壊さないように
こんなに私の体は重いのか。動きがぎこちない。それに、スカビオサが操るせいで、進めない。
「あんな言っとったのに動かへんやんか。そんなんじゃあの機械は壊せへんで。さっさと帰った方がええで?」
「嫌だ!何か進める方法があるはずだ!」
「しぶといなあ」
スカビオサは、きっと私が自分に近づいてくると思っているのだろう。しかし、私は反対方向に行く。機械を壊すのが先だ。ばれないように、少しずつ、少しずつ後ずさり。ところが、こんな思惑はすぐに見透かされた。
「あんた、どこに進んどるん。私の方ちゃうよな」
「さあ、帰るんじゃないかな」
「入り口側ちゃうやんけ。機械、狙っとるんやろ」
「…」
スカビオサがコントローラーを動かした。そうすると、思いっきり前にこけた。スカビオサは自分が優勢だと言った。そんなことはもう言わせない。転ぶ前は、左足を後ろにかなり下げられる。私は、この動きを利用させてもらおう。
「やっぱりスカビオサの方に行く事にしたよ」
「あっさり変えるねんな、でも来させへんで」
スカビオサがコントローラーを動かそうとする。私は、ここで青いボタンを押した。コントローラーを動かされて、左足が後ろに下がる。そこで、転ぶ前に、手で支えて、勢いをつけて…。前に飛び出した。勢いよくスカビオサの方に向かっていく。
「はあっ」
相手の焦った声が聞こえた。それもそのはず、私はメカの力を使わないと言ったのだから。それに、転ぶと思っていたのだから。走った勢いで、私は、コントローラーを叩き落とした。カシャンと音を立てて、コントローラーにヒビが入った。意外とあっさり行ったかもしれない。
スカビオサは…。機械の方に向かって走っていく。隠されたり守られたりしたら…。
「待って!」
「本当に待つやつなんかおらんやろ!」
間に合わない。と思ったが、大丈夫みたいだ。何やらか機械の前でパソコンをカタカタやっている。時間がかかるのか。これは幸運。スカビオサが操作していない機械から壊していこう。スカビオサは右の機械をいじっている。私は一番左の機械から壊していく。赤いボタンを押して、左手の力を強くする。
私は、一つ目の機械を破壊した。そうすると、今までとは比べものにならないほど大きな、バキンという音がした。機械に浮かんでいた四角い光が消えていって、地面が揺れた気がした。スカビオサは機械をいじる手が止まり、こちらを、真っ青な顔で見ていた。
「何しとるんや…そないなことしたら…」
「あっ、めりか!」
めりかを捕まえていたヴェーとシイの手がゆるみ、めりかが床に倒れ込む。
ヴェーとシイは口から煙を吐き出して、動かなくなっていた。