今日も安定の残業です-5
「シエラ!ジェルマさん呼んできたよ!」
「なんだなんだ、一体。騒々しいな、こんな時間に」
2階部分から降りてきた二人に、シエラは卵を見せた。ルーは首を傾げただけだったが、ギルドマスターであるジェルマは、その卵を見て眉をピクリと動かした。
「おい、なんでそんなもんがここにある」
ジェルマに言われて、シエラは剛腕の稲妻の3人が持ち込んだものだ、と説明をした。
「よりにもよって、コッカトリスかよ…。お前ら、確かランクは…」
「ロイさんとミシェーラさんはB、ルカさんはCです」
シエラの答えに、ジェルマは特大のため息をついた。
「マジか…じゃ、これ、誰が返しに行くんだよ」
ジェルマの呟きに、ロイが反応する。
「え?ちょ、ちょっと待てよ!せっかく持ってきたのに、返しに行くってなんでだよ!」
ロイの言葉に、ルカが目を見開く。
「何言ってるんですか、ロイ!これ、コッカトリスの卵だって二人が言ってたじゃないですか!」
「だから、コッカトリスの卵だったからってなんで返す必要があるんだよ!」
ロイの言葉に、今度はシエラが目を見開いた。
「ちょ、ちょっとロイさん?コッカトリスのこと、知ってますよね?」
「もちろん、知ってるさ!石化魔法を使ってくる厄介なでかい鳥だろ?」
「…魔獣講習、ちゃんと受けました?コッカトリスの習性、ちゃんと教わってるはずですよね?」
「習性??」
頭にはてなマークを飛ばしたような顔のロイに、ミシェーラがため息交じりに答えた。
「ロイ、コッカトリスは自分たちの卵を盗まれるのが何よりも一番嫌いなのよ」
「あ……」
そこでようやく、事の重大さに気づくロイ。
「ただの討伐ってだけなら、剛腕の方々でも対応いただけると思いますが…卵を盗まれて激昂状態のコッカトリスの相手は、さすがにBランクパーティでは手に余ります」
そういって、シエラはジェルマをちらりと見る。
(うーわー…超嫌そう……)
不機嫌オーラ全開のジェルマの姿がそこにあった。