第61話 上司の男/後背の女
「あの野郎が幸せになるには数多くの難関を突破せにゃならん、ふへへへ。さて、そろそろかな」
「集落前の川岸が見えてきました。集合地点はあすこのはずで……あれ?先頭が川を渡ってら」
「え?予定より早いぞ」
「おかしいな……でも俺目良いんですよ。間違いねえです」
その時、
「タクロ君、聞いてください」
女宰相からの声が脳裏に響く。彼女の声色の妙に詰まった荘厳具合になんだか叱られているような気持ちになる。その内容に、
「え。ナチュアリヒ、集落、攻めてる、商品を使って!?」
声が思わず裏返った。
「ワワワ、予定と全然違うじゃないすか」
ちゃんと拾うはさすが組長。いやいやしかし!
「ああクソ、バカなことしやがって。神懸かった営業集金作戦が……お、おれは先に追い付く、お前は隊をまとめて川渡れ!補給隊は予定通りで良いから!」
「承知!」
嫌な予感がする。女宰相の言う通り、人選ミスだったんか?それとも因縁女の言った、油断すんなってこのことか?最前線へ急がねば。
途中、川の手前でゆったり待機しているトサカ頭どもの群れを捕捉。
「あ、隊長」
傷心エルリヒの野郎がいない。
「お、お前らの組長は?」
「向こうの組長んトコ行ってますぜ、だいぶ前から」
「だいぶ前?ハハ、今は寂しい時期だからって?」
「ワワワワワ、どうなんでしょうねえ」【黄】
「まあいい。おいお前」
「へい」
「組を率いてすぐ川を渡れ。予定変更だ。川を渡るべし。何が何でも渡るべしだ。油断するなよ」
「な、なんかあったんすか?」
「演習とは言え気を抜くなってこった」
「しょ、承知」
河川合流地点前の上流の川を渡る。水はきれいだが流れがやや強い。大きな石もコロコロしているため、お馬はヒョコヒョコ間抜け歩行。見れば先頭連中すでに集落の柵や壁に取り掛かり始めているゾ。ええっとナチュアリヒの野郎は……いた。
「おい」
「隊長」【青】
む、コイツ張り詰めた顔しやがって。どうしたんだろ。
「い、言い訳を聞いてやる」
「連中が戦死すれば、二度と帰って来ないでしょ」
「そ、それで?」
「終わりです」
「そ、それだけ?」
「十分でしょ」
「それだけ!話になるかこのアホ!」
「あ、あんたはどうなんだよ」【青】
「軍司令官様だよ!臨時の!」
「ニセモノの、でしょうが!」
ニ、ニセ……うーむ、こんなヤツだったろうか?
「……誰に何を吹き込まれた」
「ハッ、あんた俺を馬鹿にしてるだろ。自分で考える頭が無いって?」【青】
「ああもういい……エルリヒはどこだ」
「その辺で寝てますよ」
「……まさか殺ったんか?」
「なんで!殺ってませんよ。殺りません」【青】
「タクロ君」
「おっと」
脳裏に流れるは、やはり彼女にしては少し詰まった声。
「あなたは選択するしかありません。取引相手である翼人を守るか、思い切って流れに乗り集落を殲滅して財産を奪うか」
女宰相からの血も涙も無いアドバイスだが今のおれには全くもって無意味だ。
「すでに約束してる以上、迷う必要なし、おらっ!」
「ぐえ!」
おれの馬上中パンチにより、ナチュ公はそのまま倒れた。と同時にエルリヒ組が追いついてきた。コイツらに状況を説明せにゃ。
「犯罪者集団が暴動を起こし、集落を攻撃し始めている」
「はっ!?」
驚き顔の連中、素人を戦場に出すから、とか誰があいつらを連れてきた、とか深く考えさせてはダメだ。ここは蛮斧式に、ぶっ殺せ、が正解だがさらに一つだけ命令を足してやる。すなわち、
「おれたちは取引先を守る。以上だ」
「ま、守る?」
「なんだよ」
「馴染みがない言葉なもんで」
「意味をコイツに聞いてみるか?」
