第96話 盤上遊戯の女
―都市城壁 東門
「今日晴れててよかったぜ」
「……ご覧の通り疎開は急ピッチで進行中。これで心置きなく戦えるかもすね」
「勝った後の事も考えなきゃならんからなあ。無口君は都市長官の地位をフル活用して、民生関連の維持に努めてくれ」
「……国造りってヤツですか?」
「そうかな?そうかもな」
「……報告です。さっき持ち出す物資の量でヘルツリヒさんとちょっと言い合いに」
「ナヌ」
「……あの人、甘い所あるから、想定以上の持ち出しを許してる」
「今は速度命、すまんが多少は目を瞑ろう。親切野郎のやる事だから、後も引かんだろ」
「……承知。あと、南から到着してる避難民をエリシバー氏がまとめてて、まあさすがは族長殿って感じすが油断禁物かなと」
「おれにとって代わる気が?」
「……当然考えてるでしょ」
「今はニャンコの手でも借りたいから見逃してやるさ。なに、おれたちが深蛮斧に勝てば頂点は自ずと決まる。だろ?」
「……確かに」
―庁舎の塔 螺旋階段
「……あ」
「ん、どした?」
「……」
「なんだ腹黒リータ」
「タ、タク。い、いや、閣下……」
「おう」
「あ、あの……私と……」
「?」
「や、やっぱり無理!」
「何がだ。何だ一体?」
―庁舎の塔 応接室
ガチャ
ガチャ
「人の心は、ままならないものですね」
「え?」
「今逃げた彼女、あなたに近づくよう、父親に言いつけられたのでしょう」
「あ、ああなるほど。エリシバーのおっさん、娘をおれに宛がって、権勢を取り戻そうと?」
「間違いなく」
「うーん、あのアマ真っ黒だからなあ、躊躇するぜ。というか人の心について閣下が語ると、皮肉にしか聞こえないかも」
「どういう意味かしら?」
「ま、まあそれはともかく、敵が来る前に疎開は完了しそうですぜ。これで心置きなく戦える」
「そうですね。食料の蓄えが十分にあれば、活路は見いだせるでしょう。ですが、人手はどうですか?女性や子供だけでなく、男性もかなり疎開させてしまっては」
「戦闘員以外はそんなにいらないすからね。戦争前に性別は関係ないですし」
「そう言えば、新たに彼女をメイドにしたこと、良い判断でしたね」
「ああ、因縁女に逃げられましたし。緊急登板に応えてもらうつもりです。また挨拶させますよ」
「最後に彼女と会ったのは二か月前……あの時はこんな事態は想定していなかったものですが」
カンカンカンカン!
「鐘楼の音、ですね……」
「見張りの野郎元気いっぱいだな。深蛮斧勢を目視したんすね。ついに到来だ」
「先のデバッゲン軍と異なり、この町を目指して分散的ですが確実に北上中です」
「新編成軍の肩慣らしに、ちょっと出撃してきます」
「くれぐれも気を付けてくださいね」
城壁の外では、体を青く染め抜いた深蛮斧の戦士たちが、その独特な外見で戦場に立つ。彼らは、風景色に溶け込む事を拒否するように、青く、粗末な身なりに蛮斧の集落から取り上げた服を継ぎ接ぎに身につけている。異様の一言だが、その姿で国境の町に対する威圧と挑発を繰り返している。
そこに勢い良く町を出撃した騎馬のタクロが突入していく。恐怖の対象となっている深蛮斧勢に軍司令官自ら当たることで、未知の恐怖を払拭しようとしているのだろう。いつもの通り、手斧を巧みに振るって敵を蹴散らしていく。相手が誰だろうと変わりはない。
「ほれ、全身ブルーな連中もそれだけだ!蹴散らすぞ!」
その後ろから、元五代目出撃隊長と元三代目城壁隊長が率いる部隊が雄叫びを上げながら続く。町が怯える前の果敢さの発露は正しい。
