第69話 鷹の目の女/上位者の男
「皆の衆!明日、給料の支給を楽しみにな!」
演説の終わり、解き放たれた叫びとなった聴衆の掛け声に楽団は押し負け、かくもタクロの演説は申し分ない結果となった。そうみなして良いだろう。住民の支持が厚い軍司令官となれるかもしれない。演台を降りかけたタクロ、もう一度振り返り話し始める。
「そうだ。最後に、先の騒動を鎮圧した連中にここで感謝しておく。特に大活躍だったガイルドゥム君を新設する部隊の長に任命しようと思うが……来てるか?」
「まだ療養してる!」
「だいぶ痩せたよ!」
「そうか、そりゃいいな!」
渦まく爆笑。
「この騒動は調査中だが詳細が固まったらまた皆の衆に知らせるよ。で、ガイルドゥム君の上官たる五代目出撃隊長、この人事、受けてくれるかい?」
「う、受ける」
「礼を言おう!」
戦士たちよりも住民から大きな歓声が上がった。特に女の声が大きい。そちらの方を向いたタクロ、大声を飛ばす。
「あと庁舎勤めの女が足りねえかもだ!女諸君、また狭き門に応募してくれよ!」
女たちが高い音域から、明るく元気なトーンの声を飛ばした。これは喜んでいる風だが、さて、実際はどうだろうか。
ともかく、タクロの演説会は終了した。熱気を残した聴衆が散らばっていく。上空から族長会議の使者を探すが、中々巧妙に身分を隠しているのか、見つけることはできなかった。
―庁舎エントランス
「どうだったお前ら?」
「最高す」【黄】
「しがない俺らでも、昇給だなんて」【黄】
「……反応も良かったです」【黄】
「いやしかし、ふう。演説って毎度疲れるもんだ」
「隊長、背中指圧してやるよ」
「ぐおおお、イテテテ……あ、これトサカ楽団への報酬だ。」
「こ、こんなに?気前いいすね」【黄】
「お前のメンツも立つだろ?」
「へっへっへ、モチのロンすよ!」【黄】
「じゃあ早速行ってくるぜ」
「え、どこに?」
「例の馬と突撃デブに会いに。ヘルツリヒついて来い」
「承知!」
「無口君、すまんが後片付け頼んだぜ」
「……承知」
大通りを進みながら肩こりのほぐれをチェック。ああ、肩が軽くなった。
「隊長、例の件どうするか決めました?」
「何の件?」
「ナチュアリヒの件」
「おれたちは謹慎して反省する蛮斧戦士じゃねえからなあ。詫びの一つでもありゃ戻せんだけど」
「あいつ、まだ意地張ってるんですか……」
「まあね」
「隊長、あの無口をナチュアリヒの代わりにするんですか?」
「キャラクターが違うからなあ。それに無口君に組長は似合わん」
「俺もそれがいいと思います」
「お前、ナチュ公を説得できるか?」
「あいつ頑固だから……」
「まあ命の問題にするつもりはない。安心しろよ」
「うす」【黄】
城壁隊兵舎の馬房に到着。
「いたいた、これが例の馬かあ」
「芦毛の……あ、牝馬ですね。芦毛は臆病で神経質なもんですが、なにか気に入らないことがあったのかも」
「今は大人しそうだな」
「被害者数十人でしたっけ。凄え暴れっぷりだったらしいすけど、信じられんですね」
女宰相の話では操られていただけという憐れな馬だ。コイツはこのまま行けば処分されちまうなんて、思ってもいないだろう、つぶらなおめめがクリクリし、鼻息も落ち着いてるっぽい。
