ねずみの嫁入り?
あるところに、大変裕福なねずみの家族が住んでおりました。
お年頃の娘はとても美しく、街中のねずみ達から求婚されていました。
「父様、私、世界一強い殿方のお嫁さんになりたいわ!」
ねずみの父は考えた。考え込んで、ふと空を見上げた。
「おひさまが一番強かろう!」
街で一番高い塔に登って、おひさまに呼びかけた。
「おひさま、おひさま!世界一強いおひさまに、私の娘を嫁にもらって欲しいのです!」
「いえいえ、僕は強くなんかありません。雲さんがいると隠されてしまいます。」
広い野原に行って、雲さんに呼びかけた。
「雲さん、雲さん!世界一強い雲さんに、私の娘を嫁にもらって欲しいのです!」
「いえいえ、僕は強くなんかありません。風くんがいると吹き飛ばされてしまいます。」
岬に行って、風くんに呼びかけた。
「風くん、風くん!世界一強い風くんに、私の娘を嫁にもらって欲しいのです!」
「いえいえ、僕は強くなんかありません。かべ殿がいると押し戻されてしまいます。」
街に帰って、かべ殿に呼びかけた。
「かべ殿、かべ殿!世界一強いかべ殿に、私の娘を嫁にもらって欲しいのです!」
「いえいえ、僕は強くなんかありません。ねずみさんがいると、かじられて穴があいてしまいます。」
ちょうど、かべ殿の穴から出て来た若いねずみに、
「世界一強い婿殿を探していてな、ねずみが一番のようだ。私の娘を嫁にもらってくれないか?」
「いえいえ、世界一強いのは猫さんでしょ?わざわざ探さなくても間違いありません。」
大きな公園で、猫さんに呼びかけた。
「猫さん、猫さん!世界一強い猫さんに、私の娘を嫁にもらって欲しいのです!」
「はいはい、わかりました。早速、結婚式を挙げましょう。」
ねずみの父は、一族を集めて、
「娘の嫁入りが決まったぞ、直ぐに花嫁行列の準備だ!」
翌日、白無垢の娘は、輿に乗って猫さんの屋敷へ。ねずみの一族は喜んで行列に参加していた。
「ようこそ、ねずみさん、ささ、中へどうぞ!」
ねずみの一族が屋敷に入りきると、ガシャリと扉が閉ざされた。
「いただきます!」
「ギャー!」
猫達の嬉しそうな声と、ねずみ達の悲鳴が、遠くまで響き渡った。