破壊の妨害
管理室の中に入った。溶けたのは入り口付近だけで、他は無事らしかった。部屋の奥にあったのは三つの機械。
「この中のどれかが管理室の機械ってことだよね」
「そうみたい。どれも見た目は同じだけど、中身は少し違うみたいだよ」
「めりか、すごいっ。もうわかったの?」
「まあね、だいぶメカのところの扱い方に慣れてきたよ」
「ここの機械、とりあえず全部壊す…かな」
「頑張れのぞみっ」
ヴェーたちが来る前にさっさと壊そう。まずは真ん中の機械からやってみることにした。爆発したりしませんようにと願って、赤いボタンを押した。左腕の青い光が強くなる。助走をつけて機械に向かい、腕を振り下ろそうとした。
視界が回って、背中に半分痛みを感じた。私は地面に仰向けになっていて、振り下ろしたはずの腕は、何故か上げた姿勢のままだった。
「なんで…?」
「なんでやろな?あかんことするからこうなんねん」
入り口に目をやると、スカビオサがいた。その手には、正方形のコントローラーらしきもの。一体何をしたのだろう。ぽかんとしている私をみて、スカビオサはくっくっと笑った。
「ほんまおっかしいなあっ。あんたずっと気づかへんのやもん。シイと喧嘩した時も、職員を前にした時も、手足が勝手に動いとるのに気づかへんっ」
そう言って、大声をあげて笑った。ということは、あのコントローラーで私の左半身は…。
「ふふ。その顔、やっと気づいたんやなあ。そう、あんたの左手足は私に操られんねん」
「そんな…!でも、そのコントローラーさえっ」
「あんたにそれができるんかいな。自分の首締めることもできるねんで?」
「ぐ…」
そう言われてはうかつに動けない。降伏するしかないのだろうか。そうだ。めりか。めりかは、助けて欲しい。
だが、私の考えは甘かった。めりかはシイとヴェーによって拘束されていた。
「めりかっ」
返事がない。意識がないのだろうか。
もう終わり?…いや、違う。まだ私には右半身があるじゃないか。諦めるのは早いんだ。重い左半身を起こして、右半身で体を支える。
「おや、諦めへんの。しぶといな」
「ここまできて、そう易々と諦めるもんですか」
「ふうん…」
スカビオサから笑顔が消えた。おそらくこちらを全力で止めに来る。でも、スカビオサ一人なはず。だって、あの大量の職員と、ヴェーは、機械を壊したしまう危険があるから。
「真剣にやるよ。メカにずっと頼りきりじゃ勝てないからね」
「勝てるわけないやろ?私の方が優勢やもん」
スカビオサの目に私の顔が写っていた。