閣下に翻弄され続けてきたおれが思うのだがら間違いないが、どんな時でもチャンスは来るものだ。
「今は、暴れてないし調査もしたい。ウチで引き取るか」
「隊長」【黄】
知らなかったが動物好きだったらしいヘルツリヒの目が輝き賛成と主張している。立ち塞がるのは馬房のトサカ。
「ちょ、ちょっと。ウチの隊長の許可とってくださいよ。俺が叱られる」
「今、いるか?」
「探してきます」
「ん?いや、その必要はなさそうだ」
相変わらずの険しい顔で、城壁マイスターがやってきた。
「何しに来た」
「テロホースを見に来たよ」
「お前にそんな猶予があるのか?」【青】
「まあまあ。で、不審な馬だったか?」
「……いや」
「そうか。ウチでも調べてみるよ。動物好きがいるんだ」
「だから本当に、そんなことしている場合か?」
「昇給の件か?もう段取りは終わってるからな」
おれの発言を聞いた馬房トサカが小さく密かにガッツポーズを決めた。そう、コレだよコレ。おれが獲得したものはコレのはずなんだ。
「で、お使者はどうした」
「都市を去ったよ。最悪の印象を持ったままな」
「そうか。その件でも、色々打ち合わせしたい」
「なんでも話せばいい。ただし、おれは族長会議の軍が来たならば、お前と敵対する」
「んだとお?」
馬房トサカは不安入り交じりに自分の上司とおれの顔を交互に見ている。
「それが嫌なら、族長会議に出頭するんだ」
コイツ……
「今ならまだ間に合うかもしれん」
「正気で言ってるとは思えんな」
「なに」
「さっきやった演説が全てだからもう繰返し言わないけどな。お前、この都市を見捨てるのか?」
「何言っている」【青】
一気に空気が冷えていく中での、男と男の睨み合い。
「明日の給料支給に、ここの隊員はみんな昇給分を受け取るんだぜ」
冷え冷えとした空気の中、昇給という言葉が熱い。馬房トサカは再度ガッツポーズ、今度は素晴らしい笑顔付きだ。こいつからワカるように、蛮斧の戦士たちがいかにカネを欲しがっているか!そもそも給料が少なすぎるし、この都市での生活はカネがかかるんだ。コイツ、そのあたりワカってねえのかな?
「覚えておけ。お前の考えている通りに進むなんて保証はない」
喧嘩になる前に去る城壁隊長。馬房トサカが不安げに口を開く。
「あのう……」
「ん?」
「昇給がオジャンになるなんて」
「それはない。宝船に乗った気でいてくれ」
「よかった!」【黄】
「じゃあ、この馬連れてくぜ。ヘルツリヒ君、頼んだぜ」
「承知!」
―療養所
「突撃デブはいるか」
「ええ、先客が来てますけど」
「先客?」
見れば一つの寝台に女たちが群がり輪を形成し談笑している。さらによく見れば、所狭しと花や果物が並んでいる中、一人の男がいた。
「お供え?」
「いや、違うでしょ」
「じゃあ誰か死ぬのかな?」
「いや、あれガイルドゥムの豚野郎宛でしょ」
「あそこには色男しかいないのに?」
「だからあれが元豚野郎ですってば」
「は!?」
痩せた痩せたとは聞いていたが、人間、ここまで痩せれるものなのか?いやしかし、女たちに囲まれてニヤケている男の顔に、狂ったデブの面影は見えない。さらに、
キラーん☆
なんと!歯が輝いている。どういうことだ?
