半メカ化少女は隠したい
チャイムが鳴ってすぐ、めりかのいる一年二組に直行した。
「めりかーっ」
扉を開けた私に視線が集まったが、そんな事はお構いなしに、めりかを連れて人が少ないところに移動した。
「ねぇ、私の名前叫びながらドア開けないで」
「それはごめん、でもさ、命の危機が迫ってるかもなんだよ、本当に助けてっ」
最初は不満そうな顔をしていためりかだが、私が必死に懇願すると、話を聞いてくれた。
「実はかくかくしかじかでバレて…」
「なるほどね、それで、えーと誰だっけ、」
「シイって人」
「あぁそうシイって人にメカ化がバレてやばいってことであってる?」
「合ってるよ、それでごまかせる方法が欲しいんだ」
自分で考えろよと指摘された。悔しいけどごもっともだ。でも思いつかなかったんだよ。仕方ないだろ。まぁそのことはおいといて、何か上手いこと行きそうな作戦を待つ。
数分経った頃、めりかが作戦を耳打ちしてきた。
「昼休憩の時、みんな昼ごはん食べにくるからシイとも食堂で会うと思う、そしたら腕まくりして」
「ええっ余計やばくない?メカなの確定するじゃん」
「そこはね…」
「なるほど、いいね」
私はめりかの作戦に乗る事にした。不安は残るが、できる限りの事はするつもりだ。まずは演劇部の倉庫に行かないと。
こうして2限の休憩時間、3限の休憩時間にも準備を進め、昼休憩になった。混み合っている食堂の中、シイは意外に簡単に見つかった。私は栄養ゼリーを飲みながら近くの席に着き、目玉焼き乗せハンバーグを頬張るシイの様子をじっと伺った。
「ねぇ貴方、一限の後の事をまだ引きずっているのかしら、ジロジロ見てくるのはやめなさいよ」
来た。話しかけてきた。でもこっちからメカ化の話題を持ち出すのは怪しいから向こうの反応を探ろう。
「そっちこそ、気づいてたくせにわたしの事を見てただけだったよ?」
「食事中のおしゃべりはよくないでしょう?私は学校を休んでまで機械部分が見えた事を隠すような貴方とは違うのよ」
メカ化の話題。このあたりのタイミングかな。
「私はメカ化なんてしてないよ、証拠を見せてあげようか?」
「へぇ、あるんなら見せてみなさいよ」
私は腕まくりをしたので、メカ化した部分も見えた…のではなく、人の腕が現れた。シイは一瞬だけ目を見開いたが、すぐにもとの調子に戻り、疑いの眼差しで私を見た。
「ふん、でも貴方が機械化してるって事は変わらないから」
そう言ってシイは食器をさっさと戻しに行った。私は上手く行ったと安心していたが、ドアを出ていく時にささやかれた言葉に凍りつく。
「騙そうとしても無駄だから」
という言葉。シイが口を動かした時、小さなカチチ…という音がした。この音って、もしかして。