先着した深蛮斧戦士の群れは偵察も兼ねているようだ。ガイルドゥム率いる隊が遊撃的に散らし、抜け駆けして城壁に近づこうものなら、元補給隊長が迎撃に当たる。タクロの軍制改革は上手く機能しているように見える。
青色戦士たちも、行く手を遮られるとやる気を失うようだ。誰かが撤退の合図らしき鳴き声を出すと、ノォーと奇妙な叫び声を上げながら早々に後退していく。初戦ではあるが、タクロはそれを許さず追撃開始。未だ数の差の有利が生きている今、戦果を稼ぎたいはずだ。戦闘の興奮と恐怖の中、青色戦士は次々と打ち斃されていった。
軍司令官タクロを賞賛する声が戦場に轟く。
「すげえ!やっぱりタクロさんはすげえや!」
「がっはっは!」
「天才!天才!」
「だっはっは!」
「戦いやすくなった気がする!もう負けない!」
「そうだろそうだろ!」
歓声を上げ、帰還するタクロ勢は深蛮斧人の捕虜を十人程度連れていたが、タクロの命令により彼らは広場の檻の中に入れて、見世物にされた。戦士や町に残留した住民たちが、面白がって眺め、罵声を飛ばしたり石をぶつけたりしている。こんな風景を視ると、所詮蛮斧は蛮斧、野蛮人であるとの思いもこみ上げてくる。
庁舎広場では、元出撃隊五代目が大衆を前にタクロの戦術の妙を褒めちぎっている。当のタクロは元補給隊長に城壁の修復について新たに指示を出しているように、油断はしていないようで何よりだ。と、そこに怪しい手つきの男が近づく。
「タクロ殿」
「エリシバーの旦那。デバッゲンを倒したおれ様の力、恐れ入ったか!」
「ああ、素晴らしいよ本当に。次戦から、私の部族の戦士達も戦おう。この都市に集まってきたんだ」
タクロはエリシア父の手つきをなぞっているが、何の真似だろうか。
「そいつら誰が指揮するんだ?」
「私が」
「おれの指揮命令下に入ることが条件になるが、それは大丈夫かい?」
「だ、大丈夫だ」
口淀みを見逃さないタクロ、手つきはそのまま形相を変えて睨む。
「嫌なら止めてもいいんだぜ!」
「だ、大丈夫だとも」
「そんなら大歓迎だ。よろしく頼む」
「受け入れてくれて感謝する……ところで私の娘なんだが」
エリシア父の探るような視線。合掌作りの手がより緻密な動きとなる。
「最近おれの周りでうろちょろしてるような」
「君はまだ独身だろう。考えてみてくれないか」
「それって、そういうこと?」
「そうとも、そういうこと」
やや困り顔のタクロ。やはりエリシアには関心がないようだ。
「しかしなあ、腹黒娘の方にその気が無いと思うんだがなあ」
「英雄殿相手に、そんなことあるまいよ」
「でも、最近すぐ逃げ出すんだぜ?」
「む、娘には愛想よくするよう、良く言っておく」
「いや、無理しなくていいけど……」
「しかし君はまだ独身だろう?」
「そりゃまあ独身なんだけど、お楽しみの相手くらいは」
「いるのかね?」
「……」
「?」
少なくとも、私の来蛮以降はいない。何故か、空を見上げるタクロ。
「最近はとんとご無沙汰しております」
「なら申し分ない!娘にはちゃんと言い含めておくから」
「その前に、あんたの部隊を閲兵しないと。今からいいかい?」
合掌作りの男二人が城壁へ向かって歩き出す。確かに多忙なタクロに女遊びをしている暇などないだろう。
初戦の勝利は良い。迎撃する側なのだから当然だろう。だが、次の日、その次の日も新手の集団が現れて来る。そして同じ失敗を繰り返さないよう深入りを避ける知恵はどんな集団も備えているものだ。次第に、その日の内に敵を追い散らすことができなくなる。包囲の始まりだ。
