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教官は鶏でした-4

「その節は、大変、申し訳ございませんでした!!!!!」


「あ、今日の日替わり定食3つと、いつもの野菜盛りをマイス多めで2つ」


「はいよ!」


傍目にはただの鶏(コーカスとトーカス)に土下座をしている冒険者。その傍らで、全く気にしたそぶりも見せず、注文をしているギルドの受付嬢に、どうしたらいいのか、オロオロとする少女の姿に、完全に見て見ぬふりを決め込んだウエイトレス。


「大切な我の卵を盗んだ罪は、万死に値する」


「ぐぅ!」


怒りMAXで地を這うような低い声で威嚇し、ロイの頭をげし、と踏みつけるコーカス。


「まぁ、今回の件については、シエラの顔を立てて、貴様のことは見逃してやる。森にも言われた通り、入っていないようだしな」


「あ、ありがとうございます!」


「誰がその面を上げ良いと言った!」


「も、申し訳ございません!」


思わず顔を上げたロイの頭を、ギリッと足に力を入れてまた、無理やり下げる。

はたから見たら、これ以上ないくらいシュールな光景が、そこには広がっていた。


「はいはい、コーカス様。そこまでで。ほら、ご飯がきましたよー」


ウエイトレスが、野菜盛りを机の上に置くと、コーカスとトーカスが机に飛び乗り、上手にコツコツと野菜を啄んでいく。


「とりあえず、スミレちゃんは初めまして、だよね?こっちの白銀の毛をしたのがコーカス様、で、こっちの漆黒の毛をしたのが、トーカス様。二人とも、こう見えてコッカトリスさんなんだよ~」


のほほんとした顔で紹介するシエラに、スミレちゃんは思わず「え?」と聞き返した。


「し、シエラさん…?いまコッカトリスって…」

「はい!日替わり3つ、お待ち!」

「ありがとう!ほら、スミレちゃんも食べて食べて!」

「え?あ、ハイ…え?」


全く状況が飲み込めなかったが、とりあえず、出された定食を、一生懸命むしゃむしゃと食べるスミレ。その食べっぷりに、シエラは思わず顔を綻ばせた。


「そうそう、スミレちゃん、装備を整えたら、一度、森に行ってみたいっていってたでしょう?」


「あ、はい!」


食後のお茶を飲みながら、シエラが聞くと、スミレは目を輝かせながら頷いた。

その隣では、ようやく頭を上げることを許されたロイが、涙を流しながら定食を口にしている。


「スミレちゃんも、もうそれなりに経験を積んできてるし、いい頃合いだと思うんだけど、やっぱり、一人でいきなりって言うのは、少し心配なんだ」


元々、スミレも冒険者になったばかりのころは、パーティーでの活動を夢見ていた。当然、スミレと同い年で冒険者になった子がいないわけではない。

だが、もともと人見知りの激しい彼女は、ギルドへの冒険者登録が精いっぱいで、同じタイミングで冒険者登録をしていた他の子達とうまくコミュニケーションをとることができず、気が付けばすでに数名ずつで輪ができてしまい、その中に入れてほしいと言うこともできず、いまだにソロで活動だけを続けている状況だった。


「…そう、ですよね。やっぱり…」


低ランク冒険者の仕事は簡単なもの、と言われるものの、それでも、平原での薬草採取と森に入っての討伐依頼とでは、危険度がぐんと変わってくる。さらに言えば、ソロとパーティーとでは、生存率もさらに変わってくる。

初めて森に入るのであれば、可能な限り、パーティーを組んではいるか、もしくは、他の冒険者と一緒に、臨時で仲間に入れてもらうことが望ましい、ということは事実であった。


「初心者の場合は、やはり周囲をいくら警戒していても、一人では限界があるし、抜けも出る。そんな状態で、うっかり何かの群れや、予想していない高ランクの魔物たちに遭遇してしまったら、確実に命を落としてしまうだろうな」


もしゃもしゃと付け合わせの葉っぱを食べながら、きりっとした表情で言うロイに、せめて、食べ終わってから言えよ、と心の中でシエラは突っ込みつつ、そうですね、と小さく頷いた。

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