教官は鶏でした‐3
ギルドに出勤し、いつものように仕事をしていると、朝の受付ラッシュが落ち着いたころに、スミレがやってきた。
「あ、スミレちゃん!おはようございます」
「シエラさん、おはようございます」
挨拶をかわし、講習、受ける?と聞くと、スミレは大きくうん、と頷いた。
「じゃ、ついてきてくれるかな」
カウンターに休憩中の札を出し、シエラはスミレを会議室へと連れて行いき、1冊の冊子を渡した。
「それじゃ、今から今日の講習の教官を連れてくるから、それに目を通しながら、待っててね」
そういって、シエラは部屋を後にすると、パタパタと解体場の方へと走っていく。
「ええと、今日は確か…あ、いたいた!ロイさん!」
卵泥棒事件のせいで、森に入れなくなっている剛腕の稲妻のリーダー、ロイを見つけると、シエラは声をかけた。
「シエラちゃん!あ、もう、そんな時間?」
ロイが聞くと、シエラは頷き、行きましょう、と言って、ロイを連れて解体場を後にする。
「お待たせ、スミレちゃん。こちら、Bランク冒険者で、剛腕の稲妻のリーダー、ロイさん。今日の講習の教官だよ。ロイさん、こちらが今日の講習を受けるスミレちゃんです」
お互いの自己紹介を済ませると、では、お願いしますね。と言って、シエラは会議室を出た。
それから2時間ほどたったところで、会議室から出てきたスミレとロイが、シエラのもとにやってきた。
「講習終わったぜ」
「はい、ありがとうございます。スミレちゃん、どうだった?」
「すっごくためになりました!森はやっぱり少し怖いけど…でも、気を付けて、頑張ってみたいって思います!」
その言葉に、シエラはにっこりと微笑む。
「あ、お二人とも、昼食はまだですよね?」
シエラが聞くと、二人は頷いた。
「それじゃ、一緒にお昼に行きませんか?」
シエラが言うと、ロイとスミレは頷いた。
「…おい、シエラ、そやつ」
足元に置いてある箱の中ですやすやと寝ていたコーカスがむくりと体を起こし、カウンターの上に飛び乗ってくる。
「お?なんだ?なんか変わった色した鶏だな」
ロイが言う。
「貴様…やはり、間違いない。あの時の!」
コーカスの反応に、慌ててシエラが、待ったをかけた。
「コーカス!だめ、お座り!」
叫んだ瞬間、コーカスは強制的に、その場に座らされる。
「し、シエラ!?貴様、何を」
「ギルド内で喧嘩はだめです!コーカス様のこと、ロイさん、わかってないですし、ちゃんと後で伝えるので、少し、こらえて」
シエラに言われて、コーカスは、仕方がない、と不満げながらも怒りを抑えてくれた。