そして初戦から一週間後。国境の町の外は青色の戦士達の大群で埋め尽くされるようになった。
―都市城壁 蛮斧門(南)
「うーむ、完全に包囲されたな。もう出撃しにくい……」
「さっきも随分無茶な出撃でした」
「文句あっか」
「ありません。こっちに死者が出なかったのが不思議なくらいでしたけど」
「もう波というか壁なんだぜ?青い壁、斧振り回してもうんざりしてくる」
「ゴキブリみたいすね。青ゴキ。もうコイツら何人いるかワカらんですよ」
「一万人って前評判だが、体が青いと……」
「そう、数えにくい!」
「でももう、ビビらなくはなったろ」
「そんな、まだ全然ですよ。城壁に取り付く感じが野獣すぎてみんなビビってます」
「各部隊、手斧も弓矢も手槍も十分ある。食料もな。持つは持つが……蛮斧世界からの援軍の当てがない」
「援軍どころか、深蛮斧に協力してるヤツも、屈服している連中もこっから見えますぜ」
「スタッドマウアー君でも見つけたか?」
「いや、それは無いですが、ふぅ……溜息でるな」
「思い切って敵のボスを始末しちまうか」
「デバッゲンをヤった時のようにですか!」
「まあ、ものは試しで」
「でも深蛮斧のボスがどこにいるかもまだ……」
「一番エラそうにしてる陣にいる気がするんだが」
「うーん……野蛮過ぎてさっぱり」
「……」
「……」
「そこからだな。ちょっと庁舎に戻る。すぐに戻って来るからそれまで任せた……無謀な出撃は禁止だぞクリゲル君」
「いませんよそんなヤツ」
―庁舎管理棟
「閣下」
「メイド長、残留した連中の状態はどうだ?」
「さすがに動揺が大きいようです。勝つか負けるか、そんな不毛な問い合わせが連日来ています」
「言うほど不毛かい?」
「こうなった以上もう、勝てる、と思うしかないのでは?」
「うん、確かに。まあこの前線都市の支配の象徴たるこの庁舎がちゃんとしていれば、連中の臆病心も騒ぐことはないだろ。それにはメイド組の安定が必須だ。ある意味でお前らに行く末がかかっていると言えなくもない」
「……」
「だろ?」
「ま、まあそれはそれとして」
「四人体制で、回ってるか?」
「それはもう。都市長官殿にも色々配慮して頂いているので。それにレリアの抜けた穴は、彼女がしっかり埋めてくれてます」
「役に立ってるかい?」
「はい、とても」
「うんうん、そりゃよかった。腹黒は?」
「無心に仕事をしてますね、何か悩みがあるようですが」
「くっくっくっ、考えるのを止めたか」
「?」
「まあ戻ってきたとは言え、戦線離脱メイドだからなあ」
「閣下、あまり追い詰めては……」
「親父さんに追い詰められてんだ。ワカるか?」
「えっ」
「さすが族長一家。娘は権力獲得の道具、と言ったら言い過ぎかな?」
「……なるほど」
「そういう役割を期待されているんだな。蛮斧伝統の様式美かな」
「美、ですか?」
「ツッコむな。深い考えはないし、腹黒に傷を負わす気もないしな」
「……はい。それでもアリシアがサポートして、ちゃんと頑張ってますから」
「勇敢女は相変わらず元気だな。お前とあいつ、褒美は思いのままだぜ!」
「はい、期待しています」
―庁舎の塔 応接室
「閣下、今日の報告です」
「ついにこの町も、完全に包囲されましたね」
「……閣下に報告する必要ないか。空から視えるんですしね」
「私からの朗報です、タクロ君」
「なんです?」
「光曜の軍勢が、光曜境より南の河の右岸に到達しています」
「え!」
「霧と森林のせいで数の精査は困難ですが、深蛮斧と渡り合えるだけの規模ではと」