「前歯が光りやがった!ウソ言うなよ。アイツの兇悪さを際立たせた血管ピキピキのスキンヘッド野郎じゃないぞアイツ」
「ああ、髪伸びて今、短髪なんですね」
「というかあれって……金髪?」
「たしか頭を剃ってたはずですぜ」
「な、なんだお前。詳しいなあ」
「誰かさんの命令で出撃隊に出向してた時に、聞きましたからね」【青】
「あ……そうだっけ」
「ていうか俺、あいつ嫌いなんすよ。早く要件済ませてくださいよ」
ヘルツリヒの顔は心底嫌そう。部下のケアをしてやるか。
「なんだ。出撃隊で嫌がらせされたか?」
「まああんたの部下ってことで多少ですけどね。一緒に仕事をしたい相手じゃない」
「そう言うことは早く言ってくれよ、復讐したのに」
「大丈夫、散々嫌味を言われた程度ですから」【黄】
「ちっ、そうか……ならぼちぼち行くか」
ドン、ドン、ドン、
ゴン
足音激しく、備品にぶつかりながら、肩を暴れさせて歩けば、女どもは自然と道を空ける。空けまくる。そして、
「おいブタ。こりゃなんのマネだ」
「!……タぁクぅロぅ」
「……ああ、その悪い人相。やっぱり突撃デブそのものだぜ。なんだ人体改造か?よくやるよホント」
「ぐぐぐぐ」【青】
「……なんだその面ぁ。前みたいに、おれをぶっ殺そうってか?」
「ギリギリギリ」【青】
歯軋りの音がうるさい。
「へっ、まあいいや。さっき演説し」
「ちょっと待ってください!」
「てきたんだが?」
とおれの声を上書きするように叫んだのは、女たちである。おれの声も最後がうわずった。
「この方は怪しげな犯罪者から私たちを守ってくださったんですよ!」【青】
「軍司令官なら、表彰するべきでしょう!?」【青】
「その通り!なんて酷い態度!」【青】
「黙れコラやかましい!」
甲高い声出しやがってクソ女どもめ。と一人の女がおれと突撃非デブの間に割って入った。結構かわいいが、張り詰めた顔でおれを睨んでいる。
「……」
「なんのつもりだ女。おれはそこの元ブタに用があるんだ。どけ」
「どのような理由があろうと、こちらの方は療養中です。お引き取りを
パン!
あうっ!」
「!」
「!」
「!」
「どけっつってんだろ。次はねえぞ?」
「……」
容赦ある蛮斧ビンタにより女たちの妨害を排除したおれは、かつての面影のないそいつと向かい合う。
「おいガイルドゥム君。君は数多くの犯罪的行為の達人で、多分今もその本質はちぃっとも変わっていないはずだが、先般都市を正真正銘なる犯罪者の手から守った実績を、軍司令官であるおれは高く評価している」
「お、お前が軍司令官ン……?」【青】
どうやら事情は知らないようだ。
「よって君を役職につける。未帰還の巡回隊の責任者のポジションだ」
「!」【黄】
「この人事について、現在君の上司である出撃隊の長ジーダプンクト君も承知してくれている」
「ジーダプンクト……あ、あの若いの?」
「そうだ。彼が今の君の上司、出撃隊の長だ」
「!?アリア殿じゃあ」
「あ、あの女?突撃クソ女は前の軍司令官殿と手を取り合って出奔したよ」
「!」
「ってなんだ知らなかったのか」
最新事情をよく知らないのか。思えば女宰相殿に無理やり操縦された後、ずっと入院中だったもんなあ。精神状態不安定だし。
「そ、それでも副官のツ、ツ、ツォーンじゃ?」
「彼は体調不良が続いていてね。先般、交代したのさ」
「あ、あんな若造がおれと同格……」【青】
「まあ昇格人事だから、今回の昇給とは別にカネの支給も増える。よかったじゃないか。お前、昇格に目がなかったもんな」
「うぐぐ」
「しかし、お前ベッドから起き上がれんのか?」
「う、うるさい!」
起きあがろうとしているが、体がキツそうだ。もしや彼女の魔術で、無理やり体を動かしていたのかな。可哀想になあ。
ふと、まだ若いバナナ幾房かが目についた。
むんず
「あっ……」
おれは、女の誰かの抗議したいような小さな声を聴いた。もぐもぐ。
「まあいいや。前軍司令官殿の出奔により目下都市は混乱を来している。新巡回隊長の活躍を切に期待するものである、こんなんでいいか?じゃあな」
突撃デブが、突撃元デブに成り果てた姿は見ていて苛立ちすら感じる。おれを睨むクソ女衆の邪念を背に、療養所を出ると、おれたちを待っていた芦毛の牝馬がおれのバナナを見てひんひん嘶いた。これはくれてやるしかあるまい。
「ほれ……おっ」
一房全てを皮ごと一口で食べた。
「やるなあ」
「隊長優しいですね」【黄】
事情を女宰相から聞いて同情してるからなあ。
「まあ、馬に罪はあるまい」
