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朝起きたら半分メカになっている

 ごちん、と、ふかふかの布団には似合わない音で目が覚めた。また目覚まし時計を叩き落としたかな、などと考えながら顔を上げると、左手がメカのようになっていた。

「左手…いや、左腕、足も、」

機械仕掛けになっている。

「夢、じゃない」

頬っぺたをつねってみるとしっかり痛かった。恐る恐る姿見の方に行ってみると、顔以外の左半身がメカ化している自分がいた。腕に触れるとひんやり硬い。

「ぅあ、ぎゃああああああああああああああああああっ」

私の叫びに反応して、一階から母の心配する声が聞こえたが、そんなことは今問題ではない。見られるのもまずいこの状態でパニックになる事以外ができるものか。ボタンを外そうとする、カプセルを外そうとする。もうめちゃくちゃに暴れているその時、部屋の扉が勢いよく開いた。

「おかあさぁぁん」

「えっ、のぞみ。なにそれ、腕、どうなってんの、ちょ」

「わかんないっ起きたらこうなってたのっ」

お母さんもうろたえた。寝ている間にコスプレをしていた、目覚まし時計がバラバラになって体にへばりついた、などのあり得ない事まで想像して半メカ化ではないと信じ込もうとしたが、ついにもともと無い希望を捨てる事にしていた。そして、二人でひとしきり絶望感に浸ったあと、これからどうするかという問題を直視した。

「とにかく、このままじゃ中学には行けないよ。」

「そうね、今日はお休みしてもらう事にするわ。病院に行った方がいいかしら。」

「その方がいいかもしれない、でも、もしかしたらいろんな人に知られて、調べるために解剖されたりするかもよ。私、今日外には出たくない。」

私も、本当は今すぐ治したいので、どこか治療してくれるところを探したいのだが、入院だの珍しいだのと言われる方がたまらないのだ。それなら家に閉じこもり、ひっそりと暮らす事を選ぶだろう。お母さんも私の発言を聞いて不安そうな顔をしたので、今日のところは外に出される危険性はないと予想する。

「そうね、それじゃあ今日は家にいてもらおうかしら…」

お母さんの説得成功。今日は乗り切った。とんでもない状況なのに少しの時間で落ち着けるのは謎だが、焦るよりは断然いい。私は部屋に居たまま、家族は仕事に行く事になった。

「はぁ」

ため息をついてもう一度姿見を見る。観察してみると、足に大量のボタンがついていたり、耳にカプセルのようなイヤリングがついていたりする。しかも外れない。薄暗い部屋の中、自分の体から発せられる蛍光色の青い光さえ恨めしい。寂しいし、私の家族、早く帰ってきて。でもあと何時間待つの。気が遠くなる。

「ゲームでもするか」

もちろん気を紛らわすため。一階に降りて朝ごはんという名のエネルギーを補給すると、いつも以上に集中できて、時間なんて忘れることができた。周りが見えていなかった。

そして数時間後、スマホにメッセージが届く音で我に帰った。内容は、気付け〜。とだけ。何に気づくのだろう。友達だからとなんでもわかるわけではない。続いて、窓だって。というメッセージが。窓に目をやるとカーテンが開いている。窓の前には友達の姿。

これ、メカ化してるのがバレてる系のやつだ。





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