとも。

心でそう言いながら、首を上下にコクンコクン。

「じゃあ、先にいってきま〜す!」

眉をひそめ泣き出しそうな顔のミズエさんに見送られ、笑顔で歩き出した。

さっき渡したばかりの動物の顔巾着を肩から下げて、なるちゃんは上機嫌。

「あのね!あのね!なるね!お小遣い持って来たの!」

「へえ〜、良かったねえ、なるちゃん」

「あのね、あのね」

一旦立ち止まると、なるちゃん、ゴソゴソと巾着を手で探り、可愛いキャンディ柄の小さながまぐちを取り出すと、その中からピカピカの500円玉を取り出して、私達に見せてくれた。

「えへへ」

「わ〜、いいねえ〜!」

「ホントだ!なるちゃん、なんか良いもの沢山買えるといいね。」

「うん!えへへ」

さっき、ミズエさんから頼まれた通り、なるちゃんが買い物する時は必ず、私か前田さんが見てることになっている。

まだ、お金の使い方、お金の計算を知らないなるちゃん。

だから、なるちゃんが自分で何か買おうとする時、大人である私たちが慎重に助言したり、パーッとなってお金を使いすぎない様、気を配らなければいけない。

だって、大事な大事なお小遣いだものね。

聞くと、なるちゃんにとって「初めて」のお小遣いらしい。

だったら、余計、なるちゃんが本当に欲しいって思ったものが、ちゃんと買える様に。

パーッとなって、後で後悔しちゃう様な買い物をしないように。

嬉しくて舞い上がっているなるちゃん。

「大丈夫かなあ?」

小声でぼそっと呟くと、「大丈夫だよ、きっと」と前田さん。

「ですよね」

笑顔で一つコクンと頷いた前田さんと一緒に、手を繋いでいる真ん中のなるちゃんを「そ〜れ!」って言いながら、高くふんわり持ち上げた。

きゃっきゃと喜ぶなるちゃん。

何度かやりながら、3人でゆっくり坂を下りて行った。

空はどんより薄曇り。

まるで歯医者に向かうミズエさんの心の様だった。

最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続き、どうぞよろしくお願い致します。

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