呼び出しっていくつになっても嫌ですよね-1
「え、もう一度いいですか?」
朝の受付ラッシュが終わったところでジェルマの執務室に呼ばれたシエラは、物凄く嫌そうな顔をしながら言った。
「だから、クロードがお前のことをお呼びだ。13時にお屋敷に来い、ということだ」
「いや、だから、なんで領主様が私を呼び出すんですか。呼び出すって言うなら、ジェルマさんの方じゃないんですか?」
モルトの領主であるクロードとジェルマは幼馴染で、今でもよく一緒に飲む仲であることは、モルト内では有名だ。
「…お前が今申請上げてる件で、話があるんだとよ」
「は?」
思いきり顔をしかめる。
「普段なら、各ギルドマスターの承認だけで済むんだが、今、エディ・ボルトン卿がこっちに来てんだよ」
「え…え?ボルトンって今、言いました!?」
「そうだよ、そのボルトンだよ。ボルトン公爵家のご長男の、エディ・ボルトン卿だよ」
シエラは膝から崩れ落ちた。
「え、なに、王族が来てるから、書類審査が厳しくなってるとか?いや、でも、テイム済みですよ?問題なくないですか?」
一縷の望みにかけて、抗議するシエラ。しかし。
「お前、申請書に書いてあったあの内容で、通るわけないだろ」
言われて、書類に書いた内容を思い出す。
(…そういえば、経緯は森で出会ってマイスでテイムした、脅威なし。って書いたっけ)
ジェルマは経緯を知っていたし、所属しているギルドマスターが承認をおろせば、あとは機械的に他ギルドに回されて、各ギルドマスターが承認署名をして終わるようなものなので、逆に細かく書いて変に突っ込まれるよりは、と簡単・簡潔な内容にしたことを思い出す。
「第4ギルドにちょうど書類が回ったときに、ボルトン卿がちょうど到着したところだったらしくてな。ジェシカの執務机の一番上にあったお前の申請書類がたまたま目に入ったらしく、呼んで説明させろって話になったんだとよ」
ジェルマの言葉に頭痛を覚える。
「嘘でしょ、なんでそんなタイミングで…運が悪いなんてもんじゃ…ん?ちょっと待ってください。その話でいけば、それ、説明させろって言ってるのって」
「お察しの通り、ボルトン卿、ご本人のご指名だよ。ぶっちゃけ、ボルトン卿にあの書類見られてなければ、そのままスルーされてた可能性は高いが、たまたま見られちまった上に、その書類にはコッカトリスと書かれてたんだ。しかも、マイスでテイムとか、どういうことだってな。それがクロードの耳にも入っちまったもんだから、それなら一緒に説明を聞こうってことで、今日、13時に急遽呼び出されたってわけだ」
この世の終わりのような悲壮感にあふれた表情のシエラに、ジェルマは若干の同情を覚える。
「まぁ…ここはひとつ、諦めて行ってこい。そうそう、もうそろそろ迎えの馬車が来るから、それに乗っていけばいい。良かったな、徒歩じゃなくて」
「も、もうちょっとマシな慰め方ってもんがあるんじゃないですかねぇ!?!?」
やり場のない怒りに、シエラはジェルマに八つ当たりをする。
「あのー。お取込み中にすいませんが、シエラの迎えが…」
そういって、執務室に現れたのはルーだった。
「あぁ、悪い悪い、シエラ、ほら、諦めて行ってこい」
「いやぁー!!!!!」
シエラは今日一番大きな声で叫んだ。




