コミュニケーションって大事ですよね-3
「はいよ、エールに野菜盛り、お待ちどう。それで、料理はどうする?」
「そうだな、料理は適当にお勧めを2・3品、とりあえず持ってきてくれ」
「はいよ!」
(ちょっと待て。なんでこうなった)
シエラは、エールを目の前に置かれて、ハッと意識を覚醒させる。
「それじゃ飲もうぜ!カンパーイ!」
ニュークが音頭をとると、3人と2羽はガチャっとコップをぶつけ合った。
「…え、ちょっと待って。あの短時間で何があったの?てか、なんでこんなに仲良くなってんの??」
混乱するシエラに、ハルがくすくすと笑いながらなんでだろうねと答えた。
ギルドで何とか声をかけたところまではよかったのだが、そのまま解散して寮に帰ろうと思っていたシエラは、エディが持っていた寮でコッカトリスを飼う承認証明書を盾に、そのまま近くの居酒屋へと連行されていた。
「それにしても、ボル…エディ様、妙に気安い感じになられましたね」
居酒屋につくまでの間に、シエラはエディに、ボルトン卿ではなく、エディと呼ぶように言われていたのを思い出し、慌てて訂正して言った。そんなシエラに、エディは苦笑しながら答える。
「もともと、堅っ苦しいのは苦手なんだ。それに、今回こっちに来てるのはお忍びだからな。正直なところ、様もつけないでもらえると助かるんだが」
エディの言葉に、シエラは顔を引きつらせる。
「私に、死ね、と仰るのですか?」
現国王の王弟に当たるショーン・ボルトン公爵の嫡男であるエディ・ボルトン。王位継承順位は低いが、立派な王位継承権を持っている。傍系とは言え、立派な王族の一員である。一般庶民のシエラが下手なことをすれば、不敬罪あっさり(物理的に)首が飛ぶことだってありうるのだ。
シエラの言葉に、ニュークが笑った。
「いやー、シエラは面白いな!でもよ、そんなにこいつに気を使わなくても大丈夫だぜ?」
ポンポンとエディの肩を叩くニュークに、シエラはジト目を向ける。
「…ニューク様は、もう少し、エディ様への態度を改められた方がいいかと思いますよ?というか、私、不敬罪なんかで死にたくありません。それに、言うのであれば、それはエディ様のセリフでは?」
「そうだそうだ、もっと言ってやれ!ニュークは俺の護衛なんだから、もう少し、俺のことをたててもいいと思うぞ!」
エディがシエラの肩を持つ。その様子に、ハルがククっと笑う。
「正直なところ、僕らは小さいころから一緒に育ってきたから、付き合いの長い人や、他に人がいないときはこうしてくだけた感じなんだよね。ただ、ニュークに関しては、時々、面倒な人の前でも素を出しちゃうことがあるから、困るんだけど」
「面倒なことだな、人の世と言うのは。まぁ、そんなことはどうでもいい。野菜盛り、追加だ」
ケプ、と小さくゲップをしつつ、空のお皿をコーカスが差し出してきた。
シエラは、はや!と驚きつつ、近くを通った店のおばちゃんに、お替りをお願いする。
「そういえば、シエラがコーカス達をマイスでテイムした、と言ってたんだが、本当なのか?」
エディが聞くと、トーカスがそんなわけないだろう!と怒った。
「あ、やっぱりそうだよな?それじゃどうやっ」
「俺は、シエラの騎士だからな!傍にいる必要があるから、契約してやったんだよ」
「「「は?」」」
食い気味に答えたトーカスに、男性陣は意味が分からず思わず大きな声を出す。シエラは机に突っ伏した。
「ちょちょ。と、トーカス、さん??」
急に何言いだすんだ、と思ったら、うっとりとした瞳で、トーカスは続けた。
「シエラは俺が一人前のコッカトリスに成長するための経験値を持ってきてくれたんだ。おかげで俺は、一晩で物凄く成長し、父上と同じように、言葉を操れるまでに成長した。恩人であるシエラのために、俺は、シエラの騎士になると誓ったんだ!」
「…いやいやいや、そもそも、報酬のマイスを自分で見たいけど、街中でテイムされてない状態じゃうろつけないからっていう理由だったでしょうが。なに、美談みたいな感じで語ってるのよ」
呆れ顔にシエラに、トーカスはむっとする。
「何を言っている。俺は言っただろうが、シエラの騎士になる、と」
「…え?いや、あれ…え?冗談だったんじゃ…」
確かに、言っていたけれども、とシエラは首を振る。
「いや、あんな突然、意味わかんないこと言いだしたから、どうしたのかとは思ってたけど…え、まさか、本気だったの!?」
驚いて目を丸くするシエラ。
「騎士として認められるまでの道のりは、まだまだ遠いようだな、トーカス」
目の前に置かれた新しい野菜盛りを優雅に食べながら、コーカスはココッと笑った。




