呼び出しっていくつになっても嫌ですよね-3
「先日、第1ギルド所属の冒険者が、コッカトリスの卵をビッグ・ドードーの卵と勘違いして巣から持ち帰ってきてしまいまして」
「なに?」
シエラの言葉に、エディの眉がピクリと上がる。
「ギルドマスターのジェルマと、担当受付嬢である私の2名で、コッカトリスの卵を返しに行き、条件付きではありましたが、何とか怒りは収まりまして。その後も、ゴブリンの集落の殲滅等々で縁もあり、卵の主であったコッカトリスと、無事に羽化して生まれたコッカトリスの2羽が、現在、私とテイム契約を結んでいる、という状態です」
「…なんなんだその奇妙な縁は」
そういわれてもなーと、シエラは苦笑いを浮かべる。
「ところで、どうやってテイム契約をしたんだい?確認したが、君はテイムのスキルは確か、保有していないはずだろう?」
(やっぱりそこ、聞かれますよねー…)
「な、それでテイム契約などで、できるはずがないだろう!」
クロードの言葉に驚くエディ。
シエラは腹をくくり、真剣な顔で答える。
「ですので、それについては申請書に記載した通りです。マイスを与えたところ、コッカトリスから、マイスを餌として提供する代わりに、契約を結んでやる、ということで、テイム契約を行っております」
『は?』
ぽかんとなる二人に、シエラは心の中で泣き叫ぶ。
(わかってるわよ、そんな顔になることくらい!ていうか、私の言ってることが相当おかしいってことだってわかってますとも!!だから、説明したくなかったのにー!)
「通常、魔獣と契約を行うためには、契約者である人間に、テイムのスキルがなければ契約を行うこと自体出来ません。ですが、コッカトリスによると、こちら側のスキルや意思に関係なく、あちら側がテイム契約、要は、主従関係に関して納得したうえで仕えることを承認しさえすれば、テイム契約ができるそうでして。その結果、私は現在、その2羽と契約を結んでいる状態となっております。これが、その証拠です」
シエラはそう言って、自身のスキルボードを二人に提示した。
そこには、従魔の欄ができていて、コッカトリス(コーカス)、コッカトリス(トーカス)と記されていた。
「ちなみに、こちらが私の保有スキル内容です。見られて困るようなものでもないので、どうぞお確かめください」
そういって、スキルボードの表示をオンに切り替えて、二人に見せる。
鑑定Lv 10
真贋Lv 10
複写Lv 10
マッピングLv 8
千里眼Lv 5
索敵Lv 8
隠密Lv 3
「残念ながら、テイムのスキルは相変わらず保有していないので、他に従魔を増やす、ということはできませんが、2羽の保護者(?)ではありますので、ちゃんと迷惑をおかけしないように気をつけます。なので、どうか寮で2羽を飼うことを承認していただけ」
「おいおい、お前、ほんとにギルドの受付嬢なのか!?」
人が喋ってるところを遮るとか、なんだおい、と思わずシエラは顔をしかめた。
「受付嬢ですよ?」
それが何か?と言わんばかりのシエラに対し、エディは思わず目を見開いた。
「おま、だっ…だって、お前、まだ19なんだろう!?なのに、鑑定と真贋のLvがマックスだと!?千里眼にマッピングに索敵まで高レベル、おまけに、隠密スキルまで持ってるとか、どういうことだよ!」
ビシっとスキル欄を指さして聞いてくるエディに、シエラはきょとんとする。
「…え?いや、受付嬢として仕事してたら身に付いただけのスキルですよ?」
てっきり、テイムのスキルが記載されていないことを言っているのだと思ったのに、まさか保有スキルのことを指していたのだとは思わなかったシエラは、首を傾げた。
「12歳で成人の儀を迎えてすぐに、近所の町のギルドで働き始めたので、もうかれこれ7年になりますから、そのくらいのスキルレベルになっててもおかしくないのでは?」
「いやいやいや、にしたって、索敵や千里眼は普通、スキル取得しないだろう」
ギルドの中にいるだけであれば、そうそう取得するスキルではない。
もし、もともと持っていたとしても、スキルレベルが異様に高すぎるのだが、そのことにシエラは全く気付いていなかった。
「あぁ、そのスキルですか。元々、モルトに異動する前にいたギルドは小さなギルドだったので、初心者講習をはじめとした座学・実技講習関連の講師や、仕事に町の困りごとの解決も業務内容に含まれてたからだと思います。正直、冒険者の依頼受注がなければ、代わりに依頼をこなしたりもしてたので、気づけばそれぞれのスキルが身についてたって感じですね。あぁ、でも、隠密に関しては、モルトに来てからです。ジェルマさん、早く帰れそうなときに限って飲みに誘ってくるので、見つからないようにしてたら、自然と身についてたんですよね」
ケラケラと笑うシエラに、2人は絶句した。




