教官は鶏でした‐2
翌朝、目覚まし時計の音で目を覚ましたシエラは、しっかりと睡眠がとれたおかげで、すっきりとした頭で起きることができた。
「…嘘でしょう……」
そして、部屋の惨状を見て愕然とした。
「ちょっと、コーカス様、トーカス様ぁ?」
すやすやと気持ちよさそうに寝ている二匹の首をつかみ上げてゆさゆさと揺さぶって起こす。
「ぐげぇ!な、なんだ、人が気持ちよさそうに寝ているところを」
「なんだじゃないんですよ、なんだ、じゃ。これ、何!」
部屋中に散らかった、豆や穀物の殻。昨日、机に出した夕食の残りかすが部屋中に散乱していた。
「昨日、ちゃんとした食事を提供できなかったのは申し訳ないと思ってるけど、だからってちょっと、お行儀が悪いんじゃないんですかねぇ?」
額に青筋を立てながらに二匹を睨みつける。
「そこらの畜生とは違うんだから、ちゃんと後片付けしておいて。私、顔洗って食事とってくるから…戻ってくるまでに片付けが終わってなかったら、今日のご飯、抜きだからね」
『横暴な!』
二匹が口をそろえて抗議する。
「誰の部屋だと思ってんのよ!大体、なんで人の食べた残りを私が片付けなくちゃだめなのよ!まだ文句言うなら、報酬のマイス、減らすからね!」
そういって、タオル片手に、シエラは部屋を出た。
(…あいつら、高ランクの魔獣だからと思って下手に出てたけど、もう、容赦しないんだから!)
ぷりぷりと怒りながら、顔を洗った後、食堂に顔を出す。
「マーサさん、今日、朝ご飯大盛りでお願い」
「おや、珍しい。あぁ、そういえば、おとといから顔見てなかったけど、忙しくてくいっぱぐれてたのかい?」
お皿に朝食を盛りつけながらおばちゃんに聞かれて、シエラはそうなの!と大きく頷く。
「もう、おなかがすきすぎて限界なの!」
「あはは、わかったよ。ほら、好きなだけ食べな!」
いつもの倍近い量が入ったお皿ののったトレーを受け取り、シエラはありがとう!とお礼を言って、席に着くと、一気にそれらをかき込んだ。
(うぅ、幸せ…!
ごはんが美味しい!今までで一番美味しい気がするよぉ)
いつもと変わらない、黒パンにスープ、サラダとフレークすべてを食べ終えると、ごちそうさまでした、とトレーを返却し、部屋に戻った。
「お、やればできるじゃん」
シエラの言葉に、不服そうにトーカスが呟く。
「なんで俺がこんなことを…」
「私の騎士になるって言ったじゃない。主に部屋掃除させるとか、どんな騎士だよ」
突っ込むシエラに、トーカスはぐぅ、と反論ができない。
「とりあえず、支度が終わったら、他のみんなに見つからないうちに、ギルドに出勤するから、ちょっと待ってて」
シエラは急いで体を軽くふき、制服に着替えると、マジックバッグ片手に、昨日戻ってきたときと同じように、気配を殺し、他の人に会わないよう、細心の注意を払いながら、コーカスとトーカスを連れて、寮を出た。




