式神
不思議な気配を感じて振り返ると、そこには白い靄があった。
5月のある日、私は友人と二人で五芒星で有名な神社へと向かった。
バスの周遊チケットを買い行列に並び満員のバスの中に乗り込んだ。
「やっぱり人が多いなぁ」
「有名なんだから当たり前よぉ、それにぃこの時期にしか売ってないお守りもあるって言うし」
「へー」
バスに揺られて暫くして目的の神社についた。
ザワザワザワ
あまりの人の多さに驚いていると
「何やってんのよ行くよ」
と友人が入っていった。
慌てて付いていくと、横に小さな橋がかかっている。その橋のたもとに石像らしきものが…
思わず立ち止まると、友人が早く来いと手招きをしていた。
私は気になりつつ境内へ入っていった。
お参りを済ませた友人は早速お守りを買いに行った。
私はあまりの人の多さに後で買うと言い、境内にある桃の像を撫でたあと、大勢が取り巻いている触れていい木に触れた。
あれ?この木疲れてる?
その木からは少し干からびたような何かを感じた。
友人がやってきてその木に触り
「これがパワーをくれる木なのね」
と言うので
「今はないと思う、だって疲れてるから」
と言うと友人は不思議そうな顔をして
「また変なこと言うよね。はいはいわかりましたよ」
と言って木から離れた。
私もお守りを買い、次の神社へ向かう前に出口にあるショップに入った。
「これ桃の練り香水だ」
すごく気に入った私はすぐさまそれを買った。
友人はパワーストーンを買おうか悩んでいたが
「次も行くし…」
珍しく我慢したようだった。
そんな友人にさっき買った練り香水を一つわたした。
「良いの?」
「うん魔除けになるかもね」
「またぁ適当なんだから」
と言うので本当かもよと言った。
確かにその時までは深い意味はなかった。
ショップから出るとすぐ前に最初に見た小さな橋がかかっている。
私は導かれるようにその橋を渡った。
ん?誰か見てる?
振り返った私を、後ろに立っていた友人か驚いて見ていた。
最後の鳥居を出ると突然足元で
パキン
と金属音がした。
「今何かなったよね、高い音したよね」
「え?」
何度聞いても友人には聞こえなかったと言うのだ。
私は首をひねりながら
確かになったのに…
と思いながら次の神社に向かった。
そこで友人がしきりにのどが渇いたと言うので、参拝したあと休憩所でジュースを買った。
友人はすごく美味しそうに飲んでいる。
私ものどが渇いたな
ジュースを買い座り飲んでいると友人が
「もう帰らないと」
と言ったが帰るにはまだ早い。
「買い物してから帰ろうよ」
と言うと友人は
「ああ、買い物…そうだね」
いつもとは違うふわふわした話し方に戸惑いながら
「大丈夫?」
と聞くと友人はスタスタとあるき出した。
私は慌てて付いていきバスに乗り込み駅へと向かった。
最寄り駅につき友人と別れ家に帰った。
紅茶を入れソファーに座りテレビを見ていたがふと気になり友人に電話をかけた。
「もしもし、無事に帰り着いた?」
「うん…」
歯切れの悪い友人の言葉に
「どうかした?」
と言うと
「あのさぁ、私どうやって帰ってきたの?」
と聞かれ唖然とした。
「記憶が…途中から無くって…多分最初の神社から出たあと」
私はあの音を思い出した。
ふと視線を感じ廊下をみると
白い靄が…
「ひっ」
「どうしたの?」
私の変な声を聞いた友人が心配して声をかけた。
「何か連れてきたのかも…」
「えええ」
「大丈夫、今の所何もしてこないし」
「だと良いけどさぁ」
「また電話するね」
「うん」
友人との電話を切り振り返るとまだそこに白い靄が。
その白い靄からは嫌な気は感じないが、初めての事で私は戸惑っていた。
霊感などないはずなのに…
もしかして霊ではないとか…
自体が飲み込めずにいたその時、画面に今日行った神社がうつった。
なんなの?このリアルタイム感は
ここ通った通った
と楽しくその番組を見ていた私は目が釘付けになった。
あーあれよあれだ
画面にうつったそれは式神の石像だった。
私はすぐさま白い靄に向かい
「なんで私に付いてきたの?ちゃんと帰れるの?」
そう白い靄に声をかけると白い靄は
にへら
と笑ったように見えた。
そして
なんじ、ゆめゆめ忘れるな
これから何があろうとも全ては無に帰る
と音にならない声がした気がした。
そして白い靄は消えて行った。
何があろうとも全ては無に帰る
それがなんの意味なのかは分からない私は
夢よこれは夢なんだ
気の迷いなんだ
そう思っていた。
それから3年後、私は大阪に向かう高速バスの中にいた。
本当ならもう一本早い便に乗る予定だったが、予定が狂いあとの便になった。
それも良いか
と思っていたとき突然アナウンスが流れた。
「この先で事故がおこり…」
バスが遅れると言うのだ。
今更一時間遅れようが構わないし
それに、もしもう一本早い便だったら巻き込まれていたかもしれないんだから
そう言えば3年前の神社からの帰り道にも事故に巻き込まれたよなぁ
怖い怖い
と思い出し身震いをした。
暫くして私はウトウトと眠りについた。
白い靄が見える
あれは確か…
ゆめゆめ忘れるな
全ては無に帰る
お前の命は…
そこで私は目が覚めた。
今のは何だったのか…
それに私の命はって…
そこで私は思い出した。
私の命は…じゃあ今の私は?
突然、私の体は白い靄に包まれた。
ゆめゆめ忘れるな
全ては無に帰る…