家族ができました‐2
「ジェルマさん…とりあえず、ゴブリンキングの討伐が完了しました。集落もほぼ壊滅状態ですので、ゲート開いて…」
息も絶え絶えな状態で、シエラは通信魔石を使って、ジェルマに連絡をする。
『…は?今、なんてった?』
聞き返してくるジェルマに、シエラは、ゲート、開いて、と懇願する。
『とりあえず、ゲートを開くから、戻ったら詳細を教えろ』
ジェルマが言うと、目の前に、真っ白い空間が現れる。
「か、帰れる…!!コーカス様、トーカス様、本当に、今回は討伐にご参加いただき、ありがとうございました。とりあえず、私はいったん、街に戻りますね」
何とか笑顔を作ると、まるでグールのような動きで、ゲートをくぐった。
「た、ただいま帰りました…」
「シエラ!ゴブリンキングの討伐が完了ってどういうことだ!」
戻って早々、ジェルマに肩をがくがくと揺さぶられる。寝不足、猛スピードでの移動に次いで、その行為はまさに死刑宣告だった。
「や、やめ…は、吐く…」
シエラが真っ青な顔で口に手を当てると、ジェルマは慌てて手を離した。
「うぷ…えと、とりあえず、トーカス様がゴブリンの集落を見つけて、そのまま殲滅されまして、残っていたゴブリンキングも、トーカス様がとどめを刺してます。これ、ゴブリンキングの魔石です」
そういって、バッグにしまってあった直径10センチ程度の魔石を、ジェルマに手渡す。
「おいおい…マジかよ」
「とりあえず、大量のゴブリンの死体がありますので、それの始末と、残党がいれば、それの討伐だけお願いします。さすがに、死体の処理しながらは無理…」
「それもそうだな。そのくらいは、冒険者どもにさせよう。とにかく、よくやった。ちょっと仮眠室で休んで来い」
「あ、ありがとうございますぅぅ…」
今にも意識を手放しそうになるのを必死でこらえ、仮眠室までのそのそと歩いていく。
「や、やっと寝れる…」
なんとか部屋にたどり着いたシエラは、着替えることもせず、体中についた泥を落とすこともせず、そのままベッドに倒れこんだ。
「………ぐぅ………」
次の瞬間、シエラの寝息が部屋に響く。そして、シエラの横で眠る、2匹の鶏の姿がそこにあった。




