危険機能付きな半メカ化少女
いや、このタイミングで武器機能付きなのがわかるなんて。計画中の作戦にとって都合がかなり良いのだが。ところで、こんな危険な機能がわかったという事は、私は危険な対象として扱われるのではないだろうか。もしそうだとしたら、兵器にされるかもしれないし、閉じ込められるかもしれない。不安が大きくなってきて、前を見られない。横からシイかめりかか病院の人の声がする。その時、唯一はっきり聞こえたのは
「これは切り離すしか」
という声だった。私は反射的に立ち上がり、走り出していた。めりかとシイの言葉も無視して出口から飛び出す。とにかく逃げたかった。でも、二人の声以外が増えていって、振り向くと、病院に居た人のほとんどがこっちに向かって全速力で走っている。何の感情なのかわからない顔なのに、その目はしっかり私を捉えている。怖くて怖くてとにかく逃げた。追いかけてこないところに逃げなければ。目の前は真っ白になったけど、手足はまだ動いていた。走って体力が尽きて倒れ込んだところは、学校だった。
目が覚めた頃には、真っ暗。休日だから灯りもない廊下が不気味だ。穴の空いた窓の外をみると、ここが三階だということがわかった。校門に目をやると、病院の中にいた人だけでなく、もっとたくさんの人がこっちをジッと見ていた。その中に一つ、青い蛍光色の光が見えた。人混みに紛れて、裏門から回り込もうとしている。だが、鍵は裏門にもあるはずだ。入れるわけがない。そう思ったのに、小さく光っている何かは鍵をたやすく開けた。ここの学校は鍵の構造がわからない限り、絶対開かない仕組みなのに。裏門から人が流れ込む。逃げ場は、屋上。私は階段を登り、上に上がる。もう足音が近づいてきている。大人数ではないが。上手くまかなければ。私は、古い南京錠で絡まっている屋上の扉を殴り壊した。近づいてきていた奴も、そこから出てくる。警戒を高める。距離をとって、左足に力を溜めた。上にある貯水槽の上に飛び乗って逃げよう。
でも、姿を現したそいつは、
「…!めりか」
「のぞみ…なんか、隠してる」
「そんなこと。今はもっと大変なのに」
「そんなこと…?のぞみは最初からメカのこと知ってたんじゃないの?」
「知らないよ」
「だったらなんで使い方を知ってるの。なんで三階まで飛んだり扉を殴り壊したり窓に穴を開けたりできるの」
「え?」
めりかの様子がおかしい。いつもと違って明るくない。下を向いてぶつぶつ呟く様子は普通じゃない。それに、喋る内容も。私がメカのことを知ってた?使い方をわかってる?
「なんで私に教えてくれないのっ」
突如叫んだめりかは顔をあげていた。星のあかりで照らされて見えた表情は悔しそうで、目には涙が溜まっている。
「めりか、なんでそんなに」
「だって、私のこと信じられないの?」
「信じられないわけないよ。友達でしょ」
「じゃあ話してよ……」
そう言ったきり、めりかはうつむいて黙り込んでしまった。私は今までの言動をたどる。窓の穴に、三階にいた私。あ、屋上の扉、殴り壊してる…?私が?それに、貯水槽の上に飛んで逃げようと思ってた?あんなに大きな貯水槽に。左手を見て、どきどきする。冷や汗が流れる。そうか。めりかはこのことを言ってるんだと認識した。しかし、私も説明できない。だから感覚を思い出す。あの時、どうしたっけ。たしか、足に力を溜めた。たしか、腕のボタンを押した。
武器機能付き、これは都合が良いとかじゃないんだ。