家族ができました‐4
「…はい、これで、私の記憶してる地図情報、更新できたと思う」
トーカスが討伐を始めたあたりから砦までの地図情報と、ざっくりとゲートからその開始位置までの方角と距離を書き記した地図を渡す。
「ごめん…寝不足で、ちょっと今、これ以上のスキルは使えないから…複製、お願いぃ…」
バタン、とカウンターに突っ伏す。
「ありがとう!これでも食べときなさいな」
アミットがシエラの口に、ほれ、と蜜飴を放り込む。
「お、美味しい…!!」
よく考えてみれば、昨日はお昼を何とか隙間時間に食べたくらいで、それ以降、何も口にしていなかったことを思い出す。
(急なこととかで、おなかがすいたこととか、全く気にしてもなかったわ)
思い出すと同時に、きゅるるるる、とおなかが鳴った。
「…思い出したら、おなかがすいてきちゃったよ…うぅ…」
口の中の蜜飴をコロコロと舐めながら、シエラはふぅ、と息を吐き、体を起こす。
「あ、オーリ、ちょうどよかった。今日のスケジュールが全然わからないから、教えてもらえないかな?」
シエラが声をかけると、オーリは複製をしながらいいですよ、と頷いた。
「シエラさんからの情報をもとに、今回の緊急クエストを受けてもらっていた冒険者の方たちには、これから出来上がった地図をお渡しして、森に向かってもらい、ゴブリンの死体の処理と、森の探索を行ってもらいます。ここで、もし、ゴブリンの残党がいた場合は、そのまま討伐も行ってもらうことになっています」
ふんふん、と頷くシエラ。
「報酬に関しては、処理が完了し、全員が戻ってきたのち、ギルド職員を森に派遣・確認が取れた後にお支払いすることになっています。報酬の支払いができるようになるタイミングで、森への立ち入り制限を解除し、依頼の受付なんかも再開することになっています」
「なるほど」
「なので、私たち受付嬢は、これから、通常業務をこなしつつ、緊急クエストの報酬支払の準備と、報告受付の準備、今回のクエストで使用してなくなる予定の備品関係の発注と整理を行っていくことになってます。あ、あと、今回の件でお休みがなくなった人たちが、明日・明後日にまとまってお休みをとっていってもらうことになってるので、その分の仕事の引継ぎもありますね」
「ひぃ!」
通常の受付業務関連が、森への立ち入り制限のため、減ることが想定されたので、もしかして、ちょっと暇になるんじゃ?と心の中で喜んだのもつかの間、4日に分かれてお休みをとるはずだった人たちが、2日間で一斉に休むことになるので、通常よりも人手が少なくなってしまう。
「通常業務が少しでも少ないうちに、みんなちゃんと休み取り直せって、ジェルマさんの指示だったので」
徹夜で仕事した私への労りは!?と心の中で叫びながら、小さく涙目になりながら、わかった、とシエラは頷いた。




