半メカ化少女は学校へ行く
「のぞみ、本当に大丈夫なの?」
「お母さん、大丈夫だよ。ジャージでメカ部分は隠してる」
親友にもメカ化現象が起きていることが発覚し、二人で隠しながら生活を送る事になった。今は玄関から出発するところだ。長袖長ズボンは少し暑いが仕方ない。
「行ってきまーす」
玄関から出ると、暖かい春風が吹いてきた。残念な事に花粉付きだ。
「ハックションっ、うぅ、何故家族の中で私だけ…」
ティッシュを箱ごと持ってきて良かった。しかしそれも学校に着く頃には尽きているであろう。予想は当たり、教室についてからティッシュは一箱空にになった。
「おはよゔ…」
「おはよう〜、毎年あんただけ鼻やばいよね」
「仕方ない゛」
さっそく前の席の奴に指摘されたし。これ結構辛いんだからな。しっかし、誰にもメカ化のことは指摘されないな。上手くごまかせてるかも。めりかのアイデア、単純だけど上手く行ってる。心の中でガッツポーズをしていたその時、ツヤツヤの茶髪をなびかせて、私の前に仁王立ちした奴がいた。花粉症について話していた奴はそいつを見ると嫌そうに目を逸らし、廊下の方にそそくさと逃げて行った。茶髪の奴は逃げた奴の椅子に座り、目を細めてこう言った。
「貴方、昨日学校を休んでいたわよね、下校の時に車の窓から見ていたのだけど、半分機械になっているところを私は見たの。」
最悪だ。よりにもよってこいつにバレるなんて。学校一の嫌味な奴なのに。私は反射的に警戒した表情を顔に表した。
「あら、貴方が貧乏人だってことを私が周りに言いふらすと考えたのかしら」
「貧乏人?」
私は貧乏ではない。そりゃお嬢様に比べたら貧乏だが、わざわざ強調して言われるほどではないはずだ。
「貧乏じゃないなら何故、半分機械になっていたのかしら」
「貧乏とメカ化は関係ないでしょ、つーか私はメカじゃないよ。見間違えでもしたんじゃない?」
こいつに半メカ化している事を確信されてしまうと非常にまずい。超やばいと噂の科学者の娘だから、下手すればバラバラに解剖されるかもしれない。必死にごまかそうとするが、相手も強情だ。
「この私が見間違えなんてするはずがないわ。それに、貧乏人とメカ化は関係ないことなんてー」
チャイムがなった。嫌味な奴は、
「私の名前は、シイよ。覚えておきなさい」
と言い残して去って行った。何が覚えておきなさいだ。お前の名前を覚えるなんて、記憶力の無駄だ。とにかく、シイにメカ化したことがバレたのは大変だ。見間違え作戦も駄目だとわかった。また、メカ化先輩のめりかに相談しないとな。
一限が始まった後も、ずっと対処法を考えていたので、授業は頭に入ってこなかった。