ゴールデン手斧を掲げると、首を竦める蛮斧戦士。文句は出ないよかったぜ。さらに、
「タクロ君、もう攻撃は始まっています。今更翼人の信頼を回復はできないかもしれません」
女宰相のネガティブ連絡が続く。うーん、彼女やっぱり逆境には弱いのかな……澄ました女の詰まった弱気にそそられるぜじゅるじゅるとよだれを垂らしている場合じゃない。
「あーなんだ。翼人はリーダーさえ生き残れば説得はできる。大丈夫だ。と言うわけで集落を囲む。極悪小隊の連中を見つけたら問答無用で攻撃だ!くれぐれも翼人には絶対に手を出すなよ!この場合、守るということは、カネを守るということなんだぞ!カネ、カネ、カネ!」
「はあ」
「んだその返事は!ぶっ叩くぞ!」
「はひ!」
上空から観察する私の目線からも、その後のタクロの統率は思いの外、上手く行っている。困惑する蛮斧戦士に対し、
「犯罪者集団を叩きのめせ!生死は問わない!」
「集落を守れ!翼人を守れ!文句は許さん!あれはカネなんだ!」
「走れ走れ走れ!軍司令官様がここで見てるんだ!良い働きにはカネでもなんでも報いてやる!行け行け行け!」
と欲望を煽る鼓舞を続け、自身も斧を振るってそれを示す。
「この裏切り犯罪者ども!」
「ぎゃあ!」
「悪あがきは終わりだ!」
「ぎゃあ!」
「翼人に手を掛けたヤツは死刑だ!死刑死刑!」
「ま、まだ掛けてません!」
「よーし、大人しくしてろよ」
手鎖が外されたばかりの囚人と功績に飢えた蛮斧戦士では、行動力の差は圧倒的となる。結果、翼人の集落にいくらかの被害は出たものの、取引相手側に死者を出す事なく不祥事を鎮圧することに成功した。
「あんたが買い手のホッシ・オケツか」
「ホシロケトです。とりあえず説明を求めます。一体何が起こったのですか?」【青】
ちょっとした手違いで暴動になったが鎮圧済みだ、とも言い難い。蛮斧式に適当で行こう。
「ええと、商品説明が必要かと思って」
「ウチの拠点の外壁やら門やらに被害が」
「商品説明だ」
「まるで鎮圧された暴動のようですが」
「しょ、商品説明だ」
「なるほど。それで商品はどれだけ残っていますか?」
「半分ちょっと」
「なら約束の代金は見積額の四分の一でどうでしょう」
「……」
コイツの言い分はきっと正しいんだろう。が、それでは額が足りずおれが破滅する。
「商品説明が足りてなかったかな?仕方ない、おーい、あいつらの手鎖を」
「待ってください。では三分の一で」
「おいおい。わざわざ商品に値するヤツらを選抜してやったんだぜ。商品を精製したのさ、蛮斧式にだがな」
「しかたない。二分の一で手を打ちましょう」
「あんた、蛮斧世界にツテは?」
「ボチボチです。それにまあ、新規先としてあなたがいますね」
「なら、おれとは仲良くしておいた方が良い。おれは、あの、光曜境を攻め落とした一人だ」
「なんと、あの」
「そう。あの。それに恩義は忘れない性なんだぜ」
「蛮斧式に?」
「狭間に生きる者式に」
「……」【黄】
「……」
「なるほど。では四分の三お支払いします。キッチリとね」
この野郎……が、ここいらが良いとこかな。
「なら残りの四分の一はおれが個人的にあんたに貸し付ける。運用して利益が出たらウチの世話をするように。どうだい?」
「……ウン、それでいいでしょう。取引成立、契約書を用意しますから少々お待ち下さい」【黄】
「ウチの極悪小隊をよろしくな。せいぜいコキ使ってくれ」
交渉も済んで、改めて目の前の翼人を値踏みしてみる。買い手の翼人男は集落の長でもあるらしいが、蛮斧男に比べれば実に小柄、服の下に羽を隠しているようでも、こんな小さな連中に売られた人間の屈辱は大きかろう……おれも恨みを買ったかな?