「こ、この都市の支配権を受け取りに?」
「まず、間違いなく」
「暗殺女の野郎、目的を遂げたか!よくやったとほめてやりたい!」
「その前に考えねばならないことが。あの濃霧を越えて、相当な速さでの到着。クララを解放したのはたった十二日前。なのに、使者ではなく軍が来た……」
「確かに早すぎるな」
「事前の準備があったのかもしれませんし、到着しているのは実は一部だけかもしれませんが」
「それでもあの霧の中を……そういえば、閣下のお嬢さんも霧ん中に風で道を作ってた」
「そう、この軍事活動には必ず光曜の魔術師が関わっているはずです」
「あのテロリストどもか……総大将は鎧のジサマですか?」
「……いいえ。近衛軍が来ているため、太子自ら指揮しています。国防大臣も来ていますが、こちらはお飾りです」
「なんと!ずいぶん勇敢じゃないすか……ちょっと見直したぜ」
「……」
「閣下?」
「あなたが言う鎧の……今際の君の軍団は不在ですね。来ているのは荘園領主の軍と近衛の軍です」
「じゃあまさしく王都から来た連中ってことか!やんごとなき連中と戦うの、初めてだぜ!」
「タクロ君、この裏には必ず太子の目的があるはずです」
「目的って?」
「恐らく、深蛮斧勢相手の勝利の他には既存の軍の弱体化です」
「は?」
「我が光曜では、荘園領主の軍は精強ではなく、近衛の軍は実戦向きではありません。正面衝突すればかなりの犠牲が出るでしょう」
「でも、太子自ら率いて来たんでしょ?そんなら人死に覚悟で勇敢に戦いたいんじゃ?」
「光曜の太子は、そういった性格ではありません」
「でも弱体化って、シー・テオダムの野郎じゃあるまいし……閣下。閣下は自ら軍を指揮したことは?」
「ありません」
「なら、閣下にはおれたちの気持ちはワカらんかもだぜ!」
「……さて、どうでしょうか」
「……」
「……」
「なんにせよ、想定の漁夫の利作戦は高確率で狙えるかも!うひょひょひょ!」
「作戦を立てるにしても、光曜側からの接触が、まだありません」
「……おれと交渉するつもりはないってか?」
「そもそも交渉をするつもりなく進軍してきたのかも」
「というと?」
「あわよくば彼ら自身で深蛮斧勢を蹴散らして、実力でこの町を手中に収めるつもりなのかも」
「でも、その、軍の弱体化ってまゆつば話は?」
「両立できる、と考えているとしたら?」
「……なめやがって。絶対に交渉の場に引きずり出してやる。閣下、深蛮斧の連中を光曜軍に向ける良い策はありませんか?」
「それは簡単ですが、どうするの?」
「光曜人だって、深蛮斧がこの都市を攻めて弱ったタイミングを狙って攻めたがっている、とおれは思う。しかしここは戦場、そんな贅沢は許されんということを教えてやりたいんです」
―千年河
大河の右岸では、敵の視線から隠れるように光曜の軍人が様子を伺っている。左岸側を威圧してはいない。彼らの背後では、軍旗が霧中に漂い、迫りくる戦いに備えるべく布陣を進めている。
私がタクロの要望に応えるということは、彼らを危険に突き落とすということになる。同国人である彼らに対して、これ以上ない裏切り行為だろう。私は数か月前、すでに決意を固めて河を渡ったはず。心を引き締めてそれでもなお、胸の騒ぎを感じざるをえない。きっとこの軍勢の中に我が息子の姿もあるだろうから。
一方の左岸では、幾人かの深蛮斧兵に、魔術的示唆を与えてからややあって、まさしく今、深蛮斧の青い大群がその向きを変えつつある。連鎖的に対岸の光曜軍を向き、斧や槍の鈍い刃を示し、ノオォォと激しく叫び声を上げ始める。霧と森に隠れる光曜人を目視した彼らの目標は、光曜軍の視界の先にある前線都市から、それを横取りしようとしている敵へと今、切り替わった。