「ですよねえ。ほらお前、飼い主の名前を言ってみな」【黄】
もちろん、馬は何も言わない。
「それにしても隊長、人間の女には冷たいですよね」
「んなことはない。女宰相殿には礼儀を尽くしてるぜ」
「でもあんなに可愛い女に容赦ないビンタくれれるなんて、隊長ぐらいじゃないですか?」
「確かにちょっと可愛かったな。前のメイド募集に応募していれば、前任者なら合格にしてたかもな」
「違いないですね」
用事も済んで、庁舎に戻ってきた。
「ん?もう引き上げてもいいんだぜ?」
「馬房でコイツの世話します」
「好きだなあお前」
「給料も上げてもらえますし。そんぐらいしますよ」
「いいね、任せたぜ」
―庁舎エントランス
庁舎に入ると、珍しくちゃんと仕事をしている風の因縁女が、療養中の若造とお喋りをしている所に出くわした。
「新軍司令官閣下の演説、本当に素晴らしかった!あの情熱と口の上手さ、まるで詐欺師のようだったわね。言葉には力が宿っていて、私たちの仕事への情熱を掻き立てるものがあったし」
「そうだよな。意外とあの人の言葉響くよね。まるで脅されてるように、心に響く感じがするような」
「ただ話すだけじゃなくて、言葉の裏に自分の信念と情熱を込めている感じかな。あの演説はただのスピーチじゃ無かった。あの瞬間、私は彼の言葉と一体になった気がしたよ。まるで魔術や神秘のように、私の心に響き渡る言葉の魅力に引き込まれていったって感じかな」
魔術、まさか?
「魅力的だったね。タクロ氏の言葉は腹に心地よく響いて、まるで太鼓の振動に聞こえたよ」
「でしょ?閣下の演説が終わった後、みんながそのエネルギーに包まれている感じもしたし。そうよ、みんな彼の言葉の魔術にかかっちゃったのかも。あの情熱と気合が私たちの心に火を灯し、新たな可能性と希望を感じさせてくれたのね。閣下の指導のもとで働けることを誇りに思えるようになれば、執着至極かしら」
「本当にそうだね。氏の指導のもとで働けることはキミにとってもラッキーだよ。給料上がったんだろ?カネが伴うなら、氏の言葉はみんなの心を打つさ。行動を起こす勇気を与えてくれるんじゃない?」
「その通り!私たちは閣下の有言実行を胸に、一緒に力を合わせて素晴らしい仕事を成し遂げたいなあ」
「あの演説がみんなの心に残る限り、できるよきっと!」
なんだこの嘘くさい会話は。
「ホントその通り!この都市での生活の中で、閣下の演説はまさに魔術の杖のよう。みんな閣下の言葉の力を借りて、困難も乗り越えていかなきゃ!」
「そうだねレリア。何かあっても、氏に陳情すれば、きっとなんとかなるよ。俺も蛮斧軍に入ろうかなあ」
「いいわね!閣下のリーダーシップの薫陶があれば、まるで勇者のような存在になれるかも!もう演説しないのかしら。軍司令官殿がまたみんなを鼓舞すれば、チームタクロ結束しちゃうよ」
「本当にそうかもだね。みんな氏の集金力を頼んで働けば、いい口を見つけられる。あの演説で、みんなやる気になったんじゃないかい?」
「閣下の言葉は私たちだけでなく、きっと族長会議周りにも影響を与えるわ。だから、私たちが彼の演説の魅力を語って語って、そのパワーを共有すれば、さらに大勢を巻き込める!」
「それいいね!俺たちのお喋りが火種になって、大きな変化をもたらすかも!」
「そうそう!私たちの声を届けることで、世界が少しずつ変わっていくかもしれないし。みんな閣下の演説から受けた感動を伝えることで、新たなストーリーを紡いでいけるよ!」
「もう、まったくその通りだね!このお喋りが、タクロ氏の演説の輪郭をより鮮明にし、そのメッセージ性を広めていくんだ!」
なんなんだこの不気味な会話は。
「俺たちはタクロ氏の言葉の力を使って、俺たち自身も氏と同じように、自分の言葉や行動でみんなを鼓舞して、導いていける存在になれるかも!」
「それってつまり……」
「そうさ!氏の演説から受けた感動とエネルギーを、俺たち周りの人々にも伝えていけるんだよ!上手くいけば惨めな生活からもオサラバできる!」
「わあすごい!みんな閣下の演説から得た力を、自分たちの日常の中で活かしていく。これって大切よね!」
「俺たちの小さな声や笑顔が、誰かの心に希望を与え、変化を起こすきっかけになるかもしれない。氏の演説の熱量と情熱を引き継ぎ、広めていこう!俺たちは彼の言葉の魔術を持ち続け、自分たちの声で世界を少しずつ変えていけるんだよ!新たな挑戦に立ち向かっていけるんだよ!」
この自己洗脳物語、いつまで続んだ?
―軍司令官執務室
ガチャ
「あ、おかえりなさい」
「よう、お前らおれ様の演説、聞いてたか?」
「庁舎の中まで聞こえましたよ。やっぱり戦士の方はあんな大声出せるんですね。尊敬しちゃいますよ」
ちっとも尊敬していない顔だが、まあいい。
「これでおれの地位も安泰だな」
「ホントに?」
「あの盛り上がり、決まりだろ」
「なら、占ってあげましょか」
「いやいい」
「遠慮」
「遠慮なんかしてない。さっきお前ともう一人のお喋りを聞いたし」
「アラ、聞いてたんですね。どう思いました?」
「あれほど空虚なお喋り、久々だったぜ」
「ふんふん。それで?」
「それで?ってまあ、微妙に最悪な気分になった」
「そう言わないであげてください。彼はほら、テロの件で怪我して、療養所も一杯でこっちに来て、不運だと落ち込んでて、そこにあの演説を聴いて高ぶっちゃってるんですよ。ああやって発散させてあげるのが優しさなんです」
「……」
「?」
「なるほど」
そういう事情もあるのか。このお喋り女、曲者だなあ。
「本当はただ喋りたいだけだろ」
「それもあります」
「なら、次はお喋り女を採用してやろう」
「あーそれは無理、ですね」
「なんで?」
「私の占いによると……」
「またかい」
「募集しても人は来ないですよ」
「なんで!」
「族長会議が閣下に敵対している以上、部族長の娘たちが送り込まれる余地がないでしょ」
「な、なんのことかな?」
耳聡い。
「入れ違いかもですが、さっき城壁隊長が告示を貼りに来てました。それに書いてありました」
「あ、なるほどね」
権威に従順な野郎だ。
「貼り紙剥がしましょうか?」
「そのままでいいよ」
「フェアプレー精神ですか」【青】
「どうせ剥がしてもイタチごっこ。無意味なことはしなくていい」
「そうかもですね」
「話を戻すが、この都市の女たちメインで選ぶか。おれ様の演説の最後聴いたろ?」
因縁女は呆れ顔だ。
「戦争が近いっていう今、手を上げる女なんかいませんよ。この都市の女たちはみんな堅実ですから」
「ムムムム」
「まあ、しばらくは私たち三人が、軍司令官閣下、のお世話をしますから。そんなに心配することないですよ」
「お前らの実家は大丈夫か?」
「アリアやエリシアじゃないし?それほど有力な族ではありませんし?あっ、でも私たちに実家へ兵士だせって言わせるのは無しですよ」
「当てにしちゃいないよ」
「ここは嘘でも当てにしている、と言うべきところなのに」【黄】
「フェアプレー精神だよ。そうだ、さっきのようなお喋りは他の連中にもぜひして欲しい」
「不快だったのでは?」
「あいつ、軍隊に志願してくるかもしれないだろ」
「さては結構話を聞いてましたね?」
「頭数は多い方がいいからなあ。来ればおれが直々にトサカ頭に刈り込んでやると伝えてくれ」
「成功したら、勧誘の報酬を頂けますか?」
「成功して、申告があればな」
「フフフ、私の占いによれば」【黄】
「成功するか?」
「さあ」
「自分のことだ。ワカるだろ?」
「内緒です」
「……まいっか」