「ところで、蛮斧の軍司令官殿。ここは小さな集落ですが、我ら翼人もあなたがたの食事の世話くらいは出来ますよ」
有り難い申し出だが、納品は終わった。それに蛮斧戦士は差別大好き人間だ。検収に伴うイチャモンが発生する前にとっとと撤収したい。
「これからすぐに出発するからいらん」
「もうお帰りで?」
「今回はな。ほら、例の霧あるだろ。その際のキワを進軍する。現地調査だな」
「ああ、例の迷惑な霧ですな」
本当に迷惑そうな顔をしている。
「空飛ぶおたくらにゃ恵みの霧だろ?」
「運搬の引き合いが増えたのも事実ですが、危険も多く、真の恵みとはとても言えません」
「危険?」
「霧のせいで迷う者多く……」
「だからあんたたちは上を飛べばいいじゃないか」
「そう。だから救援依頼などもあるので」
「へえ、上から迷子を捜索するってことか」
「その通りです」
色々な仕事があるもんだ。
「しかし我らの生業は荷運びであって、身体の大きなニンゲンを運ぶのは不慣れ。捜索ともなると危険も多いのです。大した売上にもならない上に断れない」
「ほーん、依頼者は?」
「もちろん光曜人です」
あ、こりゃまずい。というか考えるまでもなく、ここは光曜領内に属するから愚問だったな。アホだと思われない内に、手を打とう。
「それ、蛮斧人のおれからも依頼したい。いいか?」
「発見の保証はできません。それでよければ」
「構わん。先の戦い、つまり光曜境戦の後、蛮斧の軍人が霧の中から帰ってきてない。それも隊単位でだ」
「それは……もう一月前でしょ、厳しいのでは?」
「まあな。だが連中も葬式と墓ぐらいは欲しいだろうし。終焉の地が見つかったら知らせて欲しいんだ。報酬はさっきの四分の一から取ってくれ」
「承知しました。前線都市の軍司令官閣下」【黄】
「……お、おう?」
「私は閣下のことを気に入りましたよ。話がワカるというのは本当に素晴らしいことなのです。今後何かあればお気軽にご相談下さい」
「ホント?」
「ええ」
「そんならもう一つ追加の依頼がある。なに、簡単な依頼だし、報酬も払う」
「伺いましょう」
……というわけで一件落着。クズどもを売り飛ばして、カネも手に入った。アドミンによると、本当に気に入られたようだし。一石三鳥とはまさにこのこと。
「隊長お疲れ様です。いかがでした?」
「上首尾!カネの目処が着いた!」
「おお!」
「それよりあの翼人に閣下と呼ばれて自分のこととはすぐにワカらんかったぜ」
「俺があれだけ連呼したのに」
「お前らのはお戯れだからな」
「そればっかじゃないでしょうが……なに、隊長ならすぐ慣れますよ」
「だといいけどな。よし、じゃあこれからが本番だ。千年河の右岸、すなわち光曜領を霧沿いに進軍するぞ。目的地は前線都市の対岸だ。ここから先は光曜兵が出てくることもあるかもな」
「えっ、あるんですか?あの霧ですよ、無いでしょ」
「ともかく気合いれろよ!」
「承知!……と行きたいとこですが隊長、ナチュアリヒをどうしますか?」
「どうって……」
「……」
「まあ、反省させる」
「あの、我ら蛮斧戦士、上官に対する命令不服従はその……」
「言わなくていい言わなくていい。でもんなことはできねえ。ヤツの組についてはとりあえずお前が指揮を取ってくれ」
「承知」【黄】
はしはし働くトサカ頭と入れ替わりで、情けないトサカ野郎が入ってくる。
「痛ててて」
「エルリヒ君。この体たらくはなんだ?」
「いや、良く覚えてないけど……なんかすんません」
「落馬して頭打ったのか?」
「どうだったっけ……思い出せねえなあ」
「あいつと何を話してた?」
「なんだろ。美味い焼き鳥の話とかかも」
「ああ、もういい。適当に休んでろ」
「うす」
不意に一人になると、なにやら鳥が近づいてきた。女宰相の使いだろう。
「タクロ君」
「やっぱりな」
「?」
「いいえ、なんでも。しかし会話もできるんすね」
「これならば。しかし他の人にも聞こえますので、小さく伝えます」
鳥の口は動いていない。どういう仕組みだろう。彼女の魔術は謎が深い。
―千年河右岸
そんなことがあった後も、タクロ勢は演習を無事継続中。
「というわけです」
「ふん」
ナチュアリヒが抱いた不満についてタクロに解説してやるが、反応が鈍い。この事案は、組長が、光曜で言うところの司法手続き、つまり犯罪者への極刑を求めていたこと。それが蔑ろにされたことへの不満。さらには臨時の軍司令官職就任への反発。中々に重い。すなわち、
「インエクを用いて従わせるべきです」
「ダメです。野郎はおれの部下だ」
青く、甘い。
「それに、軍司令官の野郎も下の女たちに使ってなかった」
なるほど。そういう感情か。
「ならば、軍からの放逐ですか?」
「まあ最悪は……」
「あなたに危害を加える勢力と合流するかも?」
「……」
「……」
「説得するしかないな」
思想や理念が異なるのだ。心服統御が効く相手ではないのだが。
「ま、今は馬車で寝っ転がっている。起きたら話しますよ」
「……ワカりました」
ナチュアリヒはまだ目を覚ましていないが、ここは一つ手を打っておこう。寝息を立てるナチュアリヒの胸上に降り立った鳥が、衝力を伝える。
「ぐ!ぐぐぐ……ぐうぐう」
これで彼の眠りはさらに深くなった。しばらくは目を覚ますまい。
夜。霧沿いを無事進行してきたタクロ勢は、河と霧に挟まれた地で休息を取る。
「ナチュアリヒの野郎は?」
「まだ寝てますよ。イビキかいてます」
「あんにゃろう」
「ところで夜が明けたら、霧の中に入りますか」
「もちろんだ」
「俺一度迷ってんですよね……」
「あん時、霧を調査するって約束しちまったからな。公約ってヤツだ」
不安げなヘルツリヒを、笑顔でからかうタクロ。
「お前、言うほどビビってないだろ?」
「どうかなあ」
「トラウマ解消、準備はバッチリ、ほれ」
「補給隊に持たせてるロープですか?」
「それだけじゃないぞ。チミ、霧を払うには何が必要だと思う?」
「さあ?」
「火だよ!ファイア!たくさん燃やせば霧が消えるだろ」
「え、そうなんですか?」
「そう!たぶん」
「知らんかったです」
その知識は正しいと言えるが、霧は発生し続けているから、局所的かつ一時的なものに留まるだろう。それにしてもこの知識といい、先般有毒木を燃やして毒煙を撒いたりと、タクロは火に親しい。性格も火のように苛烈であればもっと上手くいくだろうに。
「まあ、命綱はあるんだ。霧と戯れて来るといい。ヘルツリヒ君」
「やっぱり俺ですか!」
「お前だけじゃない。お前の組からの選抜でだ」
「俺たちだけ?み、みんな嫌がりますよ」
「大丈夫。なんといっても組長がこの霧の経験者だからなあ」
「そんなあ。ちっとも良くない経験でしょ……」
「いや、おれはあの時のお前の顔を覚えている。頼もしさを感じたぜ」
部下の説得を続けついに納得させる上司の姿、タクロもしっかり上役をしているのだ。我が身と比して見ると、僅かながら恥の自覚を得る。
私はと言えば、この国境の町に身をおいたまま、安全な部屋所にてタクロを眺めているだけというのに。。
この気持ちを解消する為にも、せめて支援は行わねば。蛮斧勢の休憩地周辺に、光曜勢の存在は無い。日が昇るまで、私もしばしの休息をとる。