ノオォォ
ノオォォ
ノオォォ
蛮斧の雄叫びよりも昏い、深蛮斧特有の威嚇的な叫び声が一帯に響き渡った。青色戦士たちが圧倒的な数で河に近づき、次々に飛び込んでいく。戦いの熱気を纏う野蛮な彼らは浅瀬や渡渉点を探したりはしない。盾や板から浮力を得て、泳ぎが達者な戦士たちに至ってはそのまま泳ぎ切るつもりのようだ。
彼らの命知らずの突撃が目前に迫る中、河を進む敵を遠隔攻撃する光曜兵がいない。防御陣形を敷いている。戦いに自信がないのか、積極戦法を採る者がいないのか。そして、一度河に踏みこんだ深蛮斧の大群は、全体としては止まらず、渡河した。
河川右岸の岸で両軍は激突した。光曜軍の整然とした戦列に対し、深蛮斧の大群は怒涛のように押し寄せる。青戦士は個々の武勇よりも集団の勢いで勝負を仕掛けたのか、正面から光曜軍を押し出そうとするが、より訓練された光曜兵たちは盾を突き出し、持ち前の組織力と戦術で応じた。青い身体の蛮族たちが激しく襲い掛かるが、光曜兵たちは持ち前の防御力と規律で戦列を破らせなかった。戦場は混沌に包まれていない。
タクロは部下たちとともに、その様子を城壁の上から観察している。この戦闘の結果次第で、すぐに動けるように。
激しい戦闘の末、右岸に到達した深蛮斧人たちが引き始めた。いくら野蛮な戦士たちとは言え、押して抜けぬのなら下がるしかない。ここで攻勢を開始した光曜軍。青色戦士たちを次々に仕留めていく。そして小舟や木材を浮かべたり、浅瀬に馬を並べて渡河路を示す。追撃に合わせて左岸への渡河に成功した。
思わぬ反撃を受けた形となった都市の包囲を続けていた深蛮斧人諸共、集団は南へ逃走を図る。来た道が帰り道になるわけだが、戦いに疲弊した仲間を抱えて士気が下がった野蛮人たちは、青く塗られた体をさらに血で汚していた。命を保つために森や丘に向かって散り散りに逃げ去っている。光曜軍は持ち前の統率力を活かして、逃げる深蛮斧人を次々と打ち倒し、本格的な追撃を開始した……前線都市を横目に見たまま。
タクロの声が脳裏に響く。
「閣下」
「まだよ」
太子とその幕僚はまだ渡河していない。その性格から、戦況の変化に応じて自身は前進するはず。だがまだ動いていない。勝利の確信を得ていないのなら、それはタクロを警戒しているのか。引き続きタクロの声。
「閣下……」
「まだ。だめよ」
太子は権威と支配の強化のため、わざわざここまで来ているはず。絶対を求める性格に引きずられてのこと、勝利後の象徴的な行動は見逃さないはずだ。戦略家の素質はある。計画的かつ冷徹な意思決定と、恐れ知らずのリーダーシップがせめぎあっているのか。
「閣下、どうです?」
「まだ右岸にいるわ」
「深蛮斧を追撃する光曜を追撃する機会を逃しちまう」
タクロの焦りもワカるが、危険を感じたらすぐに引き上げるだろう。タイミングを見極めねばならない。相手は大国の指導者なのだ。
「……」
動かない。このまま動かないつもりか。あるいはタクロが動くことを待っているのか?敵を撃破した後、町を包囲しない。みえみえの罠のようではないか。
「閣下の魔術でおびき出せませんか。青い連中を北に向けたように」
「本陣に魔術師が何人かいて、警戒しているのよ」
「じりじりするぅ……」
時間は圧倒的にタクロの敵。この私自身の運命も左右するだろうこの盤上遊戯、なんとかタクロを勝たせてやりたいもの。