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「シエラ?何かあった?」
執務室から戻ってきたシエラは、一心不乱になって仕事をこなした。
あまりにも鬼気迫る様子のシエラに、心配になったルーが声をかけるが、シエラはそのことに全く気付かない。
(自分の甘さが嫌になる。リスクに関してはもちろん、考えてなかったわけじゃない。けど、ジェルマさんに突っ込まれたところは完全に抜けてた。冒険者として、死ぬかもしれないことしか考えてなかった…!)
ジェルマの言葉を思い出し、思わず机にドン!と突っ伏すシエラ。
ルーは突然のシエラの様子に思わずビクッと肩を震わせた。
「し、シエラぁー??」
声をかけるが、やはり反応はない。
(コーカス達がついてる以上、スミレちゃんが死ぬ確率は、限りなく低かった。でも、相手は魔物たちだけとは限らない。もし、悪人に遭遇したら?わかりやすい盗賊なんかならまだしも、人のよさそうな顔して寄ってくる輩だっているんだ。そういうのに、万が一、スミレちゃんが騙されたりしたら?)
ガバっと勢いよく顔を上げる。
「きゃぁ!」
心配になったルーが、シエラに手を伸ばしたところだったので、思わずルーは叫び、そのまま尻もちをついた。
「ん?ルー?どうしたの、大丈夫?」
きょとんとした顔でルーを見るシエラ。はい、と伸ばした手をルーは見つめると、思いきりシエラを睨んだ。
「大丈夫って、それはこっちのセリフよ!戻ってきたと思ったら昼休憩もとらずに仕事してるし、顔は怖いし。声かけても反応はないし」
「え?」
ルーに言われて、シエラは思わず壁にかかった時計を見て絶句する。
「う、うそ、もう14時!?」
「まさか、気づいてなかったの!?」
立ち上がってパンパン、とスカートの埃を払っていたルーは、呆れ顔になる。
「もう、とっととお昼食べてきなさいよ!もう少ししたら、報告に戻ってくるパーティーだっているだろうし。何があったのか知らないけど、ちゃんといつも通り、笑顔で接客できるようになんなさいよ!」
バシン、と背中を叩かれて、シエラは思わず痛い!と叫ぶ。
「思い立ったら即行動、でしょ?悩むなんて、シエラらしくないわよ!」
「ちょっと!?私だって悩んだりくらいするわよ!?」
思わず反論するシエラに、ルーは苦笑した。
「言い返せるくらいの元気があるなら心配いらないわね?この世の終わり、みたいな顔して何を悩んでるのかは知らないけど、まだ世界は滅んでなんかいないんだから。生きてたらいくらでも挽回できるし、何とかなるものよ?ほら、まずはさっさとお昼ご飯食べてきなさい」
カウンターから追い出されたシエラは、一瞬、呆然とその場に立ち尽くすも、ルーなりに励ましてくれてるのかな?と思い、ありがとう、とだけ言って、隣の食堂へと走っていった。
そんな様子のシエラを見て、少しはましな顔になったかな?とルーは苦笑した。
「全く…普段は思い立ったらすぐ行動なくせに。それに、結果はどうだったとしても、決してそれを途中で投げ出すことなんてしないんだから、悩むだけ時間がもったいないわよ?」
いなくなったシエラに向かって、ルーは小さく呟いた。