そして朝。天気は曇り。霧は満ちている。
「さあ、行ってこい!」
「へい……おらお前ら行くぞ」
「組長元気ないすね」
「うるせえなあ」
「ちゃんと火を熾して来るんだぜ。上から翼人が観察してるから」
「翼人?」
「良い機会だからな。昨日調査協力の依頼をしたんだ。霧が消えたら上からどう見えるのか」
「へえ……」【青】
「だから安心して行ってこい。上と後からサポートがあるんだ」
「承ー知」
ヘルツリヒ組が霧の中に足を踏み入れてからしばらくして命綱が張りつめた。
「来た!」
「行ったなヘルツリヒのヤツ。今頃、火を付けてるんすね」
「ああ」
私も上空から観察する。ヘルツリヒ組が燃料付木組に強い火を熾している風景がよく見える一方、他の場所は霧が深すぎて何も見えない。そして上空付近に翼人が二人おり、一人がタクロへ報告のため下降した。
「どうも」
「オケッツさんの部下かい?」
「はい。業務連絡です。火が熾きている場所だけですが、上から良く見えます。霧が消えてました」
「おお!」
「隊長すげえ?」
「ふっふっふっ、まあこんなもんだよ」
タクロは手を打ち喜色満面だが、他の蛮斧戦士は良くワカらない顔で愛想打ちをしている。翼人は続ける。
「まあ、霧も濃いので、火が消えれば霧に埋め尽くされそうな印象ですが」
「まあそうだろうなあ」
「霧を完全に消すには、発生源を探して塞がねばならないでしょう」
「よくワカった。ありがとよ。引き続きよろしくな」
翼人が空に戻っていく。羽ばたきを見つめる蛮斧戦士の表情には、感心と愉快ではない感情が同居している。蛮斧人の野蛮な差別意識、見なければワカらない機微があった。
その後ややあって、ヘルツリヒ組が戻ってきた。
「お疲れ。上からは良く見えてたらしいぜ。で、どんなだった?」
「いや、まあ普通の霧ですね。命綱があればみんな迷わないし、何とも無いっちゃ無いです」
戦士達に向き直ったタクロは拳を振るって曰く、
「ということで、これはただの霧と判明した。恐るるに足らずだ!」
「隊長すごいや?」
予想より鈍い反応に、タクロはさらに熱を込めて檄を飛ばす。
「光曜なんか怖くない!前線都市に帰ったらこれは単なる霧だ、と言ってやろうぜ」
「……」
鈍反応に斧を構えるタクロ。
「言え、言うんだ!」
「ワ、ワワワワ」
「そんじゃあ次は光曜境まで行くぞ!」
「え!完全に霧の中ですよ」
さすがに無謀のようにも思えるが、
「もちろん岸のこっち側をもっと進んだ地点でやるよ。で、霧の境界地に補給隊の拠点を置けば、そこから命綱と松明で最短距離を進めるじゃねえか。光曜境の現状を確認して……どうせ誰もいないだろうが、改めて蛮斧の旗を掲げて戻るんだ。終わったらそのまま河を越えて前線都市へ帰還する。文句あるヤツは?」
「……」
少し強めに言い切ったタクロが凄んで見せると、全員文句を飲み込んだ。
「お前らだってせっかく攻め落とした光曜境がどうなってるか、気になるだろうが。お前らが奪った町だぜ!」
「まあそりゃあ」
「確認したら終わり。そして戻ったら昇給だぞ!」
「そうだそうだった!」
「昇給!昇給!」
「従わないって?」
「従います!」
「文句は?」
「ありません!ワワワ」
「よし!行くぞー!」
タクロは部下の士気を巧みに鼓舞する。きっと、彼の目には黄色の反応が溢れているだろう。このまま想定外の邪魔が入らなければ、この演習は無事に終了し、彼の権力基盤も固まる。私も上空からの監視の範囲をより広げ、警戒を強めるとしよう。