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わらしべ亡者

むかしあるところに、たいそう貧乏で信心深い若者が住んでおりました。


ある日、お寺へお参りをして、

「お金も食べる物もありません、どうか助けて下さい。」

そう言って念仏を唱えていると、いつしかうとうと眠っていた。


夢の中で観音様が、

「寺を出て最初に手にした物がそなたへの贈り物です、決して手放してはなりませんよ。」

若者は、もっと話を聞きたかったが、スッと目覚めてしまった。


寺を出た若者は、何かにつまずいて転んでしまった。

転んだ拍子に手にわらしべを掴んでいた。

「観音様の御加護がわらしべかぁ。」

期待はずれの贈り物に少しがっかりして、道端に座り込んだ。


すると、アブが飛んできて若者の膝に止まった。

アブを捕まえると、わらしべの端に括り付け、ブンブンと飛ばして遊んでいた。


「父ちゃん、アレ何?僕も欲しい!」

通り掛かった男の子が、アブを付けたわらしべを欲しがった。

父親は、若者に

「それはどこで手に入りますか?」

「たまたま、さっき作ったので、どこかで売ってる物じゃありません。」

「では、譲って頂けますか?」

「こんな物で良かったら差し上げますよ。」

アブ付きのわらしべを男の子に差し出すと、

「ありがとうございます、御礼にこちらをどうぞ。」

大きな蜜柑を四つ貰った。


早速一つ食べていると、煌びやかな牛車が通った。

「姫様達が暑さでぐったりしておられる、近くに水場はないか?」

「そんなに大変でしたらこれをどうぞ。」

若者は蜜柑を差し出した。


牛車には三人の姫様が乗っていて、蜜柑を食べてすっかり元気になった。

「ご馳走さま、御礼にこちらをどうぞ。」

見た事もない美しい反物を貰った。


反物では腹は膨らまない。

少しがっかりしていると、馬に乗った侍が通り過ぎ、直ぐに引き返してきた。

「その反物、某に譲って貰えないだろうか?」

「ええ、良いですよ。」

食べられない物に未練は無かった。

「では、御礼にこの馬を進ぜよう。」

若者は立派な馬を貰った。


馬に乗って仕事を探しに街に向かった。

途中、大きな荘家様のお屋敷の前を通った。

「旅の御方、お待ち下さい。」

若者が止まると、

「どうしても直ぐに東国に行かなければなりません、その馬を譲って頂けませんでしょうか?」

若者が快く譲ると、

「御礼に荘園を差し上げます。」

家に蔵、田畑や山等々、莫大な財産が若者の物になった。


若者は、良く働いて、幸せに暮らしていたが、

「おい、お前は誰だ?叔父上はどこに行った?」

前の荘家の甥らしい。

「急いで東国に行くと言って、オラが乗っていた馬に乗って行ってしまいました。」

「どうしてお前が、ここに住んでいるんだ?」

「はい、馬の御礼に荘園を頂きました。」

「そんな、無茶な交換があり得る筈が無いだろう!」

前の荘家の甥は、若者を奉行所に突き出した。


「そんな話、誰も信じないだろう?もう少しマシな嘘を考えなさい。」

お奉行様は、甥の申し出を信じ、荘園を乗っ取った極悪人として若者を打ち首の刑に処した。


若者は、三途の川を渡る列に並んでいた。

「わらしべをお持ちの方いらっしゃいませんか?」

列を縫って探している鬼の娘に、

「わらしべって、何か特別な事あるんですか?」

「はい、観音様の御加護で無条件で極楽浄土に行けるんです。」

「あの、実は・・・」

若者は、お参りからの話をすると、

「観音様は、『決して手放してはなりませんよ。』とおっしゃったのですよね?」

と言い捨て、地獄行きの列に案内した。

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