練習
めりかは、自分のメカの使い方をほとんどマスターしていると思う。一方私は、足の赤いボタンくらいしかわからない。さっきの力があればいけるのではと思われるかもしれないが、次はそう簡単には研究所に入れないだろう。
今は、めりかが必死になって私のメカを解析してくれているところだ。途中で、メモ帳を求められたので貸すと、意味不明な図形を描き始めた。時々頭を抑えて、悩んでいるように見えるが、手を止めることはない。話しかけるのも気が引ける雰囲気だ。
めりかがガリガリと鉛筆を走らせること数分後、メモ帳がもうすぐなくなるかと思われた時だった。それまで図形を書いていためりかが文字を書いた。「赤→左手、青→左足、 緑→左全体、黒→不明。」と書いてあった。
「それ…何?」
「のぞみのボタンを押したらどうなるか」
「ええっすごいっ、わかったのっ?」
「黒以外は。…疲れたー」
めりかは寝てくると言ってソファに寝転がった。そのまま寝息をたてている。寝るの、早。というか、めりか、私のメカの使い方を解明してくれたんだ。ボタンを押せば、いろいろ変わるらしい。赤って、研究所から出る時に押したボタンだ。左手ってことは…左手がメカの力が出るって事かな。じゃあ、左足と左全体は…そこが強くなるということかっ。めりかすごい…。一体いつの間に、使いこなして…。これは、私も使いこなさなければ。練習が必要だな。とりあえず暗記だ。どこがどのボタンか覚えとかないと。
「メモ…えっと、写してと…よし」
これでいつでも見返す事ができる。外に行って試してみようかな。私はドアを少しだけ開けて、外を除く。追いかけてくる奴はいない事を確認して外に出た。赤はもう使ったから、青のボタンを押してみよう。私は、少しわくわくしながら青いボタンを押した。カチ、と音がした後、足の青い光が強くなった。今ならどんなものでも蹴り飛ばせる気がしてきた。そこら辺に転がっている大きめの瓦礫を、試しに蹴った。すると、その瓦礫は、バラバラに崩れ落ちた。
「これ…すご…左半身全体は怖いからやめとこ。家に戻ろうかな」
家に戻るとめりかが起きて、私の方を、信じられないという様な顔をしてみていた。
「えっと、何その顔」
「勝手に使うのが危険かくらいわかるでしょ…」
「いや、ちょっと練習しようと思って」
「練習って…まあそれもいるだろうけど、使う制限ありそうだよ?」
「えええっあと何回⁉︎」
「知らないよー…そこまでは見えなかったの」
私は、今更ながら病院で聞いた言葉を思い出した。エネルギー蓄積型の…じゃあ、限度があるということか。青いボタンを押した事を後悔した。エネルギーを無駄に使ってしまったかもしれない。
「まあ、これは置いといて、シイ、なんであんな事…」
「うん…」
シイは何故、私たちを罠にはめる様な事をしたのか。友達だと、友達になれたと思ったのに。