半メカ化少女はもっと知る
お母さんはまだ泣いている。私の頭の中にはぐるぐると疑問が渦巻いている。しかし、お母さんは鼻声ながら、私に向かって、懇願するように、でも、はっきりと言った。
「のぞみには、あるモノを壊して欲しかった。でも、そのために、私は、のぞみのことを…そのせいで…」
のぞみをロボにするかもしれなかった。お母さんは何度も顔をぐしゃぐしゃにして謝りながら、私の左腕を撫でていた。私には触れられている感覚はないのに、私の左手を握っている。
「…私をメカ化させたのはお母さんだったの?」
「そうなの…私が頼んだの…ごめん、本当に」
「なんで、それも、半分だけ」
「もしっほとんど機械にしたら、のぞみがのぞみじゃなくなるかもしれないって。でも、それなら最初からこんなこと、しなければ」
「もう、いいよ。なってるのは、仕方ない」
もういいと言ったのは、仕方ないからだ。言葉通り。それに、お母さんはこんなに私の事で後悔してる。お母さんは、泣いてるのに目が赤くなっていないのに。私もいつのまにか泣いていたらしい。お母さんの目に映る私は、目を真っ赤に腫らしている。お母さんは私をほとんどメカにせずに、人の部分を残してくれたのだ。これだけでも、私はありがとうと言いたい。
「ねぇ、私、壊して欲しいもの、壊すよ。どうしてもなんだったら」
お母さんは大きく目を見開く。私だって、私が半分メカ化した意味を持ちたい。
「…いいの、本当に?」
「うん」
「…じゃあ、裏の研究所の、管理室にある機械、壊して欲しいの」
「わかった」
「お願い、人がみんなメカになる前に」
お母さんはそう言って、涙を拭いた。外はもう真っ暗だった。私は、明日から行動を開始するべく、部屋に戻り、速やかに眠りについた。
次の日、いつもとは違う緊張感を持って学校に向かう。深刻そうな表情をして歩いてる自覚はあった。もちろん、そこを聞いてくる者はいるわけでー
「のぞみ〜、何くらい顔して歩いてんの」
「めりか」
「いやいや、驚いたよ。何せクラスの子から聞いたんだけど、シイとケンカしたんだって?やばいなぁ」
「あー…」
そういえばめりかはこの一連の出来事を詳しく知らない。そして、何かを壊す事までは言わなかったが、ほとんどの人がメカ化している事までは伝えた。案の定、めりかはものすごい衝撃を受けたようで、数秒間固まっていた。
「ひえ…ってことはっ!私たち、そんなおおごとじゃなかったって事!?」
「うああ〜」
「なんであーとうーしか言ってくれないんだーっ」
「くっ詳しいことはシイに…」
めりかはいつのまにかシイと和解?している私に驚いていたが、雨降って地固まるだな、と勝手に納得していた。シイの元には、めりかが押しかけるであろう。ただし、私はお母さんの頼みに友達を巻き込む気はない。一人でやり切るつもりだ。
こうして、私は新たな使命感を持って日常生活に挑むことになったのである。