作戦実行日
アラームの音で目が覚める。朝日は差し込んでこない。カーテンを少し開けても外はまだ薄紫だ。現在の時刻は午前四時あたり。めりかも目を覚ましている。まだ眠いが、ここはコーヒーで解決しよう。…と思ったが、ガスも電気も止まっているのでお湯が沸かせない。だが、幸いにも家には、緊急用に小さいながら貯水タンクがあったので、水は止まっていなかった。私たちは顔を洗い、水を飲んで、甘いものを腹に入れて外に出た。
「研究所の方角どっちだっけ」
「こっから東あたり。まっすぐ掘り進めば行けるはずだよ」
「オッケー、そんじゃここのボタンかな…」
赤いボタンを押す。やはり左手の光が強くなったので、そのまま地面を拳で叩いた。ドカンッだかバキッだかそんな音がして、表面のアスファルトが割れる。地面もえぐれて穴ができた。二人でそこに入って、私はまた地面を殴る。そうして穴を掘り進んでいった。
そうしているうち、ちょうどいい深さのところまで辿り着いた。ここからは東の方に掘り進む。さあ、横に手を置いて…その時だ。地面にヒビが入った。ヒビはどんどん広がり、立っているのも怪しい。
「のぞみッ上行かないと!跳べる?」
「やってみる!手、握って!」
めりかが私の手を握ろうとしてこちらの方に踏み出した。しかし、歩いた時の小さな衝撃でも、崩れかけた地面には耐えられなかったらしい。崩れた。
「うっ…!」
落ちて死ぬかと思ったが、案外すぐ下に落ちた。広めのトンネルの様な場所に濁った水が流れている場所。
「めりか、ここどこかわかる?なんか、どっかで見たことある様な…」
「下水が流れてるんだと思う。ここはまだ処理されてない水だから飲んだりしない方がいいよ」
「ああ、下水のところね。ていうか、さすがにここの水飲んだらダメでしょ」
ちょっとこの場所は予想外。でも、研究所にも水は通ってるはずだから、東の方を辿ればいけるはずだ。私はめりかと共に、東の方に進んでいった。
しばらくいくと、ハシゴが上に伸びていた。たぶんマンホールだろう。めりかは、上には塞ぐものは無いと思うから行けると言っている。いつ出れるかもわからないし、時間的にも研究所に着く頃だと見て、私たちは上に出た。蓋はちょっと重かったが、体重をかけるつもりで押し上げたら開いた。
出た先は、外ではなく、白い壁の建物だった。下水が流れているところより涼しかったが、慣れると特に感じなくなった。
「ここ、どこだろ」
「ちょっと見てみる。……ここが、たぶん研究所なんじゃないかな」
「じゃあ、私たち、ついに侵入したってこと⁉︎」
「作戦、一つ目、成功だね!」
「次は管理室。でも、ここどこ?」
静まり返る。そういえば、ここは一面真っ白の部屋。ドアもない。窓もない。何もないのに、壁は硬くて壊さない。そしてマンホールだと思っていた唯一の入り口の様なもの。もしかして、罠…⁉︎