〜真相〜
元来た道を全速力で走り抜け、津堂が息を切らしながら戻って来ると、教室の中は異様な空気に包まれていた。
「きゃーすごいすごいっ!!初めて見ちゃった!!」
「ひっぐ・・・うぅ~、甘実ぃ・・・っ」
教室の真ん中で、目を爛々とさせてハイテンションではしゃぐ夢宮と、その目の前で溢れる涙をハンカチで拭いながら泣きじゃくる西内。他の生徒達は目を見開いて驚いたり、中にはひどく狼狽えている者もいてみんな反応はバラバラだが、何かよからぬ事が起きたのは確かだ。
「何?また夢宮?」
「!蒔苗・・・」
津堂より一足遅れて教室に入って来た蒔苗が、怪訝な顔で津堂に尋ねる。とはいえ津堂も状況を把握出来ておらず、夢宮の見張りをしていた篠山に話を聞こうと近付く。
「篠山、何があったんだ?」
「善哉さんが突然消えたの。それで善哉さんと一緒にご飯を食べてた西内さんがパニックになってね。見ての通り、夢宮さんは神隠しだって大喜びよ」
「やっぱりそうか・・・」
悪い予感が的中して、津堂の顔が暗くなる。洞察力が鋭い篠山はそれを見逃さず、何となく事情を察したようだ。
「ねぇ、もしかして鈴木君も?」
「!・・・俺の目の前で消えた」
「そう・・・。じゃあキーホルダーの事は聞けなかったのね?」
「うん、ごめん。・・・ん?いや、でもーーー」
「?でも?」
記憶の断片を手繰り寄せて、津堂は鈴木の最後の言葉を思い出す。
「ーーーそうだ。消える直前に"た"って言ってた」
「"た"?」
「うん。僕達"た"って」
「た、た・・・ーーー」
鈴木が残したヒントを元に、津堂と篠山はそれぞれ推理する。きっと鈴木は「た」で始まる何かが善哉と同じだと言おうとした。恋人じゃない2人が同じキーホルダーを付けるとしたら、その意図は何かの記念。
「た」から始まる、おそろいの記念日といえばーーー。
「「誕生日」」
「そう。ようやく辿り着いたね」
「「!?」」
津堂と篠山の声がそろった時、背後から声がした。2人が振り向くとそこにいたのは、昨日から姿を見ていない氷上だった。