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第14話 これからも

「もうあなたはわたくしを、愛していないのですか?」

 泣きそうな顔でシャルロッテはアーノルドを見る。


 心が痛むが、これからの為にと心を殺し、言葉を発しようとすた。


「俺は、シャルロッテ様を……」

 愛していない、そう言おうとした時にノックの音が響いた。


「誰だ?」

 アーノルドはそう言い、シャルロッテは溢れそうな涙を拭った。


「失礼します、エルです」


「エル? 何故ここに?」


「最近モナの体調も良くなったので、散歩に出たのです。そうしたら僕たちが働いているギルドを見てみたいと言って。アーノルドの顔も見ようと思ったら、応接室にいると聞きました。入ってもいいですか?」

 アーノルドは戸惑う。


 今はシャルロッテと大事な話をしているのだ。


「モナを休ませたいのもありまして、少しだけいいですか?」

 そう言われると断れない。


 シャルロッテの了承も得て、二人を招き入れた。


「失礼します」

 エルはシャルロッテの顔を見て驚いていた。


「後で話す、まずはモナさんを休ませよう」

 アーノルドは空けたソファに座るよう促した。


「お話し中だったのに、本当にすみません」


「今はアーノルドの言葉に甘えて休みましょ。さぁ座って」

 申し訳無さそうに謝罪をするモナをエルは座らせた。


 改めてシャルロッテを見て、頭を深々と下げる。


「僕はエルと言います、こちらはモナ。お話の邪魔をして、本当に申し訳ありません」


「いえ、いいのですよ。具合が悪い時に無理してはいけませんわ」

 シャルロッテは優しく声をかける。


「間違っていたら申し訳ないのですが……あなたはシシル国のシャルロッテ王女ではないですか?」

 シャルロッテは驚いた。


「ええ、そうです。あなたはわたくしを知っているのですね、我が国の者でしょうか?」

 ここから王国は遠い。


 他国の者でシャルロッテを知っているとは思えなかった。


「エルは神殿を辞めた神官でして」

 それを聞いてシャルロッテはエルの顔を、もう一度見る。


「あなた、もしかしてエルネスト様? 隣の女性は、病死と発表された聖女様ではないかしら? どちらも病で亡くなったと聞いたけど、何故アーノルドと一緒に?」

 シャルロッテが信じられないといった顔をする。


「大神官候補がいなくなったと、我が国は騒然となっていたわ」

 モナの死体と共に川へ身を投げると遺書を書いてきたが、シナリオが作られたのだろう


「エルネストは死にました。ここにいる男は、ただのエルです」

 寄り添い、モナの手を握る。


 いらないしがらみは捨て去りたかった。


「アーノルドの想い人がシャルロッテ様とは気づきませんでした。だからあんなにも頑張って、魔石を手に入れようとしていたのですね」


「エル、そういうのは言わなくていい」

 アーノルドはエルを制しようと声を荒げる。


「シャルロッテ様の為に国に帰ろうと、頑張ってらしたじゃないですか。お金も貯めて、言い寄られても大事な人がいると拒否していた。そしてわざわざシャルロッテ様が会いに来たということは、両思いなのでしょ?」

 エルはキョトンとしている。


 アーノルドは顔を赤くし、シャルロッテの表情は期待にぱぁっと明るくなった。


「アーノルド、離れていてもわたくしを思って頑張ってくれていたのね」

 大事な人と言われるなんて、喜ばしい。


「違う、俺は君を愛してなんて…「アーノルド」

 エルが口を挟む。


「いつ別れが来るか、誰にもわからないのですよ。きちんと想いは伝えたほうがいい」

 実感の籠もった言葉だ。


「だが、俺ではシャルロッテ様を幸せに出来ない……」


「幸せかどうかはわたくしが決めるわ」

 きっぱりと言ってシャルロッテは立ち上がる。


「わたくしをあなたの妻にしてください」


「それは、俺が言う台詞ですよ」

 プロポーズを先に言われてしまったが、ようやくアーノルドは決心し、跪く。


「シャルロッテ様、いついかなる時もあなたを支え、守ることを誓います。俺の妻になってください」


「えぇ、喜んで!」

 念願の言葉にシャルロッテはアーノルドに抱きついた。


 モナの回復を待って、四人は別な街へと移動した。

 新たなダンジョン攻略と、安住の地を求めて。







 ギアン達チームは解散したそうだ。


 噂によるとシュイは別なチームを転々としているらしい。


 チーム内の輪を乱すクラッシャーとして、だんだんと組んでくれるチームは減ってるそうだが。


 ノエルとロウは反省し、最低ランクから出直している。


 反省を活かし、腕を磨いているそうだ。


 しっかり強くなるまでは、とチームの勧誘を断り二人で力を合わせていた。


 ギアンは治癒師に頼み、腕を繋いでもらったものの、一部の回路が繋がっておらず、戦いに支障をきたしている。


「あれだけの傷は普通の者に治せませんよ、僕やモナなら出来ますが」

 戦いの最前線の者たちを治してきたエルやモナならば出来るらしいが、あれだけの重傷を治すには、高い魔力と人体についての知識がなければ難しいそうだ。


 ギアンが心を入れ替えれば、エルだって治してあげようと思っている。


 いつになるかは分からないが。







「今日もよろしくな、エル」 


「こちらこそ」

 本日は二人で魔物の討伐をする予定だ。


 モナにはシャルロッテが付き添ってくれる事になった。


 二人は年も近く、すぐに打ち解けた。


 普通の生活とは縁遠い暮らしをしてきた彼女達だが、恋バナをしたりと楽しく仲良く過ごしているらしい。


「さくっと倒してさっさと帰りたいです」

 エルは過保護なくらいモナを心配している、アーノルドも気持ちが分かる為に何も言えない。


 帰る場所があるというのはいいものだ。


 一人だったアーノルドはこうして一緒に戦ったり、相談出来る気兼ねない仲間が出来た事も嬉しい。


「これからもずっと一緒にがんばろうな」


「こちらこそよろしくお願いします」

 アーノルドとエル。


 お互いに違う性質だからこそ、補い、支え合っていける。


 裏切られてもなお、人を信じる心を持っていた二人だから強くなれたのだろう。


 息の合った二人は、互いをパートナーとして認め、支え合うことを心で誓っていた。


 唯一無二の相棒だ。







お読み頂きありがとうございました。


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今後も作品をよろしくお願いします(*´ω`